2009年10月16日

second scene41

テーマ:黄昏はいつも優しくて2

「足りないか」
 言って、篠塚が視線をあげてきた。
「篠塚さんは」
「ん?」
「……いえ」
 いつもそうだ……。
 劣情が去ると不安がやってくる。篠塚は決して乱れない。瞬の反応を楽しむかのように、性感を辿るかのように、無償ともとれる快楽だけを与えてくる。嫌なのではない。されるがままに抱かれるのは好きだ。だがこれは愛情の交歓とは程遠い気がする。与えられるだけの行為に慣れてしまうのが怖かった。欲しているのは瞬だけではないのか。いつか篠塚は、別の存在に欲情の捌け口を求めにいってしまうのではないか。
 責めることはできない……。
 恐らくここが男と女の違いなのだ。篠塚が女性を求めるのは自然の摂理だ。男として当然なのだと納得せざるをえない。だから怖い……。
「なにを考えてる」
「ぼくで満足ですか」
 篠塚が、わずかに身をおこしてきた。糊のきいた浴衣が乾いた音をたてる。瞬は乱れた浴衣をそのままに篠塚をみあげた。
 篠塚は不満もいわなければ満足だともいわない。いつも瞬の一人相撲なのだ。篠塚との関係に定義づけをする気はないが、この空虚な胸の裡を埋めてくれる何かが欲しい……。
「なにが言いたいんだ」
「篠塚さん、感じることがあるんですか」
 篠塚が咽喉の奥で笑った。ようやく口にした疑問なのだ。笑われるとは心外だった。
「なにが可笑しいんですか」
「満足していないのは、おまえのほうだろう」
「ぼくが……?」
「一度、意識がなくなるまで抱かれてみるか」
 おもわず硬直してしまう。冗談だとわかっていながら無視できない。篠塚の言葉どおり、満足していないのは自分のほうなのだろうか。



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