「続 悪名」

ポニーキャニオン

続・悪名

特集【日本映画を語ろう！】

【スターで魅せる映画たち】。
本日は昨日の「悪名」に引き続き、続編の「続 悪名」であります。
今の映画界なら大ヒット作が生まれてから続編の発表となりますが、
この「続 悪名」は「悪名」と同じ1961年公開。
つまりもう続編まで視野に入れた話題作だったんですね。
今でいったらVシネの「上・下巻同時発売！」みたいなもんですね。
日本映画界…当時はまだまだ勢いがあったもんです…。

1961年劇場公開作品
監督：田中徳三
原作：今東光、脚本：依田義賢、撮影：宮川一夫
出演：勝新太郎、田宮二郎、中村玉緒、水谷良重、浪花千栄子、上田吉二郎、中村鴈治郎、他

「悪名」が朝吉（勝新太郎）と舎弟・貞（田宮二郎）の成上がりの物語ならば
「続 悪名」は【激動篇】といった感じでしょうか。

　　自分のかつての親分をも含め次々と強敵を倒していった朝吉は、
　　松島一家の元締（中村鴈治郎）の目にとまり
　　関西で有数の一家を築くようになった。
　　しかし、時代が経てば敵も増える。
　　今度は朝吉の一家が大阪の新興勢力に果たし状をつきつけられ
　　遂にその対決の日を迎えることになったのだが…

「悪名」とほとんど同時の制作につき、主要キャストはほとんど変わりません。
勝新太郎に田宮二郎、女優陣は中村玉緒に水谷良重など。
「悪名」で強烈な個性を発揮した浪花千栄子の大親分も、
本作ではいたって温和な表情で出演しております。

それに加えて今回は上田吉二郎や中村鴈治郎という名脇役も新たに登場。
上田吉二郎はズングリむっくりしたその独特の風貌と
一度聞いたら忘れられないダミ声で活躍した名バイプレイヤー。
悪役、特にギャング団のボスなんかよく演ってましたよね。
また時々は黒澤明の作品なんかにも出ていたりして。

中村鴈治郎は言わずと知れた歌舞伎役者、二代目・中村鴈治郎。
来月坂田藤十郎を襲名する現鴈治郎のお父さん、
そしてこの作品では可憐な中村玉緒のお父さんでもあります。
二代目鴈治郎は舞台もよく出てましたが、
映画にも大映作品を中心にかなりの本数出演していて
私は市川崑の「ぼんち(1960)」での、
あのケチな大店の主人役なんかが強烈な印象で残ってますね。
この作品の出演は、娘・中村玉緒の勝新太郎への監視役として
か、どうかは知りませんが、松島一家の元締役という
これまた強烈なキャラクターをサラリと演じております。
しかも表面では勝新太郎扮する朝吉を「信用しとるで！」と言ってながら
腹の中では朝吉をどこか疑っているという難しい役、
まさに歌舞伎で言うところの【ハラ芸】でありますな。
こういう大役者がサラリと登場すると画面もピシッと引き締まります。

さて「続 悪名」の作品自体の出来はというと、
「悪名」は一人の無頼漢が成り上がっていくストーリーで、作品全体に活気がありましたが、
この「続 悪名」はとなりますと、朝吉も貞も若干防戦体制のようなストーリーになってきておりまして
前作ほどの活気は画面からはあふれてきません。
しかし相変わらずの勝新太郎の朝吉と田宮二郎の貞は名コンビぶりを発揮しておりますし、
なによりこの「悪名」シリーズ、今東光の原作を基に、脚本がしっかり作られていますから
ストーリーを見ているだけでも充分におもしろいです。

脚本は前作に引き続き依田義賢。
巨匠・溝口健二の片腕として活躍し「西鶴一代女(1952)」「雨月物語(1953) 」を発表。
遺作の熊井啓「千利休　本覺坊遺文(1989)」まで現役で活躍した名シナリオライターであります。
ストーリーがおもしろいのは依田義賢ですもの、まぁ当たり前ですよ。

そして忘れてはならないのが撮影の宮川一夫。
溝口健二「雨月物語(1953)」に黒澤明「羅生門(1950)」や「影武者(1980)」 。
市川崑「炎上(1958)」や「おとうと(1960)」 、
晩年では篠田正浩の「鑓の権三(1986)」「瀬戸内少年野球団(1984)」などなど
巨匠たちの撮影を担当した、まさに撮影の大巨匠であります。
その大巨匠がこの作品の撮影を担当。
男くさいドラマながらも鮮やかなカラー画面には
何か【品】のようなものを感じてしまったのは予備知識が多すぎだからかしら？

しかし、こういうプログラムピクチャー1本とってもスタッフ・キャストに
溝口健二、黒澤明、市川崑という巨匠連中の名前がズラズラ出てしまうんですから
本当に当時の日本映画界って優秀な人材が揃ってたんだなと痛感してしまいますね。

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