ドラマ「絆のペダル」クランクアップの日、生田スタジオを訪問させて頂きました。

 

このドラマの制作に関しては僕自身は本当に何もしてなくて、素晴らしい作品になったとすれば(まだ拝見していませんが、確信しています)それはただただ脚本家の松田裕子さん、制作スタッフのみなさん、キャストのみなさんのドラマに賭ける深い想いと情熱の賜物です。

 

相葉雅紀さん、薬師丸ひろ子さん、酒井若菜さん、ありがとうございました。

素晴らしいドラマを創り上げてくださった撮影現場のみなさん、多くの関係者の皆様に感謝してます。ありがとうございました。

 

このドラマを観てくれた子ども達が、夢を夢のままで終わらせず、好きなことに片っ端からチャレンジし、失敗してもどんどん繰り返し繰り返しチャレンジするようになってくれれば、こんな嬉しいことはありません。

 

また

 

夢は、今の自分を乗り越えるためにある

 

ということを感じ取ってくれたらと願います。

 

だって

 

人はみなそれぞれの夢を掴むために、小さい挑戦でも今こうして挑戦し、成功し、失敗し、という毎日を繰り返しているはずだから。

 

未来の自分を描く夢を、一人でも多くの子ども達に見てもらえたらと思います。

 

https://mainichi.jp/articles/20190819/dyo/00m/200/029000c

 

 

「絆のペダル」番宣のお知らせです。

 

- 8月18日(日)13:15~14:15  
「24時間テレビいよいよ来週」

 

- 8月20日(火)20:54〜21:00 
「24時間テレビ42まであと少し! 直前みどころ公開SP⑴」

 

- 8月21日 24:54〜25:04
「24時間テレビ42まであと少し!カウントダウン(8)」

 

- 8月24日(土)15:30〜17:00
「24時間テレビ42 直前生放送SP」

 

新しい予告編もご覧ください↓

https://youtu.be/SRoLWXYy5BA

 

久しぶりに自転車を購入しました。

最後に自転車を購入したのは、、、、

何年前だっけ。。。

 

引退する一年ほど前だから、2013年ですね。

あの時はamandaの自転車にめちゃくちゃ興味あって。

というのも、やっぱり千葉さんの独自理論は

身をもって体験しないとわからないと思ったから。

 

 

そして、出来上がったバイクはこちらの要望通り。

当時はSAXO BANKだったのでスペシャライズドに乗っていたけれど

まだまだ完成度上げられるな〜

と思って、軽さ以外の全てをアップグレード。

 

・具体的には、スピードが上がってきても自転車を横に振れる

・踏んだ時のフレームの戻り感(バネ感)を具体的に説明

・上りでもダンシングする事が多いので、高速ダンシングとは違った戻り感

 

まぁ、重量は犠牲にしても乗り心地の方を選んだので

(と言っても400gくらいしか変わらなかった)

足がなくなった後、超勾配のキツイ上りに行かなければ

気づかない程度だったから大変満足した。

 

 

そしてそれから数年が経ち。

今の自転車ってあの頃から比べると、

だいぶ自分のamanda号に乗り味が近づいたな〜という印象。

 

誤解のないように。

自慢したいわけではなくて、

選手たちが求めるものとか、

世の中のライダーがある意味同じように

ストレスを感じていたんだな〜と思った次第です。

それからずっと乗っていたが、フレームに傷が入り、割れてしまい、、、

修復したのだけど、「ちょっと危ないかも」という事で、

6年間ありがとう!とamanda号は街乗り自転車にすることにした。

 

 

で。

今回、5月にオーダーを入れたマイバイクがそろそろ出来上がり始める。

という事で、色決め。

難しいわ。。。。

ホント、何もないところにデザインするって

自分にはあまり持ち合わせてない才能なので

お・ま・か・せ

ということになった。

ベースの色だけ決め、あと1〜2ヶ月くらい待てば到着するかな〜。

 

なかでもこの待つ時間って、一番ワクワクする時間で

例えばamazonさんのプライムはとても便利なんだけど、

個人的には思い入れがあるものを手にするまでの時間は、

焦らされた方が好きだったりする。

 

さて、自転車が到着したらどうしてくれよう。

パーツをひとつひとつ集め始めるか

最低限お気に入りのカンパニョーロと

手元にあるパーツで組んで乗り始めるか。。。。

 

ああ

こういうのを楽しんでいる自分を客観的に見ると、

自転車好きなんだな〜と思う。

 

ああ楽しい!

