2017

テーマ:
2月9日。

僕に本を読むことの楽しさを教えてくれた恩人を
惜しむ日になってしまいました。

佐藤さとるさん、
コロボックルを教えてくださってありがとう。
ジュンと秘密の友だちをありがとう。
わんぱく天国をありがとう。

・・・またいっぱい読み返していきます、間違いなく
これからもずっと、何度も、何度でも。
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ある駅で見たヒーローの話

テーマ:
1時間に1便すら止まらない無人駅。
そんな駅は香川県にもある。

大歩危小歩危とか、高速道路を使わずに高知に行く時に
時々立ち寄ってみることもある。
吹きさらしの小さな駅舎。

自動販売機で缶コーヒーを買うつもりで
12時過ぎに、寄り道して駅の前の広場に
車を停めて一休み。急ぐ旅じゃない。ほとんど気晴らし。
久しぶりに川を撮りたくなって車を走らせてきただけ。
僕は撮り鉄でもない。

駅の中に入ると、
おじいさんとおばあさんが大きな荷物に
挟まれるようにお互い脇に置いて、
お互いのぬくもりを頼るように座っている。
やがておばあさんが、包んでいた新聞紙を開いて
おむすびを取り出しておじいさんに差し出す。
おじいさんは水筒のふた開けて、湯気の立つお茶を
中蓋の白い器に注いでおばあさんに手渡す。
自分は蓋の方に注いだお茶を飲むつもりのようだ。
なんかこの、一連のわずかなやり取りを見ても
二人のご夫婦としての歴史と愛情が垣間みれる。

乗る人も降りる人もない1両編成のディーゼルカーが
しばらく止まって下り路線をたどって出て行った。
次の便が来るまでは2時間以上ある。

僕は、このおじいさんおばあさんご夫婦が
気になりつつも、駅を後にした。

川で写真を撮って、しばらく風景を眺めて
高速道路で帰ってもよかったけれど
なぜか気になって、あの駅に寄ってみた。
日暮れの早い山間の駅らしく、もう薄暗くなり始めた
夕方4時半、ちょうど駅から
下り便の一両編成の気動車が出て行くところだった。

なんと、ご夫婦はまだいらっしゃった。
4時間以上前に見たままの状態で。

ふと駅舎の外で車が止まる音がして
子どもが走ってくる足音が近づく。
駅舎の入り口に3歳くらいの男の子が立っていた。

「おじいちゃん!おばあちゃん!来たよ!」

どういういきさつか事情かは知らない。
けれど僕はその男の子が「ヒーロー」に見えた。

表に出ると県外ナンバーのワゴン車が止まっていた。
車から若いご夫婦が降りてきて、僕とすれ違い
駅舎の中に向かう。

僕が車に戻りエンジンをかけた時に
ちょうど、二人の荷物を両手に下げた若い男性と
さっきの男の子に手を引っ張られるように
出てくるおじいさんと
若い女性と笑いながら出てくるおばあさん。

よかったなぁ。
何がよかったかわからないけれど、僕はきっと
どこかで、ため息をついたお二人の老夫婦が、
持ってきた荷物を再び持って
暗くなった駅舎からおじいさんおばあさん
二人だけで帰ることを
寂しい想像をしていたのだ。

だからあの男の子が「ヒーロー」に見えたのだ。
待ちこがれたヒーローに見えた。

彼にはそんな意識は全くないだろう。
ましてやヒーローになってやろうなんて
これっぽっちも思ってもいないはず。でも
ヒーローってそういうもんじゃねえのか、って思った。
思わせてもらった。

故郷に残してきた年老いたお父さんお母さんを
都会に出ている息子さんか娘さんか
あの老夫婦の子どもさんが孫を連れて迎えにきた・・・
のだろう。
その場面にたまたま遭遇した、僕の想像だ。
でも、よかったって思ってるんだ。
本物のヒーローが現れたところを見ることができて、
ホントに。

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