2009年10月10日

second scene36

テーマ:黄昏はいつも優しくて2

「もう、やだ」
「瞬……」
 篠塚が唇を重ねてくる。瞬は仰け反るようにして手を突っぱねた。
「こんな惨めなの、もうやだ……!」
「聞け」
 抱きかかえられるようにして唇をふさがれた。腕力ではかなわないとわかっていても意地になる。いつもこうやってごまかされてしまう。今日はどれほど優しい言葉をかけてこようが取り合わないと自分に言い聞かせた。おし戻そうと力をこめている腕が疲れてきた。とたんに息苦しくなってくる。温泉なのだ。冬とはいえ肌にふれてくる湯水は熱かった。
 篠塚が唇をはなすと同時に口をおおきくあけ呼吸をくりかえした。後ろ髪が湯船にただよう。浮遊感に包まれながら目をあけると朝焼けの空が歪んでみえた。涙をぬぐう気にもならない。嗚咽がもれそうになるのをこらえた。

 篠塚が頬にくちづけ、ふたたびくちづけてきた。感触を確かめるようなくちづけ。自分はこの男に愛されている。これまでの交際相手も同じように感じていただろう。
「おまえだけだ」
「……嘘だ」
「どうして嘘なんだ」
「誰にでも……これまでだって……」
「おまえにしか言ってないぞ、こんな恥ずかしいせりふ」
「恥ずかしいって……」
 瞬が上体をおこし篠塚を睨むと、篠塚がすいと身をひいてきた。
「思ってたけど恥ずかしいから言わなかった。そういうことですよね」
「そうじゃないだろう」
「どう違うんですか」
「おまえ、素直さが足りないぞ」
「素直じゃないのは篠塚さんのほうじゃないですか」
「そうか」
「はい」
「わかった。なら今から素直になる。それでいいだろう」
「今からって……」
 篠塚が腰に腕をまわし引きこんできた。
「篠塚さん」
「欲しい」
「でも、ここ」
「いま欲しいんだ」
「でも」
 篠塚が伸ばしていた膝をぐいとたててきた。篠塚の脚が両脚に割りこんでくる。瞬は小さく声をあげ逃れるようにして身をよじらせた。



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