 

ちゃんちゃん。

 

 

バランスよく筋肉を使う

 

というと

身体全体の筋肉をバランスよく使おう

という意味に聞こえる

それは間違ってはいないのだけど

筋肉を使っている頻度やその人の能力にもよる

 

選手時代、春先のレースで

まだ身体にレースの準備ができてないとき

マッサージャーに

「筋肉にまだレースの準備ができていない!」

と言われたことがある

レースの準備ができていない筋肉とは?

なかなか想像がつかない人の方が多いと思うが

経験のある選手ならばこの意味がわかるだろう

 

準備のできていない筋肉の特徴として次のことが挙げられる:

 

1 張りの強い筋肉と、張りの弱い筋肉がバラバラに点在する

2 表面だけ張りがあるが、内部がスカスカする

3 選手の主観で走り始めは調子が良いが、中盤から後半で思ったように足が動かない

 

などがある

 

先日マッサージャーと話をしていて

「筋細胞が起きている部分と起きていない分がある」

という話題になった

そう、例えばオフ明けのトレーニングで

ゆっくりとロングディスタンスを走ることが多いが

シーズンに入るにつれ、高強度のトレーニングを取り入れる

このゆっくり走るトレーニングの時間に筋細胞が起きるか?

というところが、トップ選手と一般ライダーには大きな差がある

 

強い選手が怪我の後にみるみる走れるようになるケースはよく目にする

あっという間にコンディションを作り

レースで擦り合わせながら早い段階でレースで結果を出してしまう

しかし、一般ライダーにはこの細胞がバランスよく起きるという点で

意外と膨大な時間がかかる

若い選手も同じく

いわゆるギリギリのペースで

身体を早く作りたい気持ちを押さえつけて

じっくりと身体の細胞を起こす作業

というのが大切なことがわかる

 

それをすっ飛ばすと、例えば

外側広筋が物凄く張る

肩が痛い

脹脛が攣る

 

などの症状が起きやすくなる

 

じっくりと走る時間というのはシーズン中も継続するが

その時に何気なく走るのではなく

身体をバランスよく使う意識

そしてケアの時にマッサージャーと対話することで

自分の状態を作り上げていくことを可能にする

特にレースで結果を求める選手ならば

急がず慌てず身体の反応を感じながら

コンディショニングすることが

自分を積み上げていくことになるのだ

 

 

 

 

やってみたいという気持ち

この気持ちが生まれた瞬間、未来への時間が始まる

 

その願望は、とにかく端からやり始めることで

たまたま小さな成功を得る瞬間がある

 

僕は自転車に未来を見たわけだが

その中で小さな成功はたくさん たくさんあったものの

本当に小さな成功体験しかない

 

高校生の時は、ロードレースで全国大会でも30位程度が限界

そしてシクロクロスというクロスカントリーのレースで

たまたま出場選手が少なかったから世界選手権に日本代表で選ばれた

ただ、最低限の力は持っていた

当時、世界選手権には完走できる程度の選手しか連れて行かない

そんな条件の中でなんとか完走できる程度の力があり

出場の機会を得た

結果1位から2分半遅れの22位だったが

過去最高位でゴールをした

この小さな成功体験が

僕の将来への大いなる勘違いを産んだのだ

 

なんとかなるんじゃないか!!と

 

そして世界との差は2分半

これが宮澤崇史の世界との差

宮澤崇史の、自転車の世界での順位だった

この時初めて、世界で自分は何番なの?

