「ALWAYS 三丁目の夕日」 | こだわりの館blog版

「ALWAYS 三丁目の夕日」

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なにっ!私の作品をVFXで描く!【西岸良平せんせい談(想像)】


【劇場公開作品より】
11/26 ユナイテッドシネマとしまえん にて

監督:山崎貴
原作:西岸良平
出演:吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子、小雪、堀北真希、もたいまさこ、三浦友和、他


まずは、西岸良平氏のロングセラー漫画「三丁目の夕日」をVFXで描く、という
その発想、その着眼点がおもしろいと思います。

VFX(SFX)は“未来の世界”を描く時の常套手段だと思っていた身にとっては、
「今失われつつある昭和30年代の風景」を、
その時代の臭いの残るロケ地を必死に探すよりも、
大掛かりなセットを組むより(この作品も基本はセットですけどね)も、
技術が発達したVFXで描いてしまえ、という逆転の発想が“目から鱗”ものでありました。
以前、篠田正浩の「スパイ・ゾルゲ」が戦争中の銀座の街並みをCGで再現したと
公開当時は鳴り物入りで宣伝していましたが、
実際に見てみるとちっともリアルでなく、いかにも“作り物”って感じでがっかりさせられた事がありました。
やはり高技術のCGを使っても、その時代のリアル感を出すのは不可能なのかと
この作品も「どうかな?」とは観る前は思いましたが、
結果としては心配ご無用、見事の一言。
技術の進化は日進月歩、スゴイもんです。

しかもこの作品のVFXは、その使われ方の“さりげなさ”に非常に好感が持てました。
“これ見よがし”でないんですね。
人々が極自然に生活するその時代の風景としてさりげなく使っており、その自然体の描写が良いですね。
パンフレットを鑑賞後に読んだところ、
工事中の東京タワーがそびえる街並みといい、SLが鉄橋を渡って行くシーンといい、
実は大変な労力を経て作られたシーンの数々ではあるのですが、
映画の1場面として見るとゴク普通のシーンとして見れてしまいます。
スゴイ事をさりげなく1シーンとして描いてしまう…その“さりげなさ”に、
かえってスタッフ陣の努力を感じ、頭の下がる思いすらしてしまいます。

これで昭和30年代の“臭い”まで表現できたら完璧だったのですがね。
昭和30年代の日本映画を見ると結構街並みがまだ“汚い”んですよね。
この“汚さ”や“臭い”まで表現できたらより一層リアルな作品になったのでしょうけれど、
まぁ、この作品は一種のファンタジーでありますから
完璧なリアルさまでは求めていないのでしょうけれどもね…。

話を元に戻しましょう。

そして何よりこの作品に好感が持てるのは、
VFXを使っていることを“さりげなく”見せるのは、
あくまでもこの作品の根本が人間ドラマであるという、
原作を尊重しているスタンスをスタッフ陣が忘れていないところであります。

原作である西岸良平氏の漫画自体は、人々の触れ合いを描いた人間模様であり、
昨今の漫画に比べれば非常に地味な、
現代のVFXなどという言葉とは対極にあるような内容なのですから、
VFXを“これ見よがし”に見せてしまっては原作の雰囲気などは到底表現する事はできなかったでしょう。
高水準の技術を人間ドラマのスパイスとしてさりげなく、そして贅沢に使う
これってなによりも“スゴイ事”だと思います。

だからこの作品VFXもスゴイけれども、
その風景の中を動き回る役者陣がVFX以上に魅力的なのであります。
この作品は昭和33年を生きてる人々の一風景をスケッチ的に積み重ねた群像劇ですから
個々の役者というよりはキャスト全体から醸し出されるアンサンブルが一番の魅力でありましたが、
あえてというところでピックアップするならば、主役級の2人吉岡秀隆と堤真一が、
それぞれ以前はそれほど好きな役者ではありませんでしたが、この作品では非常に魅力的。
吉岡秀隆は、役者として持つ独特の【地味さ】が、原作の雰囲気を体現していてまさに適役。
その吉岡秀隆の対極にいるような堤真一【派手め】のキャラクターが、
こちらは作品の持つコミカルさを体現していて
この【地味】と【派手】、対極な2人が醸し出す漫才のようなやりとりの数々が
作品の雰囲気を見事に作り出していました。
あと、もたいまさこピエール瀧益岡徹あたりがいかにも昭和30年代にいそうなキャラクターでしたね。
逆にワケありの飲み屋の女将役の小雪や、
青森から集団就職してくる堀北真希などは、ちょっと綺麗すぎ
もっと昭和30年代の【イモ姉ちゃん】的な役者さんを配してもよかったんじゃないかと思いますが、
あまり【華】を無くしてしまっては映画自体が原作以上に地味になってしまう、
といったこところなんでしょうか。

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