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三谷英弘が考えていることを書いていきます。
 ・ 前衆議院議員(1期/2012.12~2014.11)
 ・ 元みんなの党倫理委員長
 ・ 弁護士


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昨日、安全保障法案が衆議院を通過しました。

今、採決の様子、そして国会の外で繰り広げられている反対運動ばかりが注目されてしまっています。しかし、そんなことで盛り上がる前に、それぞれの法案がどんな内容で、どの党が何を主張しているのか、皆様は果たしてご存じなのでしょうか。

政局的な部分が盛り上がっているからこそ、ここは冷静に、≪自公案≫、≪維新の党案≫、そして≪民主党案≫それぞれの見解を分析して、それぞれの特徴を知っていただき、どれが最も良いかということを考えて頂きたいと思います。

今回の安保法制はその守備範囲が非常に広いのと、焦点がぼけてしまうことから、今回は憲法論議を敢えて外して、今まで行われた国会での審議を踏まえ、中核的な争点の一つである「自衛権の行使」に絞って分析を進めて参ります。


まず、≪自公案≫についてです。

自公案の最大のポイントは、言うまでもなく、正面から集団的自衛権を限定的に容認する点です。

昨年夏の閣議決定において、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に集団的自衛権を行使できるものとされました。
これを受けて、今回の法案においては、閣議決定の内容をそのまま条文化した「存立危機事態」という概念を作って、この事態において武力行使ができることとされました。

※ 条文上、「存立危機事態」とは、
① 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、
② これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
  を言うものとされています。

これに対しては、改めて言うまでもなく「集団的自衛権」を認めたこと自体をもって、違憲だという批判があります。

これをさておくと、以下のような問題点が指摘されています。

まず、存立危機事態の定義が「限定的集団的自衛権」の要素そのままなので、具体的な対象が不明確となっているという指摘があります。特に「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」とは何かが不明確だと指摘されています。

また、集団的自衛権の行使できるのが、「我が国と密接な関係にある他国」に武力攻撃があった場合となっており、対象国が限定されていないという指摘もあります。さらに、地域の限定もないため、他国に派兵することを防ぎきれないという指摘もあります。

これらの問題点・指摘を踏まえて作成されたのが≪維新の党案≫です。

≪維新の党案≫では、まず自衛権を再定義することで、個別的自衛権・集団的自衛権の区別をしない、という政策判断をしています。そのうえで、ここにいう「自衛権」は単純に自国を守るために武力行使をするものだから憲法に違反していないと主張しています。

そのうえで、自国に武力行使がなくても、以下の「武力攻撃危機事態」に該当すれば、自衛権に基づく武力行使をなしうるものとしています。

※ 「武力攻撃危機事態」とは、
① 我が国周辺の地域において、
② 条約に基づき我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これにより
③ 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態
  を言うものとされています。

この案のポイントを簡潔に述べると以下の通りです。

まず、≪自公案≫では、広く地球の裏側まで自衛隊の派遣がなされることを防げないという懸念をなくすために①「我が国周辺の地域において」という要件を課しました。
次に、対象国が無限定にならないように「条約に基づき我が国の防衛のために活動している」という要件を課し、事実上米軍と共同で活動している場合に対象を限定しました。
さらに、≪自公案≫のようにどのような事態が対象になるのか不明確にならないように、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険がある」場合、つまり直接的な「戦火」が及ぶ場合に限定しました。

これに対しては、以下のような問題があると指摘されています。

まず、最大の問題点は、今までの国際法との適合性を欠くという点です。
従来の自衛権の考え方によれば、武力攻撃が正当化されるのは、自国に対する武力攻撃があった場合に個別的自衛権を発動するか、他国に対する武力攻撃があった場合に集団的自衛権を発動する場合に限られます。自国に対する武力攻撃がないにもかかわらず、自国を防衛するためだと主張して、他国に武力攻撃を行うと、「先制攻撃」だということで国際法違反と非難されることになります。

この点、 国連憲章上の国連への報告は集団的自衛権か個別的自衛権かの区別は必要ない(単に、「自衛権」の行使と報告すれば良い。)ので、個別的だろうが集団的だろうが区別する実益がない、と維新の党側は反論しています。しかし、集団的自衛権を行使するには、国際法上、被害国の同意または要請が必要とされていますので、この区別をすることは不可欠だと再反論されています。
(さらには、いくら対象を米軍に絞るといっても、日米安保条約のどの条文を見ても、アメリカ軍が当然に日本に対して同意・要請を行うと読むことはできず、明示的な同意・要請はなお必要となるはずだという指摘もなされています。)