ということを意識し

それ以外の評価は無意味だということに気がついた

僕の戦うべき場所は世界なのだと

はっきり自覚した瞬間だった

 

25才まで給料はアルバイト以下の収入しかなかった

ただ、ヨーロッパで走ることで

お金には代えられない経験を手に入れることができる

何よりも自分の将来像に近づける

何にも代えられない何かが手に入ると確信していた

 

僕が若い人たちに話をするとき、具体的な話はしない。

必ず訊かれるのは、何をしたらいいですか?

という言葉だ

 

何をしたらいいかわかったら 世の中の殆どの人が成功している

世の中には多くの情報があるので

ちょっとググったらいくらでもトレーニング理論は出てくる

ただ一つ言えることは

自分が強くなるためのパターンを

自分自身で作れない選手は絶対に成功しないだろう

だからこそ、選手ひとりひとりが小さな成功を自分自身で作り出し

それが次の成功体験に繋がるためには何が必要なんだろうと考え

それまでの失敗体験を盛り込まないように

成功の上塗りをする

そんな小さな小さな体験の積み重ねが

未来へと繋がっていく

 

僕が体験した大きなターニングポイントは

強くなるか、それとも身体が壊れるかの限界に挑戦してみよう

と思いついた時だった

25才の時だった

年齢がとても重要で

これを10代の時にやっては本当に身体が壊れてしまう

25才だったからこそできたことでもある

今思い出してみると

22〜24才の時に感じていたらまた違っただろうなと思う

逆に20才の時に挑戦していたら

身体が悲鳴をあげて選手として壊れていただろう

 

どんなスポーツも先人がいて

そんな人にヒントを求める選手たちは絶えない

しかし、自分の形を作った選手たちだけが

そして、小さな成功体験を増やし続けた選手だけが

未来へと繋げていける

これからの選手たちも

そんな小さな成功体験を今後もどんどん増やしていって

未来へとつなげていってほしい

それは、誰もが経験できるわけではない

その人ならではの成功体験だから

 

 

 

 

【ドラマ「絆のペダル」関連番組のお知らせです】

 

宮澤をモデルにした24時間テレビドラマスペシャル「絆のペダル」(8月24日放映)が、以下の番組で取り上げられます。
ぜひご覧ください。

 

⑴「24時間テレビランナー参戦SP」
放映:8月11日(日)14:15~15:15

 

⑵ 24時間テレビ42まであと少し!カウントダウン
放映:8月13日(火)0:54~0:59

 

日本テレビ系列
https://www.ntv.co.jp/24h-drama2019/

時は遡って、2018年の早春。

急性リンパ性白血病を患い、これから入院するという冨山剛児さんの病院を訪れました。

冨山さんは自転車が大好きで、ツール・ド・東北を走ることが夢だというとても素敵なサイクリスト。

困難な抗ガン剤治療にも耐え、いつか僕らと一緒に走ることを夢見て闘い続けてきましたが、残念ながら昨年の秋にお亡くなりになりました。

僕にとってもとても悲しく残念で、ご家族やご兄弟の想いを思い返すと胸が苦しくなりました。

 

しかし、今年のツール・ド・東北を冨山さんのお兄さんが走ることになりました。

お兄さんはきっと自転車に乗っていた時の剛児さんの幸せな気持ちをトレースしながら、そして心の中で剛児さんにずっと話しかけながら、東北の美しい景色を楽しまれるに違いない。

もちろん、切ない気持ちも悲しみも背負いながら。

でも切なさや悲しみって、封印するのではなく、むしろ慈しみたい感情じゃないかな。

僕も剛児さんに想いを馳せて走ろう。

ぜひ皆さんもそんな風に志半ばで亡くなられた方がいたら、怪我や病気で体を動かすことがままならない人がいたら、その人を想って走ってみてください。

震災で命を落とした見も知らぬ人々のことを想って、走ってみてください。

そんな風に誰かが誰かのことを考えるだけで、喪われたと思われた魂も実は生き続けるのではないかと思います。

 

病と戦う人たちに、スポーツを通して少しでも豊かな人生を送って欲しいと思っています。

今年は冨山さんの気持ちを届けに、ツール・ド・東北を走ってきます。

 

