2007-01-26 23:57:27

桐野夏生「魂萌え!」

テーマ:
魂萌え !/桐野 夏生
¥1,785
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ベストセラーの映画化って、いつも悩みます。
小説を先に読むか、映画を先に見てしまうか。

長編小説なんかは、どう考えても
2時間の映画の枠には収まり切れませんから、
小説を先に読んでしまうと、どうしても映画は物足りなくなってしまう。

なんであのエピソードをカットしてしまうんだよ!とか
なんであの人がこの役者なんだよ!とか

見終わったら、もう不満ばっかり。
…そんなら最初っから小説なんか読まなければいいのに!

まぁ小説の内容をほぼ完璧に描き切ったのって最近では
「理由」(原作:宮部みゆき、監督:大林宣彦) ぐらいかなぁ。
だからなるべく私は先:映画→後:小説の流れにしてるのですが、
この作品ばかりは、わかってはいるけど
自分の決めている方程式を崩してしまいました。


桐野夏生の「魂萌え!」
桐野夏生は前に「OUT」を読んでまして(これも映画化されました)。
ごく普通の日常から主婦たちがあれよあれよというまに
トラブルの渦中に巻き込まれて行く、
その不条理さや怖さが非常におもしろかったのですね。
だからこの小説が阪本順治監督、風吹ジュン主演
映画化される事は知っていましたし、
もう間もなく公開っていうのも重々承知してたのですが、
映画が公開される前に小説での桐野ワールドを再び体験してみたい、と
今回は中高年を題材に、老体がドロドロした桐野ワールドの世界に巻き込まれるのかと、
ちょっとグロテスクな内容まで想像してしまっていたのですが、
結果は、さにあらず。


主人公の59歳・敏子さんは
定年退職後の夫は急死するは、その夫に10年以上付き合っていた愛人はいるわ、で
確かに【ドロドロの渦中】に巻き込まれます。
しかし決して小説はそれをグロテスクには描いていない。
あくまでも今まで夫に頼り切った専業主婦の敏子さんが、
夫の急死などのトラブルの数々を経て、
いかに新しい【自我】【生きがい】を見付けていくか
この点を様々な同年代の人たちを登場させ、絡ませながら
じっくりと読ませます。


そして何より作品の根底にあるのは
敏子さんを通じて中高年の女性たちへ送る
作者からの熱い【エール】のようなもの
爽やかで大胆で、しかも軽やかな敏子さんの決断の数々。
それがちっとも【ワガママ】にうつらないのは
作者が心から敏子さんに「がんばれ!」のエールを行間から送ってるからに他なりません。


ここまで楽しんで小説を読んでしまうと
映画を見るのが本当怖くなってしまいましたが、
…小説「魂萌え!」おすすめです。


読後、実家の母親にこの小説を読んだかどうか、ちょっと聞いてみたくなりましたよ。


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2006-12-20 22:59:44

小沢昭一「小沢昭一的 新宿末廣亭十夜」

テーマ:
小沢 昭一
小沢昭一的新宿末廣亭十夜

何かと忙しないこの年末。
しかしこの忙しない中、家でまた通勤途中の車内で本を読むことで一時の幸福感を味わう…
そんな一服の至福感をこの本を読む事で体験できました。
今日はお奨めの意味も含めて、そんな本のご紹介。

小沢昭一「小沢昭一的 新宿末廣亭十夜」(講談社)

平成17年6月21日から30日の10日間。
新宿の寄席・末廣亭、夜の部に俳優・小沢昭一が
落語でも漫談でもなく【随談】という名目で出演した。
この奇跡的な出来事を実現させたのは、
この下席の主任・柳家小三治師の粋な計らいから。

井上ひさし「唐来参和」でも絶妙な話芸を見せた小沢昭一氏のこと
10日間の【随談】は噂が噂を呼び、末廣亭は連日の大入り。
大入りどころか末廣亭が満員札止めとなって入場をお断りするほどの人気に。
この人気がその後「大銀座落語祭」で小沢昭一の独演会へと繋がって行く…。
いまやこの興行は伝説的な高座になりつつあります。
この本はその10日間の高座を記録した書であります。

