全て知ってる「旅鞄」(2)

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こんにちは!

俳句のみろく堂ですオッドアイ猫

 

~引き続き、「萬緑」同人、石橋みちこさんの「旅鞄」鑑賞(2)~

平成16年~19年の作品で「石のごとく」

 

 

雪しまく停車場まぎれなく故郷

 

故郷と言えば私が思い出すのは

夏帽子どこまで転べども故郷 寺山修司。

また、故・成田千空は「序に代えて」に掲載されている評のなかで

「石川啄木は停車場になつかしい故郷の訛りを聞きに行った」と語っています。

それぞれの中にある、いくつもの「故郷」の画。

「停車場」という呼び名ではなかったけれども、

私の田舎でも

雪が吹雪いた夜のロータリーは、

普段よりも多くの自家用車やタクシーが

電車から降り来る人を待ち、にぎやかだった気がします。

迎えを待つ人、誰かを呼ぶ声、滑って転んだ人の悲鳴、

クラクションの音、タクシーを待つ列、街灯でオレンジに染まる雪。

私はこの句に、寒さの中の温かさを感じました。

 

 

畔走る子犬の巻き尾朝曇

 

巻き尾!!

この一言です。

柴犬などが、尾をくるんと巻いている、

バターロールのようなあのしっぽ、あのお尻。

そんな犬が、とことこと畔を行く。その足取りが、もう楽しそう。

朝曇だけれど、今日は一日何があるだろう。

とことことこ。

 

 

黙祷の目をあけにけり大夏野

 

小学校低学年の頃は長くて退屈だった黙祷が、

大人になるにつれ大切なものになった。

祈り、反省、これからどう生きていくべきなのか。

1分間という短い間には、到底答えなど出そうにもない問いが

頭の中に浮かんでは消えてゆく。

終わりを告げられ、不安のまま目を開く。

何も変わっていないはずなのに、

そこには新しい世界が広がっているように思える。

まるで大夏野のような、生に満ちた世界。

「生かされている」「生きていかなければ」

そう覚悟を新たに、その広々とした未来へ歩みを進めるのである。

 

 

 

夜食してけふ良妻で終れさう

 

一日を終えて、やっとひと息。一人夜食をとっている。

もしかしたら、彼女はこれから帰る夫をひとり待っているのかもしれない。

しかし、「良妻で終われそう」とは、どんな一日だろう。

平穏無事に、心安らかに、健康に過ごせた日だろうか。

不平不満を言わず、誰も憎まずに入られた日だろうか。

天気がよく、布団が干せて、料理がおいしくできたときだろうか…

「良妻」とまではいかないけれど、

私も、満足した一日は、夜食を食べながら、嬉しくなったりする。

明日もこんな日になればいいなと思う。

彼女はクリスチャンであるので、

「良妻」「妻」というものについては

私が考えるよりももっと深い理想像を持っているかもしれない。

 

 

よく笑ふ小春の後部座席かな

 

バスツアーで友達らと小旅行へ。

後部座席は、他愛ない思い出話で始終笑っている。

別のグループの同乗者らも、その笑い声につられて笑う。

今日は小春日和。60歳のお友達も皆、乙女に返ったよう。

しあわせな笑い声を乗せて、バスは目的地へゆっくり向かう。

ああ、旅行に行きたくなっちゃうな。

 

 

次回は平成20年~23年の「黒葡萄」からです。乙女のトキメキ

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