在りし日の冨山剛児さんと。

 

冨山さんとの対談はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=OdI_z2DcopQ&t=67s

 

今年もツール・ド・フランスが始まりました。

このツール・ド・フランスというレースが僕の人生を変えた、と言っても過言ではありません。

中学生の時にテレビで初めて目にし、釘付けになったレース。

ヨーロッパのダイナミックな大自然を背景に戦う漢達の姿。

その時の衝撃は今でも鮮烈に覚えています。

 

ロードレースと呼ばれるこの自転車競技はヨーロッパでこそサッカーと人気を二分するメジャースポーツですが、残念ながら日本ではいまだマイナースポーツです。

かつての僕がそうだったように、日本の子ども達にツールやジロを観て感動してもらいたい。

そして一人でも多くの青少年が自転車選手を目指してほしい、と心から願っています。

それが選手として18年間生きてきた僕の、このスポーツに対する想いです。

 

 

ロードレーサーの魅力ってなんだろう?

- 世界中を旅できる

- 世界中に友達ができる

- 多くの言語を話せるようになる

 

世界のトップレースの殆どはヨーロッパで行われ、基本的にヨーロッパに住むことが多くなります。

頂点への道は他のスポーツ同様に厳しいけれど、とても魅力のあるスポーツです。

 

なぜ今さらこんなことを書いているかというと、24時間テレビで僕の選手時代の物語がドラマ化されることになったから。

 

宮澤崇史って誰やねん!

 

とツッコミをいただくだろうと思い、ロードレースの魅力をたくさん書いておいて、ドラマを観てここを訪れた子ども達が「自転車選手になりたい!」と思ってくれたらいいな〜

 

という下心満載で書いています。

 

ヨーロッパではイタリアとフランスに住みましたが、初めての国がイタリアだったこともあって僕はイタリア料理が大好きです。

イタリアで世界一美味しいモッツァレラと生ハム、選手のエネルギー源になるパスタに出会いました。

美味しい食材が手に入るので、選手時代もよく作ってはチームメイトに食べさせたりしていました。

今でもご飯を作ると時々Instagramに載せています。

https://www.instagram.com/cucina_takashi/

 

料理やワイン以外ではオペラに出会ってよく聴くようになりました。

オペラなんて、イタリアにいなかったら多分一生聴く機会がなかったはず。

外国に暮らすことで、自分が打ち込んでいること以外の多様な文化に触れ、結果的に人生が豊かになります。

(視野の狭い、ただの自転車バカにならずに済みました)。

 

レースはアマチュアカテゴリーの1番下のレースから始めて、三つのプロカテゴリー全てに所属しました。

 

【アマチュアカテゴリー】

- 全ての選手が他人を押しのけてのし上がることを考えているので、チーム関係者から見えない場所での裏切りは日常茶飯事。

- それでも勝つ選手が上に上がっていく。

- アマチュアでも上位カテゴリーになるとチームプレイの機能が上がっていく。

- 外国人を受け入れる合宿所のあるチームも数多い。

- 最初に「外人てみんな強そう!」とビビるのはこのカテゴリーまで。

- 勝てばそのうち自信がついて、多くのことにチャレンジしたくなる。

 

【コンチネンタル】

- 上から数えて3番目のこのカテゴリーでは、車で1000km以上移動するレース巡業が当たり前。

- レース後はシャワーなんて贅沢なものはなく、ペットボトルの水で体を拭いてそのまま次のレース地に移動。

- 移動のタフさに耐えながら、同時にレースへの集中を要求される。

- 僕はこのカテゴリーで年間110レース走った年もあり、2月から10月までの9ヶ月で3日に1レースは走るほどにレース三昧でした。

- この頃からフランス、スペイン、イタリア、オランダ、ベルギーなど外国遠征に出かけることが多くなり、移動距離も増える。

- レース数も多いこのカテゴリーが一番多くの国の景色を見られる(…と言うと聞こえは良いですね)。

 

