2014-05-10 00:31:38

近藤理論を突き崩す(胃がん編)③生存曲線が上に凸となる理由

テーマ:近藤誠氏への反論
一定の割合で亡くなる患者の生存曲線は(近藤誠氏本人が信じるには)下に凸の曲線になるはずで、医者側の意図的行為が介入しない限り上に凸になる事はありえないと「抗がん剤は効かない」P.36で主張している。
その理由としては、ある被験者集団はある一定の割合で死亡する性質(死亡リスクという)を持っているから下に凸の曲線になるのであり、自身がかつておこなった舌がん患者の追跡調査論文を例に挙げて解説している。

死亡リスクが一定というのはどんな治療をしたのかしなかったのか区別していない雑多な舌がん症例群の長期追跡調査だから成り立つ話で、今回の胃がんのランダム化比較試験とは前提条件が根本から違う。

抗がん剤治療をしなかった患者群の曲線は死亡リスクが一定だから下に凸、抗がん剤治療群は抗がん剤で死亡リスクが低下したから上に凸の曲線になったのだ。

その原理をごく簡単に解説する(本当は複雑だがあくまで一般向けに単純化する)。


上に凸の理由1



固形がんは抗がん剤で一端縮小するのに、再増大して最終的に死に至る理由はなぜか?
それは抗がん剤に弱いがん細胞は消えていくのだが、次第に効かない耐性細胞が増えてくるためだ。
強力な抗がん剤治療では確かに消失するがん細胞も多い。しかしどうしても抗がん剤に耐えきる種類のがん細胞が残る。そしてその残ったがん細胞が増大してくると、一端小さくなったはずのがん腫瘤が再度増大して死に至るわけだ。



上に凸の理由2

しかしそれまでの期間は死亡リスクが減少する。つまり死亡する患者の割合が減ることになる。
これが下に凸の生存曲線を上に押し上げ、上に凸の曲線になる理由だ。

それでは耐性化したがん細胞にも効く新規抗がん剤が開発されたらどうなるか?



生存期間の延長


上図のように最終的に多剤耐性化したがん細胞が最後には死に至らしめるほどに増殖するだろうが、それまでに使用できる違った系統の抗がん剤があればあるほど延命期間を稼げると言うことがわかるだろう。
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コメント

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11 ■丁寧な回答ありがとうございます。

 この例だけでなく、いくつかの臨床試験を経て、抗がん剤の認証がされている点には少し安心します。私のような素人の質問にこれだけ丁寧に応えてくださるsho先生は誠実な方だと思います。しかし何が真実かを考えると複雑な思いがします。思うに医療の問題はあまりに難しく且つ多岐にわたります。ただ、私は近藤先生が承知の上で問題を投げかけているように思えます。近藤理論の要諦は「転移するがんと転移しない癌に分けられる」という一点にあります。これが仮説ならば論理的に転移しない癌が転移する癌に変化することも仮説となります。例えば、治療法が遺伝子のタイプによってわかるようになったことを理由に分け方が単純だとする批判はカテゴリーミスです。放置療法は確かに荒っぽい面もありますが、どうか問題点をずらすことなく、近藤理論を批判していただきたいと思います。(先生がずらしているとは思いません。具体的な問題はもちろん検討が必要です)早期発見によって死亡数が減少しないこと、非常に初期の段階で癌の転移が存在すること、この2点を説明できる点で、近藤先生の仮説が優れているように思えます。臨床的に放置するか否かは重要な問題ですが、まず、その根拠を否定する必要があります。勝俣先生のこの点への批判は誤魔かしにしか思えませんでした。激務のことと思います。ご自愛ください。

