「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」 | こだわりの館blog版

「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」

ビデオメーカー
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

特集【日本映画を語ろう!】

【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
岩井俊二監督特集の3本目は「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」
45分のテレビムービーながら岩井俊二の全てが詰め込まれた珠玉の小品。

【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
③岩井俊二監督作品第3弾
1993年作品(テレビムービー)
脚本:岩井俊二
出演:山崎裕太、奥菜恵、反田孝幸、小橋賢児、ランディ・ヘブンス、他

この作品はもともと当時フジテレビで放送していた
テレビシリーズ「ifもしも」のスペシャル版の1編として製作されました。
しかし本作でなんと岩井俊二は、その年の日本映画監督協会新人賞を受賞したんですね。
毎年映画界からは新人がデビューしているにもかかわらずTVドラマで異例の受賞。
当時新聞でニュースを知った私も驚きました。
日々膨大な数が次から次へと放送されては忘れられていくTVドラマで、
よく審査員たちはこの1編を注目し、そして受賞の決断をくだしたな、と。

その後、長編デビュー作「Love Letter(1995)」も評価され、
本作も後日劇場公開もされた本作でありますが、
残念ながらなかなか見ることが出来ませんでした。
今回WOWOW放送分をビデオで録画しており、それを鑑賞したのでありますが、
なるほど…もう岩井俊二はこの作品から自分の持っている要素を全て表現していたんですね。

  小学生最後の夏休み。
  その日は学校の登校日で、夜には花火大会がある日。
  プールでは典道(山崎裕太)と祐介(反田孝幸)が50mを競おうとしていた。
  そこに、なづな(奥菜恵)が見物にやってきた…。
  2人の競争で勝ったほうは“なづなと花火を見に行く”こと。
  2人は勢いよく競争をスタートさせるが…

この作品のドラマ枠「ifもしも」は、「もしこうなっていたら」を軸に2つのパターンが展開していくシリーズで、
本作も題名どおり打ち上げ花火を、下から見るエピソードと、 横から見るエピソードの2つが展開します。
しかもさらにその中でプールでの競争で、典道が勝った場合と祐介が勝った場合の
2つのエピソードも展開するのです。
45分の短い時間の中でよくここまで複雑な展開ができたなと感心してしまいます。
しかもこの【典道が勝った場合】と【祐介が勝った場合】の2つのエピソードがいかにも岩井俊二らしく
【祐介が勝った場合】は現実の厳しい世界に直面する“シニカル”な世界
【典道が勝った場合】はファンタジックな“メルヘン”な世界と、
その後、岩井俊二が2重人格者のように交互に発表している2つの相反する世界が、
もうこの作品の中では“同居”する形で展開しているのであります。
そして舞台は海沿いの【ちょっとした田舎街】でありましたし、
メルヘンの世界を体現する女神(ミューズ)として、
まだデビューしたての奥菜恵がキラキラと存在していて
もうここまでくるとこの作品は岩井俊二の原点にして集大成的な作品といってもいいかもしれません。
しかも上映時間45分、この短さが何とも魅力的であります。

■特集【日本映画を語ろう!】の過去の記事、今後の予定は こちら から

人気blogランキング に登録してます☆
ここをクリック していただけるとうれしいです!☆