【プロコンチネンタル】

- ここから上がロードレース界で「プロ選手」と世界的に認められるカテゴリーとなる。

- このカテゴリーでは飛行機遠征が多くなる。

- レース数は少なくなるが、レースのレベルが高く世界のトップレベルの選手と戦うことが多くなることから、メンタルとフィジカルの回復が重要になってくる。

- このプロコンチネンタルと最上位のワールドツアーの差は大きく、成り上がるためには強さ以外にも「運」が必要になる。

- 立派なチームバスにはシャワールームが完備され、レース終了後も快適に過ごせる。

 

【ワールドツアー】

- 世界トッププロカテゴリー。

- 各選手はヨーロッパ内の住みたい場所に住むことができ、レース毎にチームと合流する遠征スタイル。

- 仕事は完全に役割分担され、過去のレースの展開から危険箇所まで事細かいレース分析の上、選手たちは仕事(レース)へと向かう。

- チームには専属シェフがつき、24時間食べたい時に食べることができ、間食も用意される。

- トレーニングはパワーメーターでトレーナーから出されるメニューを行い管理される。

- 70~80ほどの出場レースは選手自身が選ぶのではなく、チームが選ぶことが多い。

- プロカテゴリーの中では最もお酒を飲む選手たちが多いのがワールドツアーの特徴でもある(僕の周りだけだったかもしれないが、要はプロ意識が高く自己管理ができるということ)。

 

ロードレースの世界をざっと書いてみました。

ロードレースの世界は、上に上がれば上がるほどレースに集中できるようになり、「自転車選手」という立派な一つの職業としてヨーロッパで活躍することができるようになります。

本場ですから、自転車選手はどこへ行ってもリスペクトされます。

現地の言葉を話せるようになり、コミュニケーションを取れるようになれば、日本にいるのと変わりなく生活ができます。

 

今は、高校卒業後にヨーロッパでレースを重ねて実力をつけた新城幸也選手と別府史之選手の二人が、世界のトッププロとして活躍しています。

現在のところ、彼ら二人の後に続く日本人選手がまだ現れていません。

しかし、それはむしろチャンスです。

遠い極東アジアの国から来た日本人選手が、ヨーロッパで生まれたスポーツで本場の選手達に勝ち、現地の人々の憧れとなり、囲まれてサインをねだられる。

ヨーロッパで英雄になる。

そんな夢を追ってみませんか?

 

本場ヨーロッパのレースをスポーツチャンネルのDAZNやJSPORTSなどで是非ご覧になってください。

多くの若者が今回のドラマをきっかけにロードレースに興味を持ってくださったら嬉しいです。

 

また、ロードレースは年齢・性別に関係なく誰にでも楽しめるスポーツです。

これを機にあなたもロードレースを始めてみませんか?

http://urx.space/UCdN

 

 

6月30日、全日本選手権ロードレースが富士スピードウェイで行われた。

1周10.8kmのコースを21周する227kmで争うレースだ。

天候は雨。

時折ゲリラ豪雨になるという予報もあり、レースが中断される心配もあったが、最後まで熱い熱いバトルが繰り広げられ、2019年の勝者は入部正太朗(シマノレーシング)となった。

 

スタート前、直前まで体を冷やしたくない選手のジャケットを取りに集団に入っていくと、普段のレースとは全く違う、懐かしい雰囲気を感じた。

そう、この日は誰が一番になるか、それだけを目的とした戦いの場だ。

 

選手を送り出すスタッフは、ここまでが仕事。

そして補給を渡しながら、ただただ自分の送り出した選手の走りに祈ることしかできない。

それをわかっている選手は、自身の最高のパフォーマンスを出すために、確認作業を繰り返し繰り返し、修正を入れ、ライバル選手たちの動きに目を光らせレースを進める。

 

新城幸也、別府史之の二名はソロ参加のため、チーム参加している日本チームの動きに合わせて動かなければならない。

今回のコースは位置取りが上手くいけば、コーナー後の加速やアタックで集団を苦しませることができるが、その動きにも限界はある。

主力チームの逃げができたときに乗り遅れているチームがなければ、積極的に揺さぶり追走で前に追いつく展開が続くと予想していた。

 

