「国立名人会」 | こだわりの館blog版

「国立名人会」

9月国立名人会

9/24 国立演芸場にて


9月の「国立名人会」は古典落語あり、新作落語あり、
浪曲あり、ベテランの至芸あり、トリではじっくりと怪談噺、と
非常に見応えのある充実した公演でありました。
こういう公演に毎回遭遇したいものです。



出演者・演目は下記の通り


 (前座)柳亭 小みち「やかん」
 初音家 左橋「七段目」
 三遊亭 楽之介「花筏」
 桂 小春團治「漢字悪い人々」

 
     仲入り


 東家 浦太郎「浪曲 野狐三次」
 ニューマリオネット「あやつり人形」
 三遊亭 圓楽『真景累ヶ淵』より「豊志賀の死」



それぞれを取り上げていくとまた長くなってしまうので、ちょっと取上げておきたいことを三点ほど。


上方落語の桂小春團治「漢字悪い人々」が非常に面白かった。
舞台面は上方落語らしく【膝隠し】をおいての口演でしたが、
舞台上手の天井からぶら下がっているのはなんとスクリーン。
前方にプロジェクターを置き、パワーポイントによるビジュアル落語であります。

  話の内容は、架空の国に【ひらがな族】と【カタカナ族】と【漢字族】がおり、
  【漢字族】が圧倒的な力をほこっている。
  ある日【ひらがな族】が釣りをしていて謎の「○」を拾ってしまう。
  この「○」は“ほ”君を“ぽ”君にしてしまう、カタカナ族の“ト”君を韓国人にしてしまう(ハングル語)
  悪い存在という事で、【ひらがな族】はこの「○」を「消しゴム山」に捨てに長い旅に出発する。
  その噂を聞きつけた【漢字族】は「○」を奪いに、
  旅に出た【ひらがな族】と【カタカナ族】を追いかける…というもの。

そう、これは「ロード・オブ・ザ・リング」の立派なパロディなのであります。
これが本当に面白かった。
笑いに笑わせてもらいました。
小春團治師の自作という事で、噺の着眼点のおもしろさ
ちょっと高めの関西弁の話し方のおもしろさに加えて
スクリーンに映る、ほ君がぽ君に変わる“文字”の視覚的なおもしろさが加わって
ちょっと今までの上方落語では体験しなかったおもしろさでしたね。
あの桂春團治一門からこういう異才が登場するのですから、落語というのは奥が深いモンです。


トリ前に登場したのは操り人形のニューマリオネット
このご夫婦、私久々に見ました。もう10年ぶりぐらい。
しかし全く内容は変わってませんでした…ゆっくり登場する“出”から、もう寸分たりとも。
でも何度見ても、10年ぶりに見ても楽しいし、あの芸は素晴らしかった。
これはもう寄席にはなくてはならない存在、まさに至芸でありますね。


そしてトリが三遊亭圓楽「豊志賀の死」
今年圓楽師は「大銀座落語祭」で「中村仲蔵」 をたっぷりと聞きましたが、
今回の「豊志賀の死」の口演は珍しいんじゃないでしょうか。

  39歳の清元の師匠【豊志賀】が男嫌いであったにもかかわらず、
  ふとしたことで21歳の【新吉】に恋し色狂いとなり、
  弟子の【お久】と新吉の仲を怪しむ嫉妬から病気となって、
  遂には自害の後に【怨念】となり新吉にとりつく。という

こう文章で書くとなんとも壮絶な怪談噺なのでありますが、
これを圓楽師はユーモアを交えながら、サラリと口演しました。
この“サラリ”感が実に耳に心地よかったです。
考えて見たら圓楽師の師匠・六代目三遊亭圓生も実に艶っぽい演出でこの噺をサラリと口演してました。
圓生師と圓楽師では圓楽師の方が“骨太の声”ではありますが、
演出方法は師匠からの口伝ですから変わりようがありません。
御大・圓楽師の口演を聞きながら、
もう亡くなって20以上経つ六代目三遊亭圓生の影をフッと見たような気がしました。


■私はこれで六代目三遊亭圓生の「豊志賀の死」を聞きました

  
  三遊亭円生
  圓生百席(56)真景累ヶ淵(しんけいかさねがぶち)~3「豊志賀の死」~4「お久殺し」

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