私は当時、是が非でも末廣亭に行きたかったのですが
体調不良と家事用事で行かれず、
その無念さは当blogで「残念…」なる記事で報告(H17.6.25) したほど。
で、ありますからこの書を本屋で見付けた時には、まさに飛び付かんばかりの勢い。
買ってからはもう貪るように読んで、頭の中で小沢昭一氏がこの文を語ってるところを思い出し
当時の無念さを晴らすため(!)にも読み漁った次第であります。

小沢昭一氏の10日間の【随談】は、もう見事なまで。
小沢氏一流のバレ噺【第1夜 青春の末廣亭】に抱腹絶倒し、
昔の名人の想い出話【第2夜 志ん生師匠ロングインタビュー】
【第4夜 柳家小三治本日休演(八代目桂文楽のこと)】に「ヘェー」となり
さらには知られざる寄席の芸人さん【第6夜 尺八の扇遊さん】にシンミリとし、
そしてライフワークである流行歌【第7夜 流行歌のルーツ】に感嘆し、
その知識の豊富さ、語るジャンルの多彩さ、
そしてなにより本として活字になっても、行間から匂い立ってくるようなその見事な話芸は
これを【至福】と言わず何という!
ホント一時の現実逃避をさせてもらいました。

と、ともに読後真っ先に思ったのは、只ひとつ…
「嗚呼、何で当時見られなかったのだろう」という無念さ(笑)。

見られなかった無念さを晴らすために読んだにもかかわらず
現実には無念さが更に募ってしまったようで…

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2006-02-07 02:16:39

小川洋子「博士の愛した数式」

テーマ:
小川 洋子
博士の愛した数式

基本に忠実な、まるで映画の教科書のような作品「博士の愛した数式」を見て
「では原作の小説はどういう内容なのだろう」と関心を持った私は
早速近所の本屋をのぞいてみました。

小川洋子「博士の愛した数式」は本屋大賞を受賞しベストセラーとなりましたが、
今回の映画化でさらに話題沸騰ということで
本屋さんでもしっかりとメインの棚に山積みされてました。

ちなみに「博士の愛した数式」と同時に原作本を読み賛否をハッキリさせたいと思った
重松清の「あおげば尊し」はまだ文庫本になっていないらしく
近所の本屋さんには置いてませんでした、残念!

ところでこの小説「博士の愛した数式」を読んだところ
映画「博士の愛した数式」が、
原作を尊重して忠実に映画化しているなという内容でした。
小説も小さなエピソードのひとつひとつをさりげなく積み重ねて行きながら
この奇妙な友情物語を語り進めています。
つまりエピソードを丁寧な演出で同じく積み重ねて行ったのが映画でありまして
小説を読み終わると、小説の精神を忠実に受け継いだ映画の印象が更に良くなることうけあい。

映画は本当に忠実に小説を映像化しているので、両者の相違はほとんどないのですが、
それでもあえて重箱の隅をつつくかのように
「小説と映画の違い」を細かく見つけて行きますとですね…。

●老数学者の第一印象
なにせ寺尾聰のイメージが強烈なものですから、
小説も読み進めて行くうちにだんだん寺尾聰に変わってくるんですね。
仕舞には小説の台詞ひとつひとつまでが、
寺尾聰の独特の台詞回しに変わってきて、
彼の声で代読してしまったほどなのですが、
それでも小川洋子が最初に描写した老数学者のイメージは
明らかに寺尾聰よりは年齢が上でしたね。
俳優でいったら、私は常田富士夫あたりを想像してしまったのですが…
それに伴って姉役も、浅丘ルリ子よりはずっと年上のイメージでしたね。
これも俳優でいったら…岡田嘉子かなぁ。

●展開される舞台
映画は思いっきり地方でしたけど、小説はちょっとした街が舞台でしたね。
だから老数学者が徘徊してしまうのも、しっかり【街中】でした。
【街中】を徘徊してしまっては何かと撮影も難しくなってしまいますから
映画では地方に設定しなおしたのでしょう。