僕は補給地点で見ていたので、レース全体を見れていなかった者としてのレースを話してみたい。

 

5周目前に逃げていた9名に、追撃で9名が合流した中に幸也がいた。

この時、フミが少し苦しそうな表情に見えた。

8周目に徳田が一人逃げを作り、集団はようやく落ち着くこととなる。

ここから12周目までは補給祭りだった。

集団は前半の動きでだいぶ消耗しているように見え、レースが半分も終わっていないのに、半数以上の選手の顔がすでに歪み始めていた。そんな選手たちが十分に補給をし、後半に備える時間帯だ。

リオモ・ベルマーレからは米谷が残っている。

 

選手逹への補給をしていると、幸也にボトルの水をピュっとかけられた。

ああ、冷静に周りが見えてるなあ、と素直に思った。

多くの選手が補給を受け取る時さえも目が血走っているくらいの雰囲気だったから、幸也の冷静さが際立って目に止まる。

 

後半15周目、徳田が吸収されると集団の動きが活発になる。

フミが思ったように走れていないことにはすぐに気が付いた。

幸也も時折きつそうな上半身の動きを見せるが、復帰戦ということを考えると苦しいながらもよくここまで持ってきたと感心さえした。

 

18周目。小石、幸也、海の3名が飛び出し、決定的か?と思われたが、集団が迫ってくる。

必死に逃げを成功させようとしていただけに、吸収されてからの動きにはかなり厳しいこの後半の動き。

しかし幸也が吸収されてからもまたもやアタックし、入部、横塚の3名で補給地点にまたも現れた。

思わず二度見した。

横塚が入っている。

横塚はリオモ・ベルマーレで走っていた時、人一倍パワーがあるのに使い方が下手なのと、走りの雑さが足を引っ張っていた。

UKYOに移籍が決まり、快く送り出した後も、スペインでの走りではまだまだ雑さがあることを聞いていたが、今のこの瞬間ここに残ってきたか!!!と。

 

思わず「慌てるなよ」と声をかけてしまった。

本当に親が子を見るかのような心境とはこんな感じなのだろうか。

横塚はスプリントになると、今までのきつさはどこに行った?かと思うようなスプリントを見せる。

疲労していてもマックスパワーに近いスプリントができる選手なのだ。

2年前の矢板ロードでは、入部を抑えて大差でスプリントを制した。

タイ合宿では、幸也の後ろを追いかけてトレーニングをさせてもらい、幸也は横塚の弱い部分を多分熟知しているだろう。

 

 

残り1周、その予想が的中した。

上りで幸也がペースアップすると、横塚が少しずつ少しずつ離されていく。

「ギアを落とすな!」と心の中で叫んだ瞬間、横塚のチェーンはインナーに落ちていた。

OMG!!!!

入部はなんとか追いつき、横塚を置いていきたい幸也は一人、黙々と前を引き続ける。

幸也と入部のマッチスプリントなら、もしかしたら幸也が勝つかもしれないな、と予想した。

それは、入部には昔のようなスプリント力が今は無いからだ。

トラックをやっていた入部は、シマノに入った時こそスプリント力があったが、ここ数年は逃げや上りもこなせる選手になり、かなりスプリント力は低下していた。

 

しかし幸也は逃げ切りをはかり、スプリントに持ち込ませない作戦に出た。

入部は、ここまできたらスプリント勝負しか勝てる方法が見出せなかったのではないだろうか。

なぜなら横塚は見える位置にきていることはわかっているが、引き離すために幸也とローテーションするほどの力はすでに無い。

後ろとは1分以上の差があることを考えると、3名でのスプリントにするのが入部にとって今できる「最大限自分が勝てる方法」のように見えた。

最悪、横塚を引き離そうと2名でローテーションした先で、幸也にアタックされたらついていける自信がなかったのではないだろうか。

逆に幸也は3名のスプリントではなく、入部とのマッチスプリントでもなく、アタックで引き離して単独でゴールする作戦に出た。

 

