2010年06月12日

黄昏はいつも優しくて3 ~第33話~

テーマ:黄昏はいつも優しくて3

「ちがう……」
 いいながら体に震えがきた。名前をきくことすら忌々しい。とたんに呼吸が乱れだす。北沢が間をおかず「大丈夫、彼はいない」といって、背中をさすってきた。
「ねえ、篠塚先生。彼をぼくに任せてくれませんか」
「任せる?」
「いい医者を知っているんです。一度だけでもカウンセリングを受けたほうがいい。手足や唇の痺れや動悸、胸部の圧迫感、目眩。彼はまちがいなく過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)ですよ」
 篠塚が心配げに瞬をみてきた。
「このままにしておくのは良くない。そもそも、事件の発端はあなたにも責任があるんでしょう」
「篠塚さんは悪くないですから!」
 おもわず声を荒げる。道場にいた門人が驚いて視線を投げてきた。
「北沢さんは、なにも知らないじゃないですか。篠塚さんはぼくを」
 篠塚が遮るようにして「瞬、もういい」といった。
「でも」
 篠塚がすくと立ちあがり更衣室へとはいっていった。しばらくして、瞬と自分のバッグを手にもどってくると、すばやく瞬の腕を掴んだ。
「帰ろう」
「道着は」
「そのままでいい」
 腕を引かれるようにして出口へとむかう。篠塚の表情は重かった。


 篠塚の部屋にはいりソファに腰をおろす。篠塚がいきなり「北沢とどこまでいっているんだ」と問いかけてきた。
「なにもしてませんから」
「ならどうして」
 伽羅の香りのことをいっているのだろうか。ここで、北沢が故意につけたのだと言ったところで言い訳にしかきこえないだろう。これまでの経験からわかっている。自分がそうであったように、一度芽生えた疑心は簡単には拭えない。
「本当になにも」

「そうか」
 なにをおもったのか篠塚が瞬の袴紐に手をかけほどきはじめた。
 抗おうとして篠塚の手首に手をかける。篠塚が乱暴に瞬の手をはらいのけてきた。
「篠塚さん……」
 これまで道着姿で抱かれたことはない。篠塚はこと武道に対して厳粛な部分があり、それは道場においても徹底していた。
 袴紐をほどき次には胴衣に手をのばしてくる。名を呼んでも瞬をみてこない。胴衣の胸元を無遠慮にあけられた。いつもと違う。しごく手荒い。
 そのまま体重をかけるようにして圧し掛かかられ瞬は息苦しさに声をあげた。



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