2011-11-20 16:09:09

イレッサ訴訟の背景④問題点に回答すると

テーマ:医学的話題
原告が主張する問題点にまとめて回答すると

・他の抗がん剤と比較し副作用死がずっと多い

→当初の間質性肺炎による死亡例は今回の裁判で認定されたように肺がんそのものの症状による死亡例も相当数含まれる。

また従来型の抗がん剤でも開発当初はかなりの死亡例が出ている。
イリノテカンなどは十数年前死亡例が多発し、朝日新聞で「悪魔の薬」とまで罵倒された。

これは特有の副作用である重篤な遅発性下痢から敗血症を発症して亡くなるケースが多かったのだが、こういう経験を通して、適切な対処方法が開発された。
そして今や大腸癌を始め、世界的になくてはならない抗がん剤になっている。

・なぜ日本が世界に先駆けてスピード承認されたのか。

→実はアジア人に特に効きやすいデータがあり、多方面から多くの要望が出ていたため。これはEGFR遺伝子の変異がアジア人に多いからと後で判明した。そしてそれは多くの犠牲の上で判明した事でもある。

・弁護団は死亡者が多く、ことさら規模の大きい薬害との主張をしているが....

→肺がんそのものの死亡率、死亡数そのもののデータを並べておかないと公平ではない。
2年半で副作用死が577人もいると主張しているが、日本における肺がん患者のデータを記載すると
年間罹患者73,635人(2002年)で年間死亡者63,255人(2006年)にものぼる。致死率はかなり高いことがわかるだろう(stage IVでは1年生存率40~60%ぐらい)。

・延命効果が証明されていないではないか

→数々の臨床試験でEGFR変異のある肺腺癌の患者さんでは明らかに有益性が上回っており、対象患者ではすでに第一選択薬にとされている。
延命効果が証明されていない理由は以下による。
イレッサはいくつかのエビデンスレベル2の臨床第三相試験がおこなわれている。
イレッサか従来の抗がん剤のどちらかに割り当てられた二つの患者群で主要評価項目はPFS(無増悪生存期間)だ。
患者はコンピュータで勝手にどちらかに割り付けられるが(そのほうが意図的なものが入らず偏りが少なくてすむから)、一度腫瘍が増大したら、相当数の患者がもう片方の薬剤を投与されている(後治療という)事実が見過ごされている。つまり非イレッサ群にもイレッサが投与されている率が高い。

これはクロスオーバーと言って、これがあるとどうしても生存期間に差が出にくくなるのだ。
では禁止すれば良いのではないかという意見もあるが、第三相試験はかなり有望と見られる新規薬剤が選択されているので、それを禁止するのは倫理的に問題だとされる事が多い。

そのため両群の生存期間の差が出てないと言うレッテルだけが一人歩きしているケースがよくみられる。
以前近藤誠氏が、大腸がんのベクティビックス(パニツムマブ)が延命効果が認められてないのに認可されたのは問題だと騒いでいたのは、このクロスオーバー試験という事を意図的に隠していたためという記事を書いた。
近藤誠氏「抗がん剤は効かない」批判①延命効果はないの嘘
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10953398123.html
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1 ■補足

このシリーズでは原告の裁判に置ける主張というより、裁判を含む全体的な主張への回答と言うことにしています。

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