むかーしむかし あるところに おじいさんとおばあさんがいました。
ある日、おじいさんはじょうせきどおり山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。
山にむかったおじいさんでありましたが、
とちゅうの竹林をこえて行こうとすると、そこにはいままで見たこともないぐらい太くて大きな竹が一本・・・まわりの竹をまるで子分にしたがえるかのように、どうどうとそびえ立っています。
それを見て、これは青竹ふみにちょうどよさそうだな、ながしソーメンもこれさえあればじゆうじざいだろうし、と思い立ったおじいさん。
ちょうどその前には、マサカリがおいてあったこともあり、その竹を切ってもち帰ることにしました。
マサカリかついだおじいさん。
ろうたいにムチうち、力をこめ、エイヤーとばかりにふりおろすと、ななめにつきささった切り口のところからピリピリピリッとたてに切れ目が入ったかと思ったら、あっというまに竹がまっ二つに。
そして、われたその竹の中からは、まるまると太った赤ンぼうが出てきました。
これにはこしをぬかすほどオッタマゲタおじいさんでしたが、おそるおそる近づいてみると、赤いよだれかけをまとった男の赤ンぼうが、ねぼけまなこでこちらをぼおーっとながめています。
なんでこんなところに赤ンぼうがいるの?っと、さすがにちょっと気もちわるくかんじたおじいさんでしたが、小さいころにいくども聞かされたむかし話とかからのじょうほうで、こういうときは「これはかみさまからのさずかりものにちがいない」と思うものだということをちゃんと知っていたおじいさん。
そう思いなおすことにし、とりあえず赤ンぼうを家までつれて帰ることにしました。
せなかにゲットした赤ンぼうをせおい、同じくゲットした竹とマサカリをかかえたおじいさんが、えっちらほっちら。
ようやくなんとか家にたどりつくと、おばあさんはすでに家に帰ってきていて、帰ってきたおじいさんにも気づかずに、何かにねっちゅうしているようす。
おじいさん おばあさんから少し目をうつすと、こりゃまたなんともビックリ。
ゆかの上に、今まで見たこともない大きなももがおかれていて、おばあさんがほうちょうかた手に、それを切ろうと一生けんめいかくとうしていました。
おじいさんに気づいたおばあさん
「おや ちょうどいいところに帰ってきたわね
これすごいでしょー ちょっと手つだってよ
あら ちょうどいいもの持ってるじゃないの」
おばあさんは、おじいさんのせなかの赤ンぼうには目もくれず、手に持ったマサカリを見つけて、わたりにふねとばかりによろこんでいます。
それをつかって、ふたりでそのももを切ることに。
おばあさんがしっかりとももをささえて、おじいさんが体のむきを何回もかえたりしながら、しんちょうにももに切れ目を入れていきます。
おじいさんがあまりにしんちょうなので、
「なに、もたもたやってるのよ。ほんとにいつもいつも、とろくさいジジイだねえ」
ももを早く食べたい一心のおばあさん、
くちょうもだんだん、あらくなっていきます。
なんだかんだと言われつづけながらも、どうにか半分いじょう切りおえ、たねのところにさしかかったそのとき・・・
どこからか赤ンぼうのなき声が聞こえてきました。
なんだろうと、顔を見あわせるふたり。
そのあと、おばあさんはきゅうにおどろいた顔になり、
「おじいさん これなに?」
それまで、ももいがいはいっさい目に入ってこなかったおばあさんでしたが、ようやく気づいたらしく、おじいさんのせなかの赤ンぼうをゆびさしてそう言いました。
おじいさんが竹やぶでのできごとをかいつまんで話すと、竹の中から出てきたなんて、なんだか気もちわるくない?と思ったおばあさん。
しかし、そこはおじいさんと同じく、小さいころむかし話をなんども聞いて学しゅうずみだったため、おばあさんも「これはかみさまからのさずかりものにちがいない」と、思いなおすことにしました。
見ると、この赤ンぼうはおじいさんの背中でヨダレをたらしながら、ぐっすりとねむっています。
だけど、赤ンぼうのなき声はまだ聞こえてくることから、声のしょうたいはこの赤ンぼうではないようです。
そこで、ふたりは手を止め耳をすまして、声のはっしんげんをさぐっていくと、どうやらももの中からなき声が聞こえてくるのではなかろうか、というけつろんにたっしました。
「まさか ほんじつ二人目?」
あわてて、ももを切るさぎょうをさいかいしたおじいさんとおばあさん。
とりかえしのつかないことをしでかしてしまわないよう、これまで以上にしんちょうに、かつ、いっこくも早くかくにんしたいという思いから、今度はじんそくに、ももを切りすすめていきます。
すると、ふたりのよかんは見ごとてきちゅう。
われたももの中から、それはそれはとてもかわいらしい女の赤ンぼうが出てきました。
くろうして、おタカラをほり出したような気分になり、手をとり合ってよろこぶふたり。
