2013-07-24 16:18:17

近藤誠氏への批判④なぜがん医療界は組織的に反論しないのか

テーマ:近藤誠氏への反論
・なぜがん医療界は組織的に反論しないのか
・なぜ個別に反論するがん治療医が少ないのか

かつて「がんもどき」理論を提唱した頃は、それなりに反論する医学者もいた。
その後2011年に月刊誌文藝春秋の記事と単行本の「抗がん剤は効かない」が出たときに一般の方々からの反響は大きかった。

そのため週刊文春などで反論記事も出されたが、がん関連学会などは何の反論もしていないし、学術集会会場でも話題に挙がったのを見たこともない。

またがん治療医からのマスメディアを利用した反論も多少あったが、日本全体のがん患者、がん治療担当医の総数からすると微々たるものだ。

もちろん医師の間ではそれなりに話題に挙がることあるし、近藤誠氏の記事が出た直後は、がん患者さんの外来診療で色々質問が出て時間を取られて大変だという声もある。

氏の著作は数十万部売れているからには、相当影響力があるはずだから、本来なら学会からの公式な声明も出た方がいいのかもしれない。
しかし、実際にはそのような動きは全くなさそうだ。
それはなぜだろうか?
自分が考える理由としては

①学会は外に向けての活動に慣れていない
②一専門家の意見はエビデンスレベルが最低で、相手にする理由がない
③各種がんの治療ガイドラインが出そろってきている
④話題性はあっても、実際に治療を受けている患者さんへの影響は軽微
⑤実際に氏の本を持って、担当医に挑む患者さんは少ない
⑥多臓器に渡るがん種の議論には反論しにくい

と言った理由が考えられる。

①学会は外に向けての活動に慣れていない

まず学会というのは、その領域の研究を進歩させ、医療環境を整備することを主目標としているし、専門医の養成などたくさんのテーマを持っている。
そのなかで対外的にアピールするというの割と苦手で、その手段も自前では持っていない。
マスメディアに対する公式発表ぐらいしかしていないだろう。
学会自体が大学教授や研究者の集まりで、製薬企業のような営利団体では無いため、医学界以外にもとことん影響力を発揮しようという貪欲さに欠けるところも一つの要因では無いだろうか。

②一専門家の意見はエビデンスレベルが最低で、相手にする理由がない

学会というのは内部でたくさんの論争があるが、最近ではその根拠となるエビデンスの優劣の序列がはっきり認識されてきた。
すなわち内容にかかわらず、論争の入り口の段階で議論が成り立つかどうかはエビデンスの質の差ではっきりさせることか可能となった。

参考:エビデンスとは(再挑戦)⑦まとめ1
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11050961397.html

どんなにもっともな理論を主張しても、上記エビデンスの信頼度に関しては崩しようが無い。
これを使って、医師だけでは無く、治療に関わる医療関係者あるいは患者さん自身が参考にすべき指針として作り上げられたのが各種がんの治療ガイドラインだ。

近藤誠氏はエビデンスレベルの高い引用文献を提示して、自説を補強しているではないかと言う向きもあるだろう。
しかしその研究背景が、日本の医療の実情にあっていないことも無視して持ってきている事も多いし、都合の良い研究だけ引用する手法だ。

③各種がんの治療ガイドラインが出そろってきている

エビデンスレベルの高い大規模臨床試験やメタアナリシス(複数のランダム化比較試験の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のこと)などをもとに各学会が相当な労力と時間をかけて治療ガイドラインを作り上げている。

