2011-01-21 19:09:02

近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」に対する反論II-①コメントへの回答

テーマ:近藤誠氏への反論

近藤誠氏の「抗がん剤は効かない」に対する反論まとめ<後篇>
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10753392948.html
への、しょう 2011-01-21 02:14:01さんからのコメントいただきました。

>この車のたとえは明らかな間違い。
>車にたとえるなら、近藤氏は車社会から受ける利益は(全く?、少ししか?)ないのに、交通事故で多>くの死傷者が出ているから、車は使うなと言っているのです。
>つまり、抗ガン剤は治療効果はあるけど副作用もあるから使うなといってるのではなく、治療効果は認>められず副作用は確実にあるから使うなと主張しています。
>患者として知りたいことは、治療効果があるかないかということ。
>車にたとえるなら、車社会から受ける利益があるかないかということ。
>そこが論点

わかりやすいたとえ話をしたつもりですが、記事に受ける印象については各自様々と思います。
なのでこちらが説明した背景を書きます。
まず副作用は確実にあるから使うなという点に関してはその大いなる誤解を後日解説します。
近藤誠氏は癌が早く見つかるからその時点からの死亡までの期間が延びているだけ(リードオブタイム)で利益がないと記載していますが、その点についての反論はすでに記載しました。
近藤誠氏は最低限の根拠と思われるリードオブタイムの論文さえ挙げてません。
一方各がんに対する化学療法の延命効果は既に数多くのエビデンスがありとても覆せるとは思えません。

stage IV患者さんの生存期間中央値(MST:100人の患者さんのうち50番目の患者さんが亡くなるまでの期間)は無治療、10年前、現在の化学療法を行った患者さんで分けると胃がんではそれぞれ4か月、7か月、13ヶ月、大腸がんでは8ヶ月、15ヶ月、20-26ヶ月となっており非常に明確な延命効果が報告されています。

とここまではがん治療医はすごい進歩だと思ってしまうですが、残念ながらこれはがんと診断されたばかりの患者さんの視点ではないと気づいていない医師が多いのが大きな問題(この点は別の機会で取り上げます)なのです。

がんと診断される前は漠然と平均寿命まで生きるつもりだった人にとっては「なんだ人生80年なのにたった1年や2年の延命なら1-2%の延命効果しか進歩していないじゃないか」と思ってしまうのです。

これに関しては残念ながらその通りですと言わざるを得ません。

しかしこれは以下の重要な観点が欠如しています。

・これはMSTというワンポイントでの比較ですから、生存曲線での比較になるともっと広範な範囲の患者さんに影響するような大きな差が出てきている(参照)。
例えば胃がんであれば2年生存率となると10年間で約1割から2割に倍増している。
また大腸がんでは特に化学療法で手術不能肝転移例のうち治癒切除可能となるケースが10%前後出てきている。

・治癒不能がんとわかる前とわかった後では本人の感じる時間の大切さが全く違うことに気がついていない人(医療者を含む)が多すぎる。
気がついたら人生の終焉間近だったところをもう一度苦痛を減じ、元気な時間を持てるチャンス(抗がん剤治療)があるのは大きな意味です。
サッカー試合で言うところの終了間際の「ロスタイム」に相当するものを提供する事になるわけです。
このわずかな時間でも死を認識せざるを得なくなった患者さんにとっては計り知れない価値を持ちます(仕事の引き継ぎ、遺産相続、家族と暮らす時間など本人にとっての最重要事項を優先実行出来るという以前より遙かに濃密な時間を確保できる)。
・さらに希望が全く残されていないのとわずかでも効く可能性があるのとでは本人の感じる不幸度には莫大な差があります。これは抗がん剤が無効となった後に高額で怪しげな「代替医療」へ走ってしまう人が少なくないことからもわかることです。
前述した「副作用」や「余命」、「科学的根拠」、「効く」などの言葉は不幸な誤解を招く曲者(くせもの)医学用語で誰もその意味や定義を明確にする重要性を認識していないようです。そこで近日中にその解説シリーズを開始する予定です。

なお現時点では週刊文春の先週号、今週号の腫瘍内科医からの反論、近藤誠氏からの再反論はまだ読んでないので後日言及します。
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7 ■無題

stage IV患者さんの生存期間中央値(MST:100人の患者さんのうち50番目の患者さんが亡くなるまでの期間)は無治療、10年前、現在の化学療法を行った患者さんで分けると胃がんではそれぞれ4か月、7か月、13ヶ月、大腸がんでは8ヶ月、15ヶ月、20-26ヶ月となっており非常に明確な延命効果が報告されています。


上記の根拠となるデータ・論文はどこにあるのでしょうか?