なお、≪維新の党案≫提出者によれば、再定義された「自衛権」が、従来の政府解釈における「個別的自衛権」の範囲を超える部分があること自体は答弁の中で認めています。これに対しては、それであれば、正面から集団的自衛権を認めるべきではないかという指摘がなされています。

また、要件を厳格にしたと言いながらも、「明白な危険がある」ということの判断要素が不明確という指摘もあります。これに対しては、権利根底から覆される急迫性と発生蓋然性、また武力攻撃が着手に近い状況になっている場合がこれに該当するんだという反論がなされました。しかしながら、あくまでもそれらは「評価」であって、具体的な判断要素ではなく、千差万別な事象を全部書ききれないという意味では、≪自公案≫と同じであって、要件を厳格化したことにはなっていない、という指摘がなされています。

さらに、地球の裏側まで自衛隊が出動することを防ぐために設けた「我が国周辺の地域」の概念についてですが、提案者は「周辺の地域」は地理的な概念でないと説明されているため、全く歯止めとして機能していないという指摘があります。なお、地理的概念ではないが、いわゆる極東条項(日米安保条約第6条)の範囲内に限るとも主張されていますが、いわゆる後方支援活動ではなく、まさに日本が自衛権を行使するという事態に際して、なぜ極東条項を援用できるのか、論理的な合理性がないという指摘もあります。


以上を踏まえて、≪自公案≫と≪維新の党案≫のどちらが優れているか、を考えてみたいと思います。

個人的な感想としては、今回の≪維新の党案≫の問題意識は優れていたと思います。「武力攻撃危機事態」という概念を新たに生み出して、「自衛権行使」に様々な制約を課そうという試みはもっと評価されて良いと思います。

しかしながら、残念ながら、今回、維新の党は、与党が繰り返し指摘した根本的な問題点に対して十分な反論を行うことができませんでした。

まず、≪維新の党案≫では、国際法上の「集団的自衛権」の行使を認めるかどうか、最後まで態度を明らかにしませんでした。
この点、繰り返しになりますが、武力を行使するにあたって被害国の要請・同意を必要とするか、という点で、集団的自衛権と個別的自衛権とは大きく異なります。自国に対する攻撃がなく、なおかつ、被害国の同意・要請がないにもかかわらず、日本が武力行使をした場合、その武力行使は正当化されず、単なる「先制攻撃」だとみなされる、という指摘に十分に反駁できませんでした。

しかし、それも当然です。

前述したとおり、≪維新の党案≫の提出者すら、≪維新の党案≫における「自衛権」には、従来の政府解釈における「個別的自衛権」の範囲を逸脱する部分があることを認めており、最終的には、国際法的に「集団的自衛権」に該当する場合に必要とされる「被害国の同意・要請が必要」となる場合があることは認めてしまっているわけですから(アメリカ軍が同意・要請をすることを当然の前提にはしていましたが)。

結局、自公案では、正面から「集団的自衛権」の行使を認めて国際法上の問題点をクリアしているのに対し、維新の党案では、憲法的な議論を避けるため、言葉を選ばすに言えば、国際法的な正当性をある意味犠牲にしてまで「集団的自衛権」を認めているか否かを曖昧にしようという、計算づくの魂胆が見え見えとなっているように思われます。改めて言うまでもなく、正論の方が強いに決まっています。

(ちなみに、橋下市長のTwitterによれば、橋下市長は集団的自衛権は必要だという認識を明示しており、今回の維新の党案の提出者の答弁が必ずしも橋下市長の意見を反映したものとも思えません。)

これだけではありません。

先ほど述べたとおり、審議を通じても、「我が国周辺の地域」の概念も明確とはなりませんでしたし、また「明白な危険」を認定する判断要素も明確になりませんでした。この点は、良くも悪くも、法案提出者の答弁の巧拙によるところが大きいのかもしれませんが、少なくとも審議の過程において、これ以上ここが明確になることはありませんでした。恐らく、過去の経緯を含めて、今までの議論を詰め切れていなかったのではないかと推察します。

さらに、≪維新の党案≫は、事実上アメリカ軍が攻撃を受けた場合に限っていますが、今回の法案の真の目的の一つは、仮想敵国を中国とし、南シナ海にてどう中国を抑え込むか、どう中国の武力攻撃を抑止するかという点にあるわけです。
だとすれば、当然ながら、オーストラリアをはじめ、アメリカ以外の国の軍が攻撃された場合にも自衛隊が出動できる「余地」を残しておくことが、対中国の抑止力につながることから、事実上アメリカ軍が攻撃を受けた場合に限るべきではないという価値判断が働きます。

