「雅紀さん」
しょーちゃんに呼ばれて、重なる唇。キス。
応えようと開いた口に、何か流れ込んできた。
「……………んっ」
ビックリして、目を開けた。
スポーツドリンク、だ。
唇が離れて、少しして、もう一度。
さっきより多目に流れてきた。
「そろそろエアコンつけてヤらねぇと本気で熱中症になるな」
「…………だね」
しょーちゃんが、大丈夫か?って、扇風機の風を僕に向けてくれる。
ちょっとぼんやりする頭で、大丈夫って起き上がって、ペットボトルを受け取った。
夏の花屋は寒い。
花が傷みやすいからって、いつもエアコンの設定は低め。
だからなるべく部屋ではエアコンを使わないようにって。してるけど。
「一気飲みかよ」
「ん、ごめん」
汗、と。
声をあげすぎて、喉がカラカラだった。
「まだ要る?」
「ううん、もういいよ。ありがと」
「ん」
しょーちゃんがペットボトルを持って行ってくれる。
戻って来た手には、また新しいペットボトル。
しょーちゃん、それ、仕事に行くとき用にってこないだ箱買いしたやつなのに。
そんな遠くないとは言え、夏の自転車通勤だからって。
ベッド。
僕の隣に座って、しょーちゃんがキャップを開けてる。
「ねぇ、しょーちゃん、仕事に持って行く前になくなりそうな勢いじゃない?」
「ああ。また買いに行かないとな。夏のえっちの必須アイテムだ。知らなかったよ」
しょーちゃんがすごく真面目な顔して言ってて、ちょっとおかしい。
「僕たちふたりして汗っかきだもんね」
「塩飴とかベッドんとこに置いとく?飴舐めながらヤるとか」
「それ絶対、喉につまると思う」
「……………確かに」
ちりーんって、風鈴の音。
エアコンは控えめに、その分気分だけでもって買ってみた、昔ながらの。
「起きられる?もう1回シャワー浴びて来いよ」
「しょーちゃんは?」
「雅紀さんがへばってる間に浴びた」
「全然知らなかった…………」
しょーちゃんが笑う。そんなに良かった?って。
「しょーちゃん」
「なに」
「アレ、は、またネットで調べたやつ?」
「さっきの?」
「うん」
しょーちゃんの肩に凭れる。
またちょっと逞しくなった、身体。
さっきのアレ、今まで、したことないの、だったよね?
暑いけど、汗がすごい、けど。
「そう、ネット。見つけたときに、雅紀さんが好きそうなやつだなって思った。ああいう密着するやつ、好きだろ」
「…………好きだよ。しょーちゃんも好きでしょ?」
「ん、超好き」
キスして、キスして。
笑う。
良かった、よ。すごく良かった。気持ち、良かった。
思い出して、身体が覚えてて、震える。
ちりーんって、また、風鈴の音。
「何か、食いに行かね?たまには」
「うん、行こうか。たまにはね」
「かき氷も食おうぜ」
「いいね。夏だね」
んって、落ちていた服を渡されて。
僕はシャワーを浴びるため、ベッドから立ち上がった。
「頼むー、隠してくれー」
後ろから聞こえてきたしょーちゃんの情けない声に、僕は笑った。