医療側としての公式な解答はこのガイドラインが全てと言ってもいいため、学会内で発言しない一研究者の議論にはわざわざ反論するほどでも無いと考えているのだろう。

ただし念のため書いておくが、がん治療で重要なのは近藤誠氏のレッテルを貼るような極論やガイドラインに忠実に従うことでも無い。

例えば...
食道癌診断・治療ガイドライン2012年版の序から抜粋

------多数を対象とするRCT(ランダム化コントロール試験)が最もエビデンスレベルが高いわけですが、同様のRCTでも結果が異なることがあるのは御存知のとおりです。臨床の場では、全く同じ病状であるものは1例としてなく、1例1例異なるものです。食道癌の進行度、悪性度、病巣の占居部位、浸潤性発育か膨張性か、などと共に、担癌患者の全身状態に加えて年齢や生きようとする意欲なども考え合わさなければなりません。このように患者の治療方針を決定するには医療チームでの詳細な検討に加え、患者やご家族の意志を尊重する必要もあります。その治療方針決定のために本ガイドラインがお役に立てれば幸いと思います。しかし、ガイドラインが個々の患者の治療方針を縛るものではありません。もちろん医療訴訟の根拠となるものでもありません。あくまでもガイドラインはガイドラインであり、本ガイドラインを踏まえて複雑な患者個々の条件、状態を吟味し、最終的には主治医が判断するものであります。ガイドラインから少しはずれた治療を行うことがその患者のより良い時間を長くする場合もあるでしょう。通リー遍にガイドラインに従っていれば 良いというものではないと思います。重ねて申し上げますが、医療は複雑であり危険を伴うものです。---------

という主張からわかるように、がん治療においては一刀両断的な判断は避けるべきで、個々の患者さんは主治医と綿密な協力して初めて最適解が得られるものだ。

続く
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コメント

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9 ■Re:近藤先生の被害者がいます

>梅太郎さん
個々の事例では近藤誠氏の方針でうまくいった人もいれば、そうでない人もいるでしょう。
当方が言いたいことは一般的な確率論で考えると、近藤誠氏の主張は患者さんにとって不利だろうと言うことですが、患者さん個人の選択は自己責任においておこなうしかありません。
医療に完全な確実性は求められないからです。

8 ■近藤先生の被害者がいます

家族が肺癌になり、手術で切除し、今、元気にしています。
実は私は、手術前に近藤先生の本を読み、手術なんてやめたほうがいいのではないか、、と思っていました。
でも勿論、本人に近藤先生の本の内容を伝えることなど、とてもできませんでした。
結局、本人が手術可能との診断に希望を得、果敢に手術に臨み、無事、成功しました。
とはいえ、癌という病気ですから、これで完治したと楽観できないことも、本人は知っています。
だけど、手術を受けたいと本人が望み、受けて良かったと、今、本人が思っているのです。
近藤先生の本は、とても罪深い本だと思います。
私たち家族のケースよりも、もっと早期の患者さんの場合は、なおさらだと思います。
先日、新聞に大きな広告が載っていた江田証医師の「医者が患者に教えない病気の真実」の207頁に、被害に遭ったというAさんのことが書かれています。
この「ある医師」とは、近藤先生のことですよね?
なぜ、もっと社会問題にならないのか、不思議でなりません。






7 ■Re:やはり早期発見ですね

>もとさん
もちろん全てのがん種で早期発見が有効というわけでは無いでしょうが、
①頻度が高いがん種
②検査が簡便で負担が少ない
③個人的な危険因子がある
ということを満たす場合は有効なことが多いと判断して良いかと思います。

6 ■Re:無題

>みんみんさん
がんで最後まであまり苦痛が無いと言うこともあり得るのですが(特に高齢者)、それが多数派とはとても言えないでしょう。
個人差が大きいのは事実ですが、がんで苦しんでいるシーンを身近に見聞きする人は多いですね

5 ■Re:「苦痛を強いる悪魔VS解放の神」

>TOMYさん
もう十分に詳しい解説されているので今更蛇足ですが、一患者さん個人に投与した薬剤の結果は良くても悪くても、たまたまそうだったと言うことしかわかりません。
その薬剤を使用し苦痛を伴っていたとしても、全治療期間を通じて判断するとメリットの方が大きいというデータを集める後ろ向き検討を通じて、有効性を仮定し、前向き試験で検証していかないことには将来の患者さんに申し訳ないという倫理観を医療側は持っています。
しかし今がんと闘っている患者さんは待てないわけです。こういうギャップでお互い必ずしも意見がかみ合わない部分も大きいことも近藤誠氏の理論が入り込む一因なのでしょう。

