10年前の私は、貧乏と猜疑心と自責のどん底にいた。



結婚式の次の日には、妻と二人で現場にいた。

新婚旅行に、近場の温泉でさえも連れて行って上げられないほど

どん底の生活をしていた。



お客がつかめない。

ただそれだけの為に、どれほど苦しく、そして屈辱的な日々を過ごしたのだろうか。




たまにやってくる仕事の話には、とりあえず全てに飛びついた。

そして、妻と二人、自宅に帰りつくのは夜中をいつも過ぎていた。


時には、車から降りて家に帰り着く気力さえ無くなり、

冷え切った車の中、ガソリンを使う余裕すらないためエンジンを切り、

眠りに付いた事も、一度や二度ではなかった。


私は、そんな妻の横顔を見るたびに、

詫びる言葉も浮かばないほど、無力な自分を責めた。


そして、世の中の全てと自身に対し、必ずこの借りは返すと心に誓った・・・





24時間働き、床を洗い続けて7万円。

それが、当時の私と妻の価値だった。


長崎にあるテーマパーク・ハウステンボス。

私には、悔し涙の思い出しかない憎むべき対象でしかなかった。


毎夜あがる花火を、疲れてボロボロになった体を車のシートに横たえ、

フロントガラス越しに、心無く眺めていた。


そして、その花火が終わるころ、

重い道具を抱え、楽しげな人たちの中を逆送するように、

そして、うつむきながら夜の作業へと向かった。



手をつなぎ楽しげな家族。

肩を抱き、幸せそうな夫婦。


全てが憎かった。

そして、その原因が全て僕にある事も分かっていた。



「涼君なら、絶対に大丈夫だよ。絶対に世間がアッというような成功をするよ」

「それまで私は、お掃除頑張るから」


妻のこの一言が、何も無い僕の心を支えていた。

そして、その一言が余計に心に染みた。




「必ず勝ってここに帰ってくるから、10年後の俺を見てろ」

「あの幸せそうな奴らよりも、何倍も成功して帰ってくる!!!」



それは、不甲斐ない自分と、初めて正面切って闘う誓いとなった。

弱い自分に勝つと決めた勝利の一歩になった。




ちょうどあの誓いから10年。

当時からは考えられないほどの毎日を送れるようになった。


娘もやってきた。


10年前に願っていた事のほとんどは叶えることができた。



うつむいて歩いていた私はもういない。

時々負けそうになる事もあるが、あの時と同じ声で励ましてくれる妻がいる。


本当に、こんな僕によく付いてきてくれたと思う。

そして、いつもどんな時でも支え続けてくれた。



僕と妻は勝った!

そして、これからの10年も必ず勝つ!!



「世間をアッといわせる成功をするよ」

その妻の言葉をウソにしないために、僕は僕と闘う。



そして、また10年後にここに帰ってきて、今の自分にリベンジする。

全てに勝って、またここの花火を彼女と一緒に見ようと思う。
















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