(この点は、正直言って国会の審議ではなかなか正面切って言いにくい部分です。ですが、中国が「仮想敵国」であって、その脅威にどう対処するかが大事なんだという議論はもっと深めてほしかったと思います。)


以上の通りですので、≪自公案≫と≪維新の党案≫とを比べる限り、自公案の方が法案としての完成度の観点からも、国際法を含めた法理論的な整合性においても、結果として優れていると、評価せざるを得ませんでした。


でも、繰り返し申し上げます。

今までの安保法制の議論を拝見してきましたが、維新の党が対案を出してからようやく本当に面白い議論となっていたことは事実ですし、国会のあるべき姿を見たような気がします。もっと議論を深めれば、もっと≪維新の党案≫の良さを示せたに違いありません。早く対案を出せていればと残念でなりません。

とはいえ、今回の対案をしっかりと提出し、わが党ならこう考える、という態度は、国会を本当の議論の場にするための大いなる冒険だったと思います。その意味で、その取り組みに敬意を表しますし、不遜かもしれませんが、高く評価させて頂きたいと思います。


次に、≪自公案≫や≪維新の党案≫と≪民主党案≫とを比較したいと思います。

この点、≪民主党案≫といいましたが、自衛権の行使に関しては、具体的提案は一切ありません。別に具体的な提案をせずとも、今のままで日本の守りは十分である、特段問題ない、というなら、それはそれで一つの考え方です。否定しません。

しかしながら、委員会質疑の中で、自民党議員(小野寺五典元防衛大臣)から、領域警備法だけで我が国を守れるのかと質問された際、民主党の領域警備法案提出者(大串議員)は「民主党には安全法制に対する考え方がある」としか答弁できませんでした。
つまり、現状において特段法律上の手当することなく我が国をしっかりと守れるのかについても、また今後いかなる備えをすれば我が国を守れるのかという点についても具体的な答弁をすることができず、この点に対する見解はまったく示されませんでした。

それはなぜか。
政党の中で考えがまとまっていないからにほかなりません。

この点、集団的自衛権に対する考え方でさえ、議員によって見解が異なります。
(野田佳彦前総理大臣は、ご存じのとおり、集団的自衛権を肯定する立場をとられています。)

これを考えると、今は時流にのって安倍総理大臣が進める議論に「反対」しているだけで、野党でいることに安住して単なる「反対のための反対」をしているに過ぎないように思えてなりません。
それでは、政権の座についたらそれまでの主張をひっくり返す、旧日本社会党(自衛隊合憲に転向)や今までの民主党(消費税増税に転向)と何ら変わるところはありません。

これだけ大事な問題であるというのであれば、わが党としては「こうしていくんだ」と具体的な対案を示すべきですし、対案も示さず、単に揚げ足取りをしていくだけであれば、政権担当能力がある政党とは到底言い難い。

したがって、議員の数としては野党第一党であると言いながら、自公や維新の党と比べて、政党としての責任感という意味では全くお話にならないと評価せざるを得ません。

※ なお、民主党の中には、議員個々人としては人格的に優れた方も多いので、議員の方々個々人を否定するつもりもないことは、どうかご理解ください。


最後に、≪自公案≫を提出した、自民、公明そして政府に対する個人的な想いを申し上げたいと思います。

PKO法案の時も、この法案でもそうですが、結局有事の際に真っ先にリスクを負うのは自衛隊員です。今後不測の事態が生じ、今回の安保法制によって整備された内容に基づき、自衛隊が出動するときのことを考えて頂きたいと思うのです。

彼らは決まったことには従います。

だとすれば、有事の際に万一自衛隊員が生命を落とされたとき。
考えたくもありませんが、そのときには国民全体で哀しみ、追悼できるような環境を整えて頂きたいと思うのです。

政府与党の役割は、単に法案を通せばよいということだけではありません。自衛隊が国民と一体となって動けるように、自衛隊員の方々に自信と尊厳をもってその職務を全うして頂けるような環境整備もしていくという高いハードルが課せられているのです。

だとすれば、諦めることなく、今回、可能な限り一人でも多くの理解を得られるような審議の進め方をして頂きたかったと思いますし、今後の議論もそのように進めて頂きたいと、心から願っています。


前衆議院議員 三谷英弘




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