4 ■無題

 学会を初めとした医療界が組織的に反論しない理由の一つとして
「近藤誠などまともに相手にするな」 という雰囲気があるのではないかと思います。

 医療界でまともに評価されていない近藤氏のいうことなど放っておけばよいとでも思っているのかなと思います。

 しかし、近藤氏の著作は実際に売れており、その影響力は決して(がんの治療の現場においても)無視できる存在ではなくなっています。

 近藤氏への反論を行っても、特に学会の中で評価されることにはならないと思います。
 その仕事(近藤氏への反論)は医療界における出世にはつながらないと思います。

 しかし、世間は近藤氏に注目している。

 うまく言えないのですが、医師が提供したい医療と、患者が求める医療との齟齬につけ込んでいるのが近藤氏なのだと理解しています。

 医療界において医師を評価するのは基本的には医師だと思います。
 その評価システム、評価とは主に人事に現れるものと思いますが、これが世間が求める医師を生み出すシステムには程遠いのが現状なのだと思います。うまく言えないいんですが、なんとなく Sho 先生に伝わらないかなと思って書き込んでみました。

3 ■無題

抗がん剤治療をしなければ、ガンは苦しまないという情報が広がっていますね。けれど、私の母は抗がん剤治療が合わずにそうした治療は受けませんでしたが、大腸ガンで痛みに苦しみ亡くなりました。ガンは楽に死ねるというのは違いますよね?抗がん剤などなかった時代の正岡子規だってガンで苦しんでいたようですし、ガンは苦しまないというへんなイメージが広がると苦しんでいる患者さんへの理解がなくなるようでこわいです。

2 ■「苦痛を強いる悪魔VS解放の神」

近藤先生の本が売れる原因はシンプルです。
「楽な方法で長生きしたい。」と言う患者の強い願いがありますのでそれを分かりやすい理論で専門家(医師)が本を書けば売れるのは当たり前のことです。それに拍車を掛けている背景には「苦しい治療をしても患者が望む結果が得られていない」と言う現実があるからです。

元来、治療とは苦痛からの解放です。

患者は通常は医師に100%の信頼を置いて身を委ねます。しかし癌治療(特に抗癌剤治療)に置いては苦痛を伴う為に信頼が少なくも100%では無い状態となり、それが続けば「疑い」や「逃避」を考えてしまいます。

この類の本の著者は金儲け又は有名になりたいと言った欲を叶えるためにその「疑い」を利用し患者の心の「逃げ場」を作って商売しているに過ぎません。免疫治療や高額な自由診療などの医師も殆どが同じです。
勿論、全てでは無く例外的な人も居られますが高い使命感や志を持った方は専門機関での研究に没頭するかSHO先生の様に厳しい現実と戦いながら臨床現場で戦って居られますのでこんな本を書いている暇は無いですね(笑)
※SHO先生はその切磋琢磨の臨床現場で忙しい中で1円にもならないブログや研究会をやっておられる訳ですから大変だと思います(笑)

近藤医師の話しに戻りましてこのシリーズの本も初版は別として昨今はこの類に入ると思います。定年が近いからでしょうか?(笑)
正直に言えば患者に取ってはこの論争自体が迷惑又は不利益(迷いを強く誘発)な話ですので大組織として公然と否定批判をして欲しいのですがそれが無理な理由は彼らの言っている事は100%嘘ではないからです。結果として患者の苦痛を解決する100%の方法を持っていない(模索中)なので反論すれば結果墓穴を掘る事にもなるからだと思います。
対談は「苦痛を強いる悪魔VS解放の神」の構図になりますから最初から分が悪いです(笑)

現在の化学治療の効果が患者的に見ればいわゆる「ビミョー」なのです。その効果の積み上げは大事ですが判断するのは今の患者であり将来の患者の為の検体には誰もなりたくないのです。

結局は治療に置いて明確に苦痛から解放されない限りはこの論争は並行線であり癌患者を食物にする医者の顔をした癌マフィアたちは後を絶たないと思います。

1 ■やはり早期発見ですね

下咽頭がん初発、頚部食道がん、右リンパ転移、IMRT、と地獄の治療、その後胸部食道がんは手術台にも上がらず矢野ドクターにより内視鏡室で15分入院4日でした。再活したサザン桑田さん、残念な結果だった勘三郎さん、福島原発の吉田所長…やはりいかに早く見つけるかが大切と考えます。

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