6 ■>3 ■コメントありがとうございます

お忙しいところ、レスをいただきありがとうございます。

先生の言わんとすることは、よく理解できました。
>>まさに学会では(抗ガン剤は有効であると)既に勝負がついているのです。
このことを前提とするなら、あの例え話は理解できます。

このような医学界の結論は、一般人、患者ともある程度は認識していると思いますし、近藤氏自身ですら認めるところで、そこを敢えて医学界の常識に反旗を翻し抗ガン剤は使うべきでないと主張しているのですから、医学界では有効だと結論が出ているという理由で近藤氏を批判するのなら、単なる水掛け論に終わってしまいます。
あるいは、既に勝負がついている問題で反論する価値すらないと門前払いにしたに過ぎず、論拠を挙げて反論しているものではありません。

近藤氏に反論するというのなら、面倒でも根拠を挙げて反論するべきであり、事実、先生のブログではそうなっていましたが、突然、あの例え話のところだけ
>>まさに学会では(抗ガン剤は有効であると)既に勝負がついているのです。
という根拠ではなく、医学界での結論を前提とした例え話で近藤氏の主張をバッサリと切り捨てていたので、非常に違和感を覚えた次第です。

近藤氏の主張に耳を傾けている一般人は、「抗ガン剤は有効である」という医学界の結論、常識自体が間違っているのではないかと疑っているということを知って頂きたいと思います。

5 ■胸水について

ずっと拝見させて頂いております。
大変励みになっています。
ありがとうございます。
はじめてコメントさせて頂きます。

先生のブログは医療麻薬&近藤氏など虚実
日々大変為になっております。

癌性胸水について教えて下さい。

4 ■PDFみましたが

>アトムさん
これはretrospective studyですね。後ろ向き研究といって選択バイアス(偏り)が入り込むのでエビデンスレベルはレベルIVとなり高くありません。
科学的根拠についての超初心者向け解説⑤-1エビデンスレベルとは
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10702941542.html
一方CONKO-001のような試験はprospective study前向き試験と言ってレベルIIとより高いエビデンスレベルとなります。以下を参照ください。
http://www.gi-cancer.net/gi/asco/2008/report/0602/lba4504.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/data/cancerex/panc-gem.pdf
http://journal.jsgs.or.jp/pdf/042040347.pdf

3 ■コメントありがとうございます

>しょうさん
ロボトミー手術をご存じと言うことはある程度年齢が上の方でしょうね。
「近藤氏の敗北となったとき初めてたとえ話が成立するものではないでしょうか?」

>>まさに学会では既に勝負がついているのです。本来なら近藤誠氏の主張は学会で行われるべきなのですが敗北するのがわかっているからこそ判断困難な一般者向けの記事で煙を巻いていると考えられるので車のたとえ話にしました。
学会の弊害がないとは言いませんが、少なくとも学会と正面切っては対決している姿勢ではありません。しかし社会への影響はきわめて大きいためブログで反論記事を作成しています。

2 ■わざわざ、ご説明ありがとうございます。

私は専門家でもありませんし、抗ガン剤の有用性については、どちらが正しいのか分かりません。
ただ、あのたとえ話で近藤氏に反論するのは明らかに論理的な間違いがあると思います。

なぜなら、抗ガン剤の有効性有用性を問題点として議論しているのに、「有効性有用性が明らかである車」に抗ガン剤をたとえているのですから、、

次のようなたとえ話は、議論をわかりやすく説明したと言えるでしょうか?
ロボトミー手術を無くせというのは、車を無くせといっているようなものだ。
原発を無くせというのは、車を無くせといっているようなものだ。

ロボトミー手術や原発が車と同様に有用で交通事故以下のデメリットしかないことを証明しないと論理的に成立しない例え話ですよね。

件のたとえ話も、抗ガン剤が有効であるという結論を得て、つまり今の近藤論争が近藤氏の敗北となったとき、初めてたとえ話として成立するものではないでしょうか?

1 ■勉強させていただいております。

妻がステージ2の膵がんで術後補助化学療法について悩んでおります。
ネットで情報収集していたところ近藤誠先生の主張も説得力を感じていました。先生は下の信憑性が高いデータについてどう解釈をしたよいか教えていただければとコメントさせていただきました。
データはHPに公表されている膵癌登録2007です。少々古いかもしれませんが。

■ステージ1とステージ2のグラフの意味するものは?
http://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/22/1/e40/_pdf/-char/ja/
■図3.9.a.3 Stage I-III切除例における術後化学療法と生存率の意味するものは?
http://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/22/1/e156/_pdf/-char/ja/

2001-2004年といえば承認されたばかりのジェムザールのデータではないかと思うと訳がわからなくなりました。もちろんステージ4以降には効果があるのは良くわかったのですが。。。





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