2010年03月19日

second scene133 ~Episode・Shinozuka3~

テーマ:黄昏はいつも優しくて2

 いつもそうだ。醒めた反応と気のない台詞。最初から噛みあわないとは思っていた。

 この温度差……。

 あるいは瞬も感じているのかもしれない。ここで「ああ、抱きたい」といったら、瞬はどんな反応をしめしてくるだろう。

「そうですか」

 そういって、こともなげに見返してくるかもしれない。

 あるいはこうだ。

「だったら、抱いたらいいじゃないですか」

 そういう奴なのだ、この徳川瞬という男は。
 それでも、関係はうまくいっていると思っていた。北沢の存在が気にはなったが、瞬が北沢に恋愛感情を抱くとは、とうてい考えられない。あるはずがないと高をくくっていたのだ。あの日、北沢と抱き合っている姿をみるまでは。
 間宮に誘われ政治家のチャリティーパーティに出席した夜だった。

 会場で北沢と瞬が一緒にいる姿をみたときは驚いたが、北沢はアプリコット社の取締役の息子だ。顔をだしていても不思議ではない。おそらく気まぐれに瞬を誘ったのだろう。その時はそう自分に言いきかせた。
 ホテルのラウンジで珈琲を飲み、間宮の執拗な夕食の誘いを辞してホテルの地下駐車場にいった時だ。信じられない光景が目のなかに飛び込んできた。

 車のロックをはずし、なにげに前方をみると、並んだ車のむこうに瞬と北沢の姿があった。しかも抱き合っているではないか。

 瞬……?

 ふらりと近づく。目の当たりにしてもまだ信じられなかった。
 後先考えず北沢の車の脇までいき助手席のウィンドウを叩いた。北沢が顔をあげ仏頂面をつくる。追って瞬が放心した面持ちで振りかえってきた。

 涙……。

 いったい誰のための涙なのだと心中で問いかける。

 ドアをあけると濃厚な伽羅(きゃら)の香りが鼻腔を刺激してきた。
 その後、北沢がいってきた言葉に妙に救われた気になったのには自分でも驚いた。
「相手の不安を一方的に煽(あお)るような恋愛はするべきじゃない」
 すると、瞬の涙は自分のための涙だろうかと考え、すぐとそれらを打ち消した。くだらない恋愛小説の主人公にでもなった気分だ。浮気現場を目撃していながら相手の男の言葉に胸を撫で下ろしている。
 ありえない……。
 瞬の腕をとり強引に引きよせる。瞬はなんら抵抗することなく篠塚の胸にもたれかかってきた。北沢とおなじ伽羅の香りを全身にまとってだ。


 マンションまでの道すがら会話をする気にもなれなかった。動揺を悟られたくない。いま口論にでもなったら修羅場を演じてしまいそうだ。伽羅の香りが厭(いと)わしい。これまでにない展開だ。過去、恋愛においてこれほど胸中を荒立たせたことがあっただろうか。しかもハつも年下の相手にだ。
 結局、マンションに戻ると、その足で寝室にむかい瞬をベッドに押し倒していた。
 まだ放心状態の瞬に言い放ったのはステレオタイプの陳腐な言葉だった。
「あいつはそんなに良かったのか」




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