今回の騒動、いわば「将棋連盟不当処分疑惑事件」に関して知りたいことの一つに、竜王 戦七番勝負の挑戦者を三浦九段から丸山九段に変更することについて、将棋連盟は、いつ主催紙・読売新聞の了解を得たのか、ということがある。

 

 これまでの、連盟からのわずかな情報と、週刊誌や新聞等での記事を合わせて、まず時系列で考えてみる。

 

10月7日(金) 渡辺竜王が島朗常務理事に電話(文春記事による)
10月10日(月・体育の日)「極秘会合」
10月11日(火) 常務会が三浦九段に聞き取り調査
10月12日(水) 日本将棋連盟が、三浦九段の年内出場停止処分と、竜王戦七番勝負の挑戦者が丸山九段に変更されたと発表

 

 遅くとも、11日(火)午前中には「連盟の判断で挑戦者を変更することを了解する」という読売新聞の返事がなければならないだろう。
 この日の常務会では、三浦九段の休場に話が及んでいるのだから。
 主催紙である読売新聞の了解なしに、挑戦者の変更を議論できるとは思えない。

 

 一般社会の常識として考えるに、竜王戦挑戦者を変更するということは大変な事態であり、その決定の前には読売新聞と将棋連盟は協議し、合意(了解)しておかなければならないだろう。
 例えば、将棋連盟が常務会で決めて、それを電話1本で読売新聞の担当者に連絡して了解される、なんてことはあり得ない。
 竜王戦には、読売新聞は3億円を出しているのだから。

 

 渡辺竜王はブログ(2016-11-01)で、次のように書いている。

島さんは対局者、主催者との折衝、マスコミ対応で10月10日から寝る暇もなく動いていた

 

 読売新聞との折衝に当ったのは、島朗常務理事であったとのことだ。
 ここで、「10月10日から」と明記されている。

 

 先に記したとおり、10月10日(月・体育の日)は文春のいう「極秘会合」のあった日だ。

 10月7日(金)に電話をしたが、島常務理事が動き始めてくれたのは、土日を過ぎて月曜日(体育の日)かららしい(「極秘会合」の前か後かは不明だが)。

 

 もう一度、一般社会の常識として考えるに、3億円出してくれているスポンサーに、挑戦者に不正疑惑がありましたので、変更させてください、というのは、簡単ではない。まず、不祥事をお詫びしなければならないだろう。

 

 通常であれば、まず、担当者に事情を説明し、「上」の人の時間をもらってもらうことをお願いする(読売新聞参り1回目)。

 

 囲碁・将棋担当のキャップに事情を説明し、「上」の人の時間をもらってもらうことをお願いする(読売新聞参り2回目)。

 

 文化部次長に事情を説明し、ご了解をお願いする(3回目)。

 

 文化部長に事情を説明…(4回目)。

 

 編集局長(専務)に事情を説明…(5回目)。

 

 副社長(事業・編集担当)に事情を説明…(6回目)。

 

 大橋副社長まで行ったかどうかは微妙だが、尾崎文化部長(将棋には疎いだろう)では判断できず、溝口専務・編集局長までは上げられたと思われる。
 同席でいっぺんに説明させてもらえたこともあったかもしれないが、2度3度説明を求められたこともあったかもしれない。

 

 もちろん、読売新聞内では、それぞれの間に、部下が「上」の人に説明し、対応策を相談するものだろう。
 普通だったら、2週間は必要な協議、折衝だと思われる。

 

 事の是非は置いて、島常務理事の苦労は大変だったろうと思う。
 普通だったら2週間は必要と思われるところを、1日で突破したのか。
 副社長に近づくにつれて、折衝態度は土下座に近いものが必要となっただろうし。

 

 それにしても、1日で読売新聞が了解するのだろうか、と思ってしまう。

 

 むしろ、読売新聞への情報提供あるいは打診は、10月5日(水)か6日(木)くらいからは始まっていたのではないか。
 その情報提供、打診を行ったのは、島常務理事ではないかもしれない。
 その際の情報提供、打診とは、「渡辺竜王の意思は、疑念がある棋士と指すつもりはない、タイトルを剥奪されても構わないということだ」と説明しないと、事情を伝えられないのだが。

 

 なお、この渡辺竜王の発言とされているものについて、ご本人はブログで次のように書いている。

島さんが言ったとされる自分の発言については島さんとの間での言葉のあや、解釈の違い、さらに報道を介すことで自分の本意ではない形で世に出てしまいました。これについては島さんとも確認した上で「渡辺君の本意でないなら直したほうがいい」と言ってもらったので昨日の月例報告会と取材でその旨を伝えました。
(中略)
常務会が三浦九段を呼んだ時点ではソフト指しがあったと決め付けているわけではなく、処分ありきでもなく、あくまで話を聞く場でした。

 

 島常務理事が「渡辺君の本意でないなら」と言ったということは、それまでは「疑念がある棋士と指すつもりはない、タイトルを剥奪されても構わない」が渡辺竜王の本意だと島常務理事は思って、読売新聞や三浦九段に説明していたということだ。

 

 10月6日(火)くらいから読売新聞への内々の情報提供、打診があったはずだと思うが、それがなかったとしても、やはりおかしくないだろうか。

 

 渡辺竜王が言うように、島常務理事が「主催者との折衝…で10月10日から寝る暇もなく動いていた」としても、それはすでに挑戦者の変更に向けての動きになっていたはずだ。


 10月10日(月)の「極秘会合」も、10月11日(火)の「常務会」も、もはや中立的なものであったとは思えないが、どうだろうか。

 

 島常務理事は読売に、三浦九段に不正疑惑があり、渡辺竜王がクロだと確信していることを強調して、折衝してきただろう。
 仮に「極秘会談」や「常務会」で疑惑を不問とする判断が出たら、どうしようと思っていたのか。
 まさか、シロとなりましたから、挑戦者変更はなしでお願いします、とは言えないだろう。

 

 常務会が「処分ありきでもなく、あくまで話を聞く場」であったというのは、にわかには信じがたい。

 その時には、すでに島常務理事は追い詰められていたのではないか。

 

 

 ところで、私は、島九段に好感を抱いてきた。今現在も、好人物だと考えている。
 島朗九段は、将棋界だけでなく、各方面とも交流があり、今後の将棋連盟の運営を背負っていくことが期待される人物である。
 普及活動にも熱心で、私も(多面指しではあるが)二枚落ちで三度教えていただいたことがある。初代竜王という実績をお持ちになりながら、謙虚な姿勢で、人当たりもソフトだ。
 東日本大震災復興支援等にご尽力いただたことも言うに及ばず、立派な方だと尊敬している。

 

 この度の騒動、まことに気の毒に思う。

 どうか、島九段・常務理事がこの危機を乗り越えて、以前に増して活躍されるよう、祈念する。

 

 

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