海外出張が頻繁にあり
飛行機移動が多かった私ですが
その頃は時間刻みのハードスケジュールをおくっていたので
移動時間は体力を蓄えるためにひたすら睡眠に充てるか
機内でもパソコンを広げて仕事をするか
好きな映画に没頭するかのいずれかで
お隣の席の人と仲良くなろうとは
全く考えませんでした。
きっとその頃の私は
「忙しいから話しかけないで」
或いは
「疲れてるんだから話しかけないで」オーラ丸出しだったはず。
話しかけられてにこやかに返事はするものの
それ以上の話題に展開しないように
言葉を選んでいました。
眠りに集中するために
耳栓とアイマスクを利用することもしばしば。
できるだけ快適なフライトを過ごすため
コンタクトは絶対にはずしてメガネ姿となり
ノーメイクで搭乗。
仕事先からそのまま空港に向かった場合は
空港のトイレでしっかりメイクを落とし
それまでとはまるで別人のようになって飛行機に乗り込むことを徹底していました。
うっかり空港や機内で知人に遭遇した場合は
出来る限り相手に気づかれないようにして
でも普段と違う私にどうせあまり気づく人がおらず
何とか事無きを得ていたのでした（っていうか他人はそんなことどうでも良かったはず）。
とにかくその頃の私にとって飛行機に乗るということは
オン･オフでいうオフの時間で
自分の殻に閉じこもるためのものだったのです。
これがホリデー旅行となると
話はがらりと変わります。
飛行機を降りてすぐにあるアポのために
資料を用意しておかなくてはいけないとか
到着後休み無しで続くイベントのために
出来る限り体力を温存しておかなくてはいけないとか
そんなことは全く考える必要がないので
普段の社交的な私が顔を出します。
こちらから話しかけることはあまりないけれど
話しかけられたら会話を弾ませる余裕があります。
近頃の飛行機移動も余裕が出てきました。
今でもそのほとんどを仕事で飛んでいるのですが
昔と違い、今は自由業の私。
スケジュールもある程度自分の好きに決められるし
何せもう若くはないので
無理しないようにマイペースで仕事してるんです。
だからフランス～イスタンブール間くらいの短いフライトであれば
ちゃんと化粧もしているし
一応人から話しかけられても恥ずかしくない格好をしてるんです。
それが理由なのかわかりませんが
ここ2年ほど
気がついてみると
結構な確立で話しかけられているような気がします。
パスポートコントロールでも
ときにはちょっとした雑談をするし、
飛行機の隣に座った韓国のおばちゃんにケーキをもらったり
日本人の若者にトルコの絨毯屋に騙されたかもしれない相談を受けたり
フランスのビジネスマンに名刺をもらったり
ドイツ人の男の子に「今から日本に行って遠距離の彼女に会うんだ」
という話を1時間も聞いたりします。
今回パリからイスタンブールに戻る便で
隣の席に乗り合わせたのは
黄色のジャケットを着てサングラスをかけた
ド派手な男性でした。
私はいつもの如く疲れていたので
しばらく寝ていたのですが
機内食が配られる時間になると目を覚まし
トレイに乗った食事を受け取ろうとすると
窓側の席に座っていた私のために
その男性がフライトアテンダントからトレイを受け取り
「これ、無料だよ。僕のおごり」
と茶目っ気たっぷりに手渡してくれました。
そこで食事中に会話が始まり
彼はミュージシャンであること、
イラン人だけれども
政治的な理由で現在パリ在住であること、
イランの伝統的な音楽を主に演奏するが
ジャズとの組み合わせも行うとのこと、
イスタンブールには某大学（どこの大学かは彼が名前を思い出せず）でワークショップがあるので
それに参加するために行くのだとのこと。
その他諸々お馬鹿な冗談を交えて話す彼を
最初はあまり信用していなかった私ですが
飛行機を降りたところで
彼がCDをくれました。
家に戻って
彼の名前をネット検索してみると
一応ちゃんとした音楽活動を行っているようで
彼の名前はGoogle上のあちこちに。
CDも聞いてみたら
イランのバグパイプのような伝統楽器の音色が
なかなか興味深く
ジャズとの組み合わせを聞いてみたくなった私でした。
世の中にはいろんな人がいるんだな、と
空港での出会いには
新鮮な驚きがたくさんあって、いつも面白く感じます。
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