●江夏豊
小説と映画の違いで決定的だったのは2点ありまして
その一つ目が小説での「江夏豊」の登場でした。
江夏豊が登場することで、老数学者と家政婦の息子・ルートとの【記憶の違い】がはっきりしてしまい
それが危うく両者の関係の“溝”にまでなりかけるのですが、
80分しか記憶が持たないという老数学者の設定が功をそうし、両者の関係は保たれます。
映画では江夏豊というよりは
ルートの少年野球というキーワードが重要になってくるわけですが、
私はこの江夏豊という存在が、時代設定を巧みに使い分けていて
ここは小説の方が「ウマイ!」と思わされましたね。

●ラストシーン
小説と映画の決定的違いの二つ目。
それはラストシーンですね。
まあ映画はルートが成長して教師(吉岡秀隆)となって、
数学の授業を通じて老数学者を紹介して行くという
映画オリジナルの展開を見せますので、ここはまさに映画と小説の決定的違いなのですが、
私はあえてここは取上げません。
だって小説を読んだら後日談的に「こうなっていくのだろう」というのが想像できますもの。
それよりも【決定的に違う】と思うのは小説のラスト。
老数学者の最期をしっかりと描写しているところですね。
映画は「厳しい現実」をあえて避けるかのごとくに、
ちょっとしたファンタジックな描写でThe endとなりますが、
小説の方は「厳しい現実」をしっかり描写していきます。
だから小説の方では最後まで読むとちょっと「シュン」としてしまうのでありますが、
映像で「厳しい現実」を見せつけられるよりは、
私は小説でさりげなく数頁で描かれた方に【救い】があると思います。
まぁ両方とも着地点は異なれど、
最後にはしっかりと「思い出のキャッチボール」で締めくくられますから
やっぱり両者は「ほとんど相違なし」といっても良いかもしれませんしね。

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2005-12-21 18:50:58

宮部みゆき「理由」

テーマ:
宮部 みゆき
理由

昨日、大林宣彦の映画版「理由」について書いていきましたが、
本日は原作本の宮部みゆき「理由」について少し。

宮部みゆきの「理由」で一番印象深かったのが、
映画版ではサラリと扱われてしまってましたが、
一家惨殺事件の犯人として指名手配される石田が陥った【競売物件】のパートですね。

石田が【競売物件】に手を出したことから
【競売物件】に出された側が抵抗し、そして抵抗するがために
架空の【家族】をそこに住まわすという手段に出る。
ところがその架空の【家族】の中にとんでもない人間がいたがために…
と、ストーリーは【競売物件】である荒川の高層マンションの1室を狂言回しに、
100名以上の様々な人間がからんでくるのであります。

競売物件
新聞などをよく見てみると、各地方の地裁が【競売物件】情報の広告をよく掲載しています。
細かい表で中には文字がびっしり。
一見すると見る気をなくす広告でありますが、
これがジッと見てみると非常におもしろいんですよ。

例えば、広大な山林が【手入れなし】という文面で
ものすごい安く競売にだされていたり…
きっと山林所有者が税金を払えなくなって手放したのでしょう。

例えば、都心の一等地が売り出されているのですが
【建物あり(3階建て)】と書かれていたり…
きっと土地のみが評価され、豪華な建物は価値なしと判断されてしまったのでしょう。
とまあ1件3行ほどの広告はよく見ると、競売に出されるまでの人間ドラマが凝縮されおり
読んでその背景を想像してみると、これが本当に面白い。

そして時々目にするのが備考に書かれている【居住者あり】の文面。
つまり競売に出されてしまってもまだ居住者は住み続けている
この居住者を追い出すのも購入者がしなければならず
購入者は追い出すリスクを背負ってでもこの格安物件を購入するかの
判断をしなければならないわけです。
まさに「理由」の石田が購入したマンションがこの【居住者あり】の物件だったわけです。
こういう不気味な物件も、 広告には平気で3行ほどの物件情報で書かれているところに
ますます地裁の物件情報の興味は沸いてくるのでありますね。

