「約三十の嘘」
特集【日本映画を語ろう!】
【プレイバック2004】本日から3日間は、今年2005年もそろそろ顔を揃え始めました
「正月映画」にちなみまして【2004年の正月映画】の特集であります。
正月作品の日本映画は近年メジャー系の大作に加え、
ミニシアターの発達で話題作が小規模で公開されながらロングランを記録したりと
なかなか特徴的になってきました。
そこで今回はメジャー大作の方ではない、この【特徴的な】な方の3本をピックアップしましょう。
まず第1弾は渋谷シネクイントの正月作品として公開された
大谷健太郎 の「約三十の嘘」から。
2004年劇場公開作品
監督:大谷健太郎
出演:椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、伴杏里、八嶋智人、他
豪華寝台特急トワイライト・エクスプレスに乗り込んだ志方大介(椎名桔平)と
5人の詐欺師(中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、伴杏里、八嶋智人)たち。
ある事件以来解散状態だった彼らは再び結集し、3年ぶりの北海道での大仕事を成功させるが、
帰りのトワイライト・エクスプレスの車内で
戦利品である大金が詰まったスーツケースが紛失してしまう。
やがて6人の詐欺師たちは身内の中での犯人探しを行う事になるのだが…。
「12人の優しい日本人」での三谷幸喜の成功からか、
近年舞台作品の映画化が増えつつあります。
確かに人気舞台の映画化は、脚本がもう舞台の時点で充分練られてますから
映画用にオリジナル脚本を作る必要もなく
また舞台は非常に狭い空間でストーリーがアイデア勝負で設定されているので
映画化する際にはこのアイデアをお借りさえすればいいわけで、
一見すれば非常に安上がりですむように見えます。
また舞台の脚本家も全国公開の映画化されれば「一気にメジャー進出か」となり
この手段を利用しないわけはないと、簡単に許可がでるわけで
舞台の脚本を作る側と、それを映画化する側は極めて蜜月関係が簡単に結べるわけです。
しかし、では蜜月関係が安易に作れるならばもっとこの両者の関係が深くなってもおかしくないのに
安易な割りにはそれほど急激に本数が増えていないのは何故でしょう。
考えてみますに、やはり【舞台】と【映画】は根本的に異なるところがあり
安易に舞台の脚本をそのまま映像化してもなんらおもしろくない【映画】になってしまい
場合によっては映画用のオリジナル脚本を作るのと同じくらいの【脚色】を
舞台の脚本には施さなくてはならないという
厄介な問題が両者の間には立ちはだかっており、
ここがネックになっていると思います。
この「三十の嘘」も、もとは人気劇作家・土田英生の同名戯曲が原作。
しかし映画化するには脚色に原作者の土田英生 、監督の大谷健太郎 、
そして「ジョゼと虎と魚たち(2003)」の渡辺あや、と
3人による作業が必要となったというところに
この作品の映画化に際する苦労が偲ばれます。
しかし舞台脚本を3名により脚色し映画化したものの、
やはり過剰な台詞がどうにも【映画】として弾まなかったのが残念なところ。
もともと寝台特急の車内を舞台とした動きの少ない内容のため、
監督の大谷健太郎もこまめに舞台を寝台特急内のあらゆる車両に設定を変えながら
映像に【動き】をもたせようと苦労していますが、
どうしても1つのシーンに台詞が多すぎる展開になってしまい、
見ていて動きが少ないため退屈してしまいます。
では台詞が多いということは、その台詞一つ一つが物語の展開を握る重要な意味を
含んでいるかというとそうでもなく、
どうでもいいような会話がツラツラと続いていくだけ。
舞台で見る分にはお目当ての役者の魅力が重なって良いのでしょうが、
展開重視の【映画】にとってはこの【どうでもいい会話】というのは聞いてて苦痛でしかないんですね。
またキャストも映画界と演劇界からの混成チームのような構成でかえってアンバランス。
舞台の映画化ですから田辺誠一や八嶋智人は台詞重視の演技をして、
それが映像化されるとちょっとオーバーアクトに映って
映画から浮いた存在になってしまうという皮肉な結果。
また妻夫木聡なんかは映画界の人間だから、
逆にこの脚本のキャラクターがしっくりきてなくて存在感がなく明かにミスキャスト。
結局、椎名桔平と中谷美紀が全編を引っ張っていくことになるのですが、
思ったよりもストーリーも弾みませんし、ラストも“どんでん返し”とまではいかないため、
過剰な台詞ばかりが場面の宙をさまよってしまうばかり。
んー、「三十の嘘」を見た結論としては
人気舞台の映画化っていうのは企画は安易に作れるものの、
改めて難しいものなんだなという事を痛感させられましたね。
■この作品はDVD化されてます!
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- 角川エンタテインメント
- 約三十の嘘 特別版
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