「Love Letter」 | こだわりの館blog版

「Love Letter」

キングレコード
Love Letter

特集【日本映画を語ろう!】

【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
岩井俊二監督作品特集の2回目は1995年の長篇デビュー作「Love Letter」
当時人気絶頂だったアイドル・中山美穂を主役に岩井俊二が独自の世界を展開させた本作は、
公開当時高い評価を受け、岩井俊二の出世作となったばかりか、
中山美穂が“芝居もできるアイドル”(イヤ味な書き方ですが…)として評価された作品でもあります。

あれから10年。
今や岩井俊二は今や各界注目の映像作家。
片や中山美穂は芸能界から見る影もなし
…人間の運命っちゅうのはわからないものですなぁ。

【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
③岩井俊二監督作品第2弾
1995年劇場公開
脚本:岩井俊二 阪本順治
出演:中山美穂、豊川悦司、酒井美紀、柏原崇、范文雀、中村久美、他

  婚約者を亡くした渡辺博子(中山美穂)は、婚約者の3回忌の日に
  忘れられない彼への思いから、彼が昔住んでいた小樽へ「お元気ですか」と手紙を出した。
  すると、来るはずのない返事が返って来る。
  それをきっかけにして、彼と同姓同名で中学時代、彼と同級生だった女性と知り合うことになり…。

前回の「花とアリス」の記事 で、岩井俊二の特徴として
「ファンタジックなメルヘン」
「その世界を体現するミューズ・女神(主演女優)の存在」を挙げました。
本作などは、まさにそのテキストのような作品でしたね。
別の見方をすれば、本作の高い評価で手応えを掴んだ岩井俊二は、
この作品でそれまでの迷いを一気に払拭して、
その後の作品で独自の映像感覚をさら磨いていった、といっても過言ではありません。
本作はさしずめ、彼の映像世界の記念すべきスタートとなった作品でありましょう。

1通の手紙から始まる実に岩井俊二らしいメルヘンチックな世界が展開しております。
10年後の現在では、携帯電話の1本で済んでしまいそうな物語ですが、
これを古風な【手紙】というアイテムを活用して、
渡辺博子と小樽の【間違われた彼女】との“文通”でストーリーが展開して行く。
“文通”なんて何十年ぶりに聞く言葉で、これまた恥ずかしくなってくる世界ですが、
岩井俊二が描くと実にイヤ味のないメルヘンに変わっていて、
見る側も素直に受けとめてしまうから不思議です。
岩井俊二マジックといった感じでしょうか。

そしてこのメルヘンの世界を主役の中山美穂が一身に受けとめていて実に魅力的。
その映像には、岩井俊二が織り成すメルヘンのな魅力とともに、
中山美穂という女優の魅力もが爆発しております。
本作を久々に再見して、中山美穂という女優にはもっと活躍してもらいたかったと思いましたね。
諸処の事情で、引退宣言すら行わずに音もなく芸能界から“消え去った”ような感じでしたが、
彼女のような1枚看板で主役をはれる映画女優が皆無な昨今、
何かの機会で【現在の中山美穂】あたりを是非見てみたいと思うのは私だけでしょうか?
でも、よっぽどの事が無い限りカムバックは無理なんでしょうね。
事が事だけに…余談でしたが。

話をもとに戻して岩井俊二についてですが、
今回指摘しておきたいのは、岩井俊二の作品の特徴として
毎作舞台が「ちょっとした田舎」であるという事です。
岩井俊二は大都会の無機質さ、冷たさを描く事を極力避けている作家ではないでしょうか。
この作品の小樽といい、「花とアリス」も特定はされてませんが神奈川の奥あたりといい、
冬の雪景色や、春の野原の緑など、彼の映像には【自然の原色】が極めて印象に残ります。
思い出すだけでも【東京】が舞台になっているのは「PicNic(1996)」「四月物語(1998)」くらいで、
それでも世田谷あたりの緑豊かな住宅地あたりが舞台でしたから、
岩井俊二のメルヘンには大都会にはない【自然の原色】が織り成すあたたかさや、
映像の透明感のようなものが不可欠なようです。
だから一見恥ずかしくなるようなメルヘンな世界もイヤ味なく見られてしまうのでしょう。
シニカルな厳しい世界を描いた「リリイ・シュシュのすべて(2001)」ですら
舞台は【ちょっとした田舎】で、厳しい世界ながらどこかに“暖かさ”のようなものが残りましたから、
メルヘンであろうがシニカルであろうが【ちょっとした田舎】のアイテムは、
岩井俊二の全ての作品に共通する特徴なのでありましょう。

■特集【日本映画を語ろう!】の過去の記事、今後の予定は こちら から

人気blogランキング に登録してます☆
ここをクリック していただけるとうれしいです!☆