結果的に入部を引き離すことができずスプリントへ。

そして入部が2019年の全日本選手権を制した。

 

 

前半から積極的に動いたフミは残念ながら途中で集団から遅れてしまったが、あれだけキツイ展開を作り、尚勝負をしようとしたという精神力はものすごく強い信念を感じた。

今回はどの選手もどのチームも日本一になるために準備し、何が何でも勝ちたいと強い思いの中でスタートした。

日本で一番になることは本当に難しく、今回のような体力、精神力、自転車を扱う丁寧さ、先を読む力、相手の考えを読む力、たくさんの要素が合わさらないと勝つことはできない。

最後まで熱い想いをペダルにぶつけている選手たちの生き様がかっこよく、現地にいて楽しく見させてもらった。

 

来年は2020年、東京オリンピック。

今度は幸也が(行くかは別として)世界のトップ選手に今回の入部のように一泡ふかせるような走りを見せてくれたら嬉しいな。

そんなことを思いながら、富士スピードウェイを後にした。

 

 

 

 

昔は本当に諦めグセがついているくらい、すっぱりと諦めていた宮澤崇史です。

 

諦めること。

特にヒルクライムをイメージしてもらえると、わかりやすいかもしれない。

集団で走っていて、特段にペースが上がったり、アタックがあったわけでもないけど、自分がキツさに我慢できなくなって遅れてしまう、あの光景だ。

レース中は勿論のこと、トレーニングでもそういった状況を毎回経験している選手は少なくないだろう。

 

諦める時には、何かしらの諦めポイントがある。

いわゆるリミッターというやつだ。

このリミッターはいつも同じ場所で同じようにやってきて、「キツイ、キツイ、痛い、苦しい、あ、あ、もうついていけない、あ〜〜〜〜〜〜、ダメだ。。。」といった具合に脳内を駆け巡り、千切れていく。

これが毎回毎回、同じように、同じようなタイミングで襲いかかってくるわけだ。

そしてリミッターは中々上がらず、諦めグセがついてきて、諦めの悪循環に入り込んでいってしまう。

 

これはなんとかしないとな〜

 

と、選手の時に何か方法がないかと考えに考え、一つだけ諦めない方法を見つけた。

レースで言うところのスティッキーボトルだ。

いわゆる、選手を少しでも楽に集団復帰させてあげるために、監督がボトルを選手に車から渡す時にアクセルを踏んでボトルにつかまらせてあげるやつです。

車かバイクが帯同しないと難しいのだけど、上りで選手が遅れ始めたら、2〜3秒で集団復帰させてあげることを繰り返す。

ただし、「条件は選手が走る事を諦めていないか?」という点。

諦めグセを直すために、諦めさせていては本末転倒なので、諦めない選手のみ対応することにしている。

 

 

僕も一日のレースなら全力で走れるのが、二日間となると途端にパフォーマンスが下がってしまう。

それを乗り越えたのが、この方法だった。

上りだけではなく、上りながらアップダウンが続くタイ合宿では、幸也についていくのが一苦労だった。

上りの中間にあるアップダウンも、先頭交代しながらお互いに高め合うことができるのならば、上り序盤で遅れることは自分にとっても幸也にとってもマイナスでしかないとわかっていた。

ならば、上りで切れずにその後も攻める走りができればお互いにwin winなのでは?

ということに気付いたことがきっかけだ。

常に諦めず、前を向いて攻め続けることによって諦める壁を超えたのだ。

 

もしサポートがないのなら、パワーメーターを見ながら先行して追いつかれればいい。

頭を使って力の差を上手く使い、諦めポイントを乗り越えられれば、必ず先に次の世界が待っている。

チームカーに捕まる事を恥ずかしいと思わなくていい。

トレーニングは、どれだけそういった恥ずかしい場所をさらけ出せるかが大事なのだ。

そして、それを乗り越えるために毎日毎日、自分の弱い場所を克服しながら、強みを生かすところまで考えられれば、レースには必ず勝てるようになる。