2009年08月26日

kiss scene23

テーマ:黄昏に偽りのキスを

 京介は何をおもったのか部屋の照明を消すと、榛名を抱きかかえるようにしてベッドの脇までいった。そのまま倒れこむようにしてベッドに榛名を組み敷く。
「だから、契約は」
「辞めたいのなら辞めていい」
「でしたら」
「今夜だけでいいんだ」
「今夜だけって」
「愛人でいてくれ」
 窓からおりてくる頼りなげな月明かりに、京介の姿が浮かびあがる。顔の部分は暗闇にとけこみ表情まではわからない。だがその心情は不安げな声に滲みでていて、榛名はこれ以上、拒むことができなかった。
 京介は全裸になると体をあずけるようにして首筋に顔を埋めてきた。冷めた体だった。手塚の死は衝撃的であったに違いない。どんな背景があって手塚は死ななければならなかったのか。想像すら及ばないが、十九年前、幼い子供を失った父親に、ふたたびもたらされた悲劇だった。
「榛名……好きだ」
 甘えるようでもあり訴えるようでもある切々とした響きだった。先刻、派手に笑ってみせたのも、あるいは恐怖心を忘れようとする心理が働いたのかも知れない。

 三歳で母親と別れ、父親の愛情も知らないまま、この男はどれほどの孤独を抱えて、これまで生きてきたのだろう。榛名より十歳以上も年が離れているというのに、京介にはどこか熟しきれていない少年の部分があって、それがこの男をいっそう魅力的にしている。だがそれは満たされない心の裏返しで、この男は常に愛情に餓えているのだと知った。
 京介が脚を絡ませ腰をおしつけてくる。触れてきた感触に榛名は息をのんだ。たしかに京介は欲情している……。
「専務……」
「何もしなくていい」
「でも」
「いいから」
 息苦しいほどに抱きしめられ全身の肌が泡立った。抑えられない。ただでさえ敏感になっているのだ。わずかな刺激にさえ反応してしまう。
「あっ……」
 京介の愛撫は手馴れた感があって、抗(あらが)う間もなく喘ぎ声がもれだした。思わず京介の首に腕を絡ませる。頬がふれあった。滑らかな肌と耳元にかかる吐息。激しい快感に突き動かされ、榛名は弓なりに仰け反った。
「もう……専……」
「京介だ」
「……京介」
 劣情に流され意識が混濁してくる。息が熱かった。
 京介が好きかと訊いてくる。問われるまま好きだと答え、榛名は吐息ににた声をあげた。小さく身を震わせ、そのまま、ぐったりと横たわる。京介が、ふわりと唇を重ねてきた。




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