「スクラップ・ヘブン」
特集【日本映画を語ろう!】
ビデオで過去ばかり振り返っても面白くないでしょ、ということで
本日より3日間は劇場公開作品を鑑賞しましたので、その感想をつらつらと…。
まず第1弾は昨年「69 sixty nine」がなかなかおもしろかった
李相日監督の最新作「スクラップ・ヘブン」。
前作とは全く異なる内容なのが、監督のレパートリーの広さを知る上でも興味深かったですが、
この作品では、ちょっと才気が先走りしすぎたような…。
10/22 K's cinemaにて
監督・脚本:李相日
出演:加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明、光石研、山田辰夫、団時朗、柄本明、他
退屈な日々にうんざりしていた警官の粕谷シンゴ(加瀬亮)。
彼がある日バスジャック事件に遭遇する。
バスに同乗していたのはテツ(オダギリジョー)とサキ(栗山千明)。
事件はテツが撃たれた以外は事無きを得た。
その3ヶ月後、テツと偶然に再会したシンゴは、テツより突拍子も無い事の誘いを受ける
それは“世の中を浄化”すべくある事業を開始しようというものだった…。
まぁネタバレを承知で言ってしまえば【現代版・必殺仕事人】みたいな内容ですね。
それでは彼らは殺し屋まがいのことを行うのかといえば、復讐の対象にはそこまでは行わず
まあちょっと困ってしまう程度の復讐ですから、かわいいもんです。
復讐の数々も見方によっては【イジメ】のように見えてしまって、
見ていてあまり爽快感もありません。
しかし2人がちょっとした遊び心から交番の警官の拳銃を盗んだ事が、
だんだん大事になっていくところや、
この事でシンゴが一時は出世の頼みとしていた刑事の薮田(柄本明)を
敵にまわしてしまったところなどは、
柄本明のスゴ味あふれる怪演もあってジワリとおもしろくなってきます。
また今の世の中に不満だらけのオダギリジョー扮するテツの怒りの根本は、
精神病院に入っている父親(山田辰夫、これまた怪演!)が原因という、
「世の中、世の中!」と言いながらも実は自分の身上に対して最も【怒り】を感じているという点などは、
なかなか皮肉が利いていておもしろかった。
但し、オダギリジョーの演技はオーバーアクト気味で、もう少し自然体でもウマイ役者なのに
「何もそこまで」といった感じで感情移入が出来ずに、ちょっと私は引いてしまいました。
これはオダギリジョー以外にも総体的に言えて、
この作品の主役の3人がどうにも魅力的じゃないんですね。
警官シンゴ役の加瀬亮も、演技がいつまでもウジウジしていて
見ていて【仕事人】に変わったという爽快感に欠けていますし、
謎の女・サキ役の栗山千明などは終始【謎の女】のままで演技のし所もなく、
せっかく注目の女優なのにこれでは宝の持ちクサレですよ。
その分、脇役陣の怪演でなんとか面白く見られたものの、
主役連中に魅力を感じないのはこの作品の致命傷とも言えるでしょう。
李相日の演出は前述の通り、
メインの話より脇道にそれたストーリーの方が皮肉が利いていて面白いのですが、
肝心のメインのストーリーなどは、何やら【爆弾】らしきものまで飛び出し、
「オッ!これは大事件となって面白くなってくるぞ」と思わせておきながら、
それをあえて外した演出やストーリー展開をするものですから、
監督は予想外の展開で楽しませる面白さを狙ったのでしょうが、
これでは逆に見る側は【肩透かし】をくったようでシラケてしまいます。
才気もちょっと先走り気味といった感じです。
ラストなど【すっとぼけた面白さ】とでもいいたいのでしょうが、
展開すべき事柄を途中で放棄してしまったとしか見えず
「だから何?」としか思えませんでした。
あんな終わり方はマズイでしょ。
あとやはりこの作品、長すぎです。
これだけの内容で上映時間2時間弱は長すぎですね。
せめて1時間半くらいにコンパクトにまとめてくれれば
ブラックコメディの小品ぐらいにはなったでしょうに、
これも才気が先走りして余計なシーンを“てんこもり”にしてしまった結果でありましょう。
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