そういえば私の家の近くにも不気味な物件があるなー。
私の家の駅前道路は現在区画整備作業中で
古いビルなどは改築を機に後ろに2メートルほど下がって作られたりしています。
小さなビルが多く、なかなか作業は進展しないのですが、
それでも7割がたは終わったような状況です。
しかし、その工事をガンとして受けつけない1個建てが1軒ありまして
これがもう古い家なのですが、なかなか出て行かない。
区画整備の真中あたりなので、現在ではこの1個建ての出っ張りがえらく邪魔で
私ですらも「もういい加減出て行けばいいのに…」と思うくらい。
しかしこの1個建て、どう見ても人の住んでいる気配がないんですね
時々車が止まっていたり、夜になると灯りがついていたり
時々は人の住んでいる気配はあるのですが
その1個建ての住人を私は1回も見た事がない
人が常駐していれば1回はその姿を見る事はあるわけで
こんな駅前の良い場所に住んで、工事に抵抗しているならば
余計に住んでいることをアピールするのは当たり前なのに…
もしかして「理由」のように、居住者はとっくのトウに出て行ってしまったのだが
高い金をふんだくろうと【ある業者】が介入して
時々人が住んでいることをわざとやっているのではないか。
もしかしたら、架空の家族でも時々住まわしているのではないか。

それまで道の真中をふさいでいる邪魔としか思えなかった物件も
「理由」を読んだ直後は「もしかしてこの物件も…」と思うと
何やら不気味な雰囲気を感じるようになり、
今も出て行かないこの物件に、
私は毎日の通勤で前を通る度に興味津々なのでありますね。

おや、本の事を書くはずが身辺記事になってしまいましたわ。
すいません。

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2005-07-26 01:43:09

「松本清張傑作短篇コレクション<下>」

テーマ:
松本 清張, 宮部 みゆき
松本清張傑作短篇コレクション〈下〉

宮部みゆき責任編集「松本清張傑作短篇コレクション」

ラストを飾るは下巻であります。

下巻は「タイトルの妙」として3篇
 ●支払い過ぎた縁談
 ●生けるパスカル
 ●骨壷の風景
タイトルの一言で本編をズバリ表現している作品や
読んでいって始めてタイトルの由来がわかる作品をピックアップしたようですが、
ジャンルがバラバラで(「骨壷の風景」なんて清張氏の自伝ですからね)
ちょっと強引なまとめ方だと思いましたね。
また絶好調だった宮部みゆき氏の【前口上】もこの章だけは、おフザケが強すぎて
【前口上】を読んだ事で余計本編を読んだ時に混乱してしまいました。
あくまでも宮部氏は“解説”の立場であることをお忘れなく!

「権力は敵か」として骨太な2篇
 ●帝銀事件の謎ー「日本の黒い霧」より
 ●鴉
この2篇でこの下巻の全てを占めるといっていいほどの骨太な傑作陣。
「帝銀事件の謎」などはもうこれは一つの歴史的な告発といって良い傑作。
完璧な検証に、息つくひまも無い畳み込むような展開。
GHQの知られざる暗部を、清張氏は社会派作家の面目躍如で堂々と告発しています。
そして「鴉」は、主役の人間たちの歯車を狂わすのは、声なき声の普通の人々の集団であると、
読み終わって気付くその怖さ!
ラストのおびただしい数で飛んでいる鴉のシーンは
なにやら映像が浮かんできそうで怖さ倍増であります。

そしてラストは「松本清張賞受賞作家に聞きました」ということで
山本兼一、森福都、岩井三四二、横山秀夫の各氏らが選んだ「マイベスト清張」
 ●西郷札
 ●菊枕 ぬい女略歴
 ●火の記憶
なるほどなあ、と思う作品もあれば「これがマイベスト」と思う作品もあり、
まぁそれだけ松本清張氏があらゆる人に様々な「マイベスト」を作り出した
多作でありながら幅広いジャンルを取り上げ、しかも各作品が珠玉の輝きに満ちている
と言えるからでありましょう。

上・中・下巻ともかなりの厚さの文庫本ながら
私の【通勤電車内】はこの数ヶ月、この3冊のおかげで非常に充実した日々を送る事ができました。
ありがとう!宮部みゆき氏。
そして…ありがとう!雲の上の松本清張氏!

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