「きょうは、かみさまからのさずかりものが、いちどにふたりも出てきてしまいましたねぇ おじいさん」
「さっそく名前をきめないといけないな。
そうだ、女の子はももから生まれたから、『ももか』にしよう。それと、男の子は、しょうらいは竹ざいくとか竹であんだ家ぐをつくる人になるように、『かぐや』と名づけることにするか。ちょっとごういんな気もするけど、まっいいか」
などとはしゃいでいます。
しかし、こうしたひとときのこうふんもさめやり、しばらくすると、ふたりはいってんして不安げなひょうじょうに。そして、ふたたび顔を見あわせます。
「おばあさんよ ひとりならまだしも、ふたりをそだてていくというのは、どうかんがえてもわしらにはむりじゃぞ。そんな金もないし、いつまで元気でいられるかもわからないしな」
「よくかんがえたらそうですね、おじいさん。 かと言って、ひとりだけひきとるのも、なんだか気がひけるし どうしたらいいものかしらねえ」
そもそも赤ンぼうがももやら竹やらわけがわからないところにいることじたいが気もちわるいんだよ、なんてことはふたりとも口がさけても言いません。さすがに長年つれそっただけあって、ふたりのあいだではそれは言わずもがなであるようです。
「わかった それじゃあなにもかも、なかったことにしよう」
時間がたつほどにじょうがうつってしまうといけないので、さっそくじゅんびに取りかかるふたり。
まずは男の子を竹にもどそうとしますが、まるまると太っているため、パンパンでどうやってもうまくおさまりません。そこでしかたなく、それと、ももを少しは食べてみたいという思いもあって、ももの中を少しだけへずって、その中に男の子をしゅうのう。ニカワでしっかり、われたももをつなぎ合わせます。
こんどはぎゃくに、女の子のほうをわれた竹の中に。女の子は、もものいい香りがするだけでなく、もものエキスでぬるぬるしていたため、すんなりと竹の中におさまりました。同じくニカワで竹をつなぎ合わせ、これでじゅんびかんりょう。
大きなもも、それと大きな竹をかかえたおじいさんとおばあさん。
ふたりともだまりこんだまま、もくもくと歩いていきます。
まずは、おばあさんがももをひろい上げたばしょの少し上りゅうにとうちゃく。ふたりは、そっとももを川にかえしてあげました。
続いて山に入り、竹の切り株ともってきた竹をニカワでつなぎ合わせたあと、ふたりはそっとしずかに山をおりていきました。
次の日からは、なにごともなかったかのように、いつものくらしをとりもどしたかに見えるおじいさんとおばあさんでありました。
めでたし めでたし
いっぽう、同じく次の日
その川には、きのうのおばあさんよりいくらかわかそうな別のおばあさんがせんたくにやってきていて、
川かみからどんぶらこと流れてきた大ももを見つけて、家にもち帰りました。
それでももに少し切れ目を入れたら、そのしゅんかんにももがパカッとわれて、中からまるまる太った男の赤ンぼうがしゅつげん。そのとき、その子はむがむちゅうでももを食べていたんだとさ。
山の竹やぶのほうにも、同じ日にきのうよりも少しわかい別のおじいさんが入っていって、きらきらと光かがやく竹を見つけて、切ろうとすると、竹がパカッとわれて、中にはそれはそれはかわいらしい女の赤ンぼうが。
この日、ぐうぜんにも赤ンぼうを見つけたこれらそれぞれのふうふは、ともに子だからにめぐまれず、いぜんから子どもがほしいほしいと、ことあるごとになげいておったそうな。
ももをひろったおばあさんは、その日の朝、たまたまきんじょのおばあさんに、せんたくのしやすいきれいな川があるとおしえてもらい、行ってみたら、かみさまからのさずかりものが流れてきたとのこと。
竹やぶに行ったおじいさんも、たまたまその日の朝、近じょの知り合いのおじいさんに、すごくりっぱな竹があるからとりあえず見てきたら、早くいかないとなくなるよといわれ、行ってみたところ、かみさまからのさずかりものにめぐり会えたというわけじゃった。
男の子はももたろう、女の子はなぜかもものかぐわしいかおりがすることからかぐや姫と名づけられ、それぞれの家でそれはそれは大じにそだてられたんだとさ。
いっぽう、ふたりを川や竹やぶにかえしにいったおじいさんとおばあさんも、ふたりがすくすくとせいちょうしているといううわさ話を聞くたびに、あんな気もちわるいのとっととかえしてほんとによかったと、それはそれはなんともうれしそうに話しておったそうな。
竹が光かがやいていたのは、もものかおりにつられて小ムシがあつまってきていたせいかもしれないな。ももも竹も、パカッとわれたのは、なぜだかわかるよね。
このあとはみんなも知ってると思うから、いかしょうりゃく・・・
なにしろ
めでたし めでたし
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