10 ■Re:エビデンスのレベルはどの程度でしょう。

>SEIKENさん
実験群(抗がん剤治療群)はランダム割り付け後、あまり時間がたつと治療介入の意義が失われるため7日までにと言う取り決めをしています。一方対照群は抗がん剤治療しないはずが、してしまったので、じゃあどれぐらいの時間差があるのかというのを参考までに出しただけでしょう。対照群でありながら抗がん剤治療を後でやってしまってはITT解析上BSC群の成績を向上させてしまうことに注意してください。
放射線照射としても手術にしても個々の患者で実施状況はバラバラなので、その影響を分析することは不可能ですから、解釈しすぎるのは意味がないでしょう。
対照群の方が放射線照射割合が高く、早い段階でおこなっている傾向がありますが、QOLは逆に実験群の方が良好です。
薬剤承認に関しては、この試験は複数のレジメンであり、承認試験でもありません。
もちろんこの試験単独でいきなり化学療法の違う効果を示したのであれば、その結果だけで判断はできません。しかしこの他、3つの第二相試験全てで化学療法群の方が、BSC群より明らかに生存期間が倍以上で、QOLも良好という結論を出している背景を考慮する必要があります。
またその後の新薬のランダム化試験では 5FUを対照群としていますが、そのMSTは7~11か月とBSCの場合より明らかに違う良好な生存期間延長が確認されています。
つまりこの試験自体が作為的な操作を疑わせる要素がほとんどありません。
近藤誠氏は自説を補強するための突っ込みどころがないため、「人為的操作」という苦し紛れの主張をしていると感じました。
なおアゴスコパル効果に関しては、胃がん治療に関する限り、全く考慮するに値するデータがありません。

9 ■エビデンスのレベルはどの程度でしょう。

 table1については理解しました。ありがとうございます。しかし、実験条件が不ぞろいであることには疑問を拭いきれません。実験群だけ見ますと、患者は31人ですから数人の状態の変化が結果に強く影響します。抗がん剤投与までの期間は実験群が7日で対照群が49日です。実験群が容態の悪い人が多いので、すぐに始めたとのことですが、エビデンスレベルを下げないでしょうか。放射線照射に関しても実験群は199日後で対照群は49日後です。緩和的効果があったとするとむしろ対照群にあらわれそうですが、照射の時期にばらつきがあり、むしろ最大値は625日で対照群です。だから中身がよくわかりません。4例と9例の手術の結果も不明です。悪化したとは考えられないでしょうか。なお、放射線照射により遠隔転移したがんが消失するアゴスコパル効果の臨床研究が1例だけありました。他治療法と併用ですが41人中11人に効果が認められたようです。対照群が無いせいかエビデンスレベルは4の評価でした。非人道的な実験は無論よくありませんが、結果が証拠として不十分ならエビデンスの評価は科学的であるべきだと思います。この時代の薬の承認方法がずさんであることを勝俣先生も著書で述べています。それによりますと人為的操作のスキがなくなるのは1998年からです。

8 ■Re:まだ、少し疑問があります。

>SEIKENさん
Time to Chemotherapyはやはりランダム割り付け後に化学療法に至るまでの時間を指しています。BSCの対照群(非抗がん剤治療群)であっても、あとで化学療法を希望する患者がいるためです。
しかしITT解析ですから、当初BSCに割り当てられている患者さんはBSC群と処理されます。
アゴスコパル効果は症例報告ではありえても、パワーが少なすぎあるいは不明瞭すぎて、延命効果を期待しての臨床試験は聞いたことがありません。
Table1はランダム割り付け時点での患者の症状であり、まだ化学療法をする前の話です。そして高いQOLの患者の割合は抗がん剤群が45%、非抗がん剤群は20%と有意差が出ています。

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>グラフの下にも結果が統計的には重要でないと記載されているように、そう読み取りました)実験の条件が違うことが気になります。
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これはあとで非抗がん剤群の患者が抗がん剤を受けることを許容するクロスオーバー試験であるため、生存期間には有意差が出なかったという意味です。(ITT解析では抗がん剤治療を後で受けた患者も非抗がん剤治療群とみなすため、その抗がん剤が延命効果は発揮してしまったのでしょう)

まとめると、
・抗がん剤治療群の方が条件の悪い患者が多いにもかかわらず、QOLは高かった。(これは抗がん剤の副作用を含めた上での話です)
・非抗がん剤治療群の患者は最終的に4割もあとで抗がん剤治療を使ったため、生存期間の有意差は出なかった。(患者が希望したため、断れなかった)
・2群間に多少の偏りはあっても、それは抗がん剤群の方が条件が悪かった偏りであり、それにもかかわらず抗がん剤群の方が成績が良かった。
ということで、胃がんにおいてBSCより抗がん剤治療をした方がずっとよかったし、著者らはこれからはこんな非人道的なランダム化試験は難しいと結論づけているわけです。

