日本将棋連盟の第三者調査委員会が開催された。
 いわば、「日本将棋連盟不当処分疑惑第三者調査委員会」だ。
 そもそも、今回の将棋連盟の処分はどういうものかというと、確たる証拠がないまま、不正行為の疑いがあるとしつつ、三浦弘行九段に対して出場停止の処分を行い、三浦九段の竜王戦(優勝賞金4320万円、敗者賞金1590万円)への出場の機会等を奪ったもので、当初、三浦九段が将棋ソフトを使って不正行為をしたのではないかという疑いが大きく報道されたこともあり、関係者及び将棋ファン周知のとおり、ネット上では「炎上」の状態となっている。
 
 この「不当処分疑惑事件」ともいうべき日本将棋連盟の不祥事については、断片的な情報が当事者から出ているが、連盟からの公式な説明はなく、今回、「第三者調査委員会」が設置されたことは一つの前進と評価はできるだろう。内部事情は知りようがない多くの一般社会人であるファンの目には、連盟の処分は「不適正業務」に映るからだ。
 
 まず、この委員会については、連盟からから独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な処分見直し、再発防止策等を提言するものとして、設置されたものと考えるべきである。
 すなわち、現状は、連盟自身による内部調査では、調査の客観性への疑念を払拭できず、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復することができない状態にある、と一般社会では認識されるということだ。理事をはじめ、連盟棋士の皆さんも、このことを十分理解すべきところだが。
 
 このような現状認識に基づくと、この委員会は、日本弁護士連合会による「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を参考にして、運営されることが望ましいものと考えられる。
 以下、このガイドラインの指針を見ながら、留意すべき事項を確認する。
 
 まず、事実の調査、認定、評価についての指針である。
 ガイドラインでは、「第三者委員会は、企業等と協議の上、調査対象とする事実の範囲(調査スコープ)を決定する。調査スコープは、第三者委員会設置の目的を達成するために必要十分なものでなければならない。」とし、また、脚注で、「第三者委員会は、その判断により、必要に応じて、調査スコープを拡大、変更等を行うことができる。この場合には、調査報告書でその経緯を説明すべきである。」としている。
 
 今回の委員会では、下に転記した「日本将棋連盟からのお知らせ」にあるとおり、「三浦弘行九段に対する出場停止処分の妥当性や、三浦九段の対局中の行動について調査する」もので、調査対象範囲は「出場停止処分の妥当性や、三浦九段の対局中の行動」とされている。
 しかし、ガイドライン脚注で示されているように、「必要に応じて、調査スコープを拡大、変更等を行う」べきであろう。
 特に、10月11日の常務会に至る、それ以前の関係者の動向については、この不祥事の経緯、動機及び背景、さらに当該不祥事を生じさせた内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点等を把握するために、十分に関係者に対するヒアリング調査を行うべきである。
 関係者には、週刊誌の記者も含むべきで、連盟からも出版社に協力を依頼することが必要だ。
 
 もちろん、渡辺竜王が発言したとされる内容については、複数の関係者のヒアリングを基に復元を試みるべきである。
 ガイドラインは事実認定に関しては、「第三者委員会は、不祥事の実態を明らかにするために、法律上の証明による厳格な事実認定に止まらず、疑いの程度を明示した灰色認定や疫学的認定を行うことができる。」としている。
 発言内容の厳密な事実認定が難しい場合でも、疑いの程度を明示した灰色認定は公表することが求められる。
(続く)
 
【参考】
 公益社団法人日本将棋連盟のホームページには、「日本将棋連盟からのお知らせ」のページがある。
  そこに、以下の記事が掲載されている。
  • 第三者調査委員会設置のお知らせ(2016年10月27日更新)
過日発表の通り、当連盟常務会では10月12日付で、三浦弘行九段を出場停止(2016年10月12日~12月31日)の処分と致しました。
本件につきまして10月24日に理事会を開催し、第三者により構成する委員会を設け、調査することを決定しました。委員長には但木敬一氏(弁護士、元検事総長)が決まりました。出場停止処分の妥当性、三浦九段の対局中の行動について、調査を要請しました。
  • 第三者調査委員会の開催について(2016年11月04日更新)
 三浦弘行九段に対する出場停止処分の妥当性や、三浦九段の対局中の行動について調査する第三者調査委員会(但木敬一委員長=弁護士、元検事総長)は本日、初会合を開催しましたので、お知らせします。
 なお、初会合開催に先立ち、永井敏雄氏(弁護士、元大阪高等裁判所長官)、奈良道博氏(弁護士、元第一東京弁護士会会長)の2人が新たに委員に選任されましたので、あわせてご報告いたします
 
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