「KT」 | こだわりの館blog版
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【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
阪本順治監督作品特集の2回目は、2002年発表の社会派サスペンス「KT」であります。
1973年8月、当時韓国朴政権下で革命の雄としていた金大中(キム・デジュン)が
日本で突然拉致され、5日後ソウル市内の自宅前で傷だらけで解放された、という
まだ記憶に残っているショッキングな出来事の内幕を、
日本と韓国の両側面から、もう臭い立ってくるまでに骨太に“男臭く”描いた傑作。
私にとっての阪本順治監督作品の中でも1、2を争そう傑作だと今でも思ってます。
【今の日本映画を語るに欠かせない3監督】
②阪本順治監督作品第2弾
2002年劇場公開
脚本:荒井晴彦
出演:佐藤浩市、キム・ガプス、チェ・イルファ、筒井道隆、ヤン・ウニョン、香川照之、原田芳雄、他
昨日の「この世の外へ クラブ進駐軍」
の時に、
阪本順治には骨太な男くさい作品を撮り続けている【固い面】と、
大阪の漫才のような軽~いノリのコメディなどの【軟らかい面】を
二重人格のように交互に新作を発表し続けている、と書きました。
とすると、さながらこの「KT」は阪本順治の【固い面】を全面に見せた傑作であり、
彼のハードな演出の真骨頂の作品ともいえるでしょう。
73年6月、朴軍事政権下の韓国から亡命し、
日本で故国民主化の為に精力的な活動をしていた金大中(チェ・イルファ)。
彼の活動を快く思わぬ韓国政府は、ついに金大中を拉致暗殺せよとの至上命令を下す。
命を受けたのは駐日韓国大使館一等書記官・金車雲(キム・ガプス)。
作戦名は【KT作戦】。
この作戦に、日本の自衛隊からは自衛隊を一時除隊し、
民間興信所を開設してKCIA(韓国中央情報部)にサポートする
陸幕二部所属の富田(佐藤浩市)が送り込まれる。
金と富田は様々な手を使って金大中の行方を追うが、
その度に、大使館内部の密通者に偽の情報を掴まされてしまう。
そんな中、富田は金大中の取材に成功していた夕刊トーキョーの記者・神川(原田芳雄)に接近し、
金大中の行動を徐々に掴んでいくのだが…。
金大中拉致事件は子供ごころにちょっとだけ覚えています。
ただし当時はこんな大事件だとは思ってませんでした。
記憶に残っているのは「金大中は日本語がうまいな」ということくらい。
本当お恥ずかしい限り。
しかし本作を見ると金大中拉致事件というのが、
日本と韓国の両国を震撼させた大事件だったという事と共に、
実は、背後には世界の大国・アメリカまでもが絡み、
日本の当時の政権が、この事件の結末次第では大変動していたくらいの
“ものすごい事件”であった事がよくわかります。
しかもこれらが全て日本の国民には知らされずに
“水面下”で起こっていた事なのですから背筋が寒くなります。
阪本順治の演出はお得意の骨太な演出で迫力満点。
見る者をグイグイと画面に引き込み一瞬たりとも目が離せません。
また日本と韓国の双方の立場を偏ることなく巧みに織り込むことで、
当時の日本と韓国双方の悩みや怒りが手に取るようにわかり秀逸です。
但し、この大事件が日本の政府おろかアメリカまでもを巻き込んだ展開となってくると、
さすがに予算の関係か描ききれなくなってしまったのが何とも残念。
荒井晴彦の脚本ではアメリカの重要人物もをポンポン飛び出すスケールであったそうですが、
ここまで完全に描いたとしたら、更に興味深々なおもしろい作品になったでしょうに…。
また俳優陣ですが、金大中の行方を追う、日本側と韓国側の両主役、
佐藤浩市とキム・ガプスが迫真の演技をみせ見事です。
佐藤浩市は、それまで正直あまり好きな俳優ではなかったのですが、
この作品での彼は迫力満点、とにかく怖いです。
日本という国を愛するがために自衛隊に入隊したものの、
実際の自衛隊は世論を気にした【骨抜き集団】に成り下がっており、
彼の【怒り】がそのままこの事件へと反映していく…。
終始憮然とした表情で黙々と任務をこなしていく、佐藤浩一のその姿には
何か狂気に陥った人物にさえ見えソラ恐ろしくなってきます。
また対するキム・ガプスもたどたどしい日本語で
【国家】から任命されてしまった男の悲劇を体当たりで熱演。
佐藤浩一と一歩も引かぬがっぷり四つの演技合戦は見応え充分であります。
他にも荒井晴彦の脚本で最も力が入っていたと言われている
夕刊トーキョーの記者・神川役の原田芳雄も相変わらぬ存在感で見事。
「戦争に失望し、共産主義に失望し、もう俺には信じるものは何も無い!」
彼の富田に対する悲痛な叫びは、原田芳雄の好演と相まって
私の胸に突き刺さりました。
■特集【日本映画を語ろう!】の過去の記事、今後の予定は こちら
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