7 ■まだ、少し疑問があります。

 お忙しい中、回答ありがとうございます。先ほど気が付いたのですが、抗がん剤投与のほうにも、Time to Chemotherapyとあり、こちらは、実験群で7、対照群で49となっております。これも期間ですか?それから、放射線が緩和的だとしても、アゴスコパル効果の例もありますし、未知の何らかのメリットが生じる可能性が残ります。全体が61という数では、わずかな違いが大きく出てしまいます。ただ、期間ならば確かに放射線の照射が対照群のほうが早くなりますのでよくわかりません。グラフの下にも結果が統計的には重要でないと記載されているように、(そう読み取りました)実験の条件が違うことが気になります。また、Tabble1を見ますと、副作用が実験群のほうに強く表れているのも気にかかります。この凸の部分が抗がん剤の効果によるものなのか今だ半信半疑です。

6 ■Re:訂正

>SEIKENさん
途中まで回答を書いていたので、そのまま載せます。
ーーーーー
原著のtable2の表の199と49という数字を指しておられると思うのですが、項目名として
”Time to radiotherapy, median (range) days”
と記載されています。
よってこれは放射線治療回数ではなく、放射線治療を始めるまでの期間を指していると思われます。
もともと”All pre-treatment characteristics of the randomized patients were not well balanced between the groups ”
と記載があり、二つのグループの条件は均等とは言えませんが、著者らはそれがわかって上で、
”Performance status was significantly lower in the chemotherapy group, and more of those patients had multiple tumour site involvement and disease symptoms. ”
と述べており、バランスが悪くても抗がん剤グループの方がずっと不利な条件である事がわかっています。

放射線治療も手術も症状緩和のための姑息的なものですから生存期間への影響はそれほどないと考えられます。
非抗がん剤治療グループのほうが放射線治療を始めるまでの期間がずっと短いのは、やはりBSCでは症状コントロールが良くないことを指しているのだと思います。

5 ■訂正

申し訳ありません。どうやら、読み間違って放射線照射の中央値までの時間を回数としてしまったようです。この場合、どのような違いが生じるでしょうか。手術回数の影響とともに教えてくだされば幸いです。

4 ■疑問の補足

 放射線照射回数は抗がん剤を投与したグループで、9人に対してカウントされています。非投与グループでは12人に対してです。平均すると1人22回に対して、非投与グループは4回です。人数は少ないようですが実験グループは分母が31人で対象者は30%に当たります。非投与グループは分母が30人ですから40パーセントです。これでは、実験結果を大きくゆがめると思うのですが?

3 ■やはり疑問があります。

 ネットで論文を入手し、辞書を片手に読んでみました。すると、該当する患者さんへの中央値までの放射線の照射回数が全然違います。199回と49回です。これでは放射線治療の効果とも考えられます。手術例はわずかですが、抗がん剤を投与したグループが20%、比較グループが30%で、やはり全体で61人しかいない実験では結果に大きく影響しているはずです。素人には不正な実験にしか思えません。

2 ■Re:患者の観察、打ち切りの数

>SEIKENさん
原著には
”Survival was calculated from the date of randomization to the date of death from any cause. At the end of the follow up on March 31 1996, 1 patient was alive in each group. ”と記載されております。(最終エントリーは1995年2月)
予後が長くなく症例数も多くないことから、たぶん全症例を把握しているため、打ち切り例はなく、縦棒がないのでしょう。

1 ■患者の観察、打ち切りの数

おっしゃる通り、抗癌剤が一時期効果を発揮したが、耐性を獲得した癌によって、もとの曲線のカーブにもどった可能性も考えられます。しかし、近藤先生の言う患者観察を打ち切ったために生じる見かけの効果かもしれません。縦棒が記されていないので、どちらとも言えないのでは?

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