こんにちは。今日はふだんnoteでやっているココダケ話https://note.mu/millionmaro
の出張版としてブログでも同じ記事をアップしておきます。ちなみにこの場を借りて申しますと、ココダケ話は今月いっぱいで通常の無料閲覧が終了します。この機会にぜひ過去記事もご覧いただければと思います。では、以下昨夜更新した内容です。↓

 

今夜は「ココダケ話」臨時営業としまして、『ダ・ヴィンチ 4月号』さんのスガシカオ総力特集号に掲載していただいた「黄金の月」の主題による短篇「9月には残らない」を書いてみて思うことなどを中心に話してみます。

あれは思い返せば20年前、大学浪人のさなかのことだった。自宅から離れた名古屋で姉(彼女は医学浪人生だった)と共同で下宿生活をしていた頃に、ラジオから流れてきたのが「ドキドキしちゃう」だった。衝撃のイントロから始まり、毒の効きまくった歌詞が流れる。でも「毒」と言ったけれど、その頃の自分の身も蓋もない本音でもあり、なぜこういったことを誰も歌詞にしないんだろうとむしろ不思議に思っていたなかでガツーンと脳天を撃ち抜かれた感があった。そしてサビ。あのキャッチーで疾走感溢れるコード展開にもう完全にシビれてしまった。

それから「黄金の月」や「月とナイフ」を知ってゆき、大学在学中にはもうどっぷりスガ沼にハマっていた。思考すべてがスガ的に染まっていく。だから小説を書いていてもどこかスガ臭がする。ならばいっそ、とスガシカオの楽曲をテーマに小説を書いたり考えたり、といったことを繰り返していった。

24歳で黒猫シリーズを書くチャンスを得たとき、6話連作で、最初と最後を「月」をテーマにしようと思ったのも、彼のファーストアルバム「CLOVER」のなかに「黄金の月」と「月とナイフ」が収録されていたことに関係があった。この作品をデビュー作にするぞ、という意気込みが、しぜんとスガシカオのデビューアルバムを意識することになった。結果、そのときはデビューには至らなかったのだが、ご存じのとおり2011年には、本作をブラッシュアップした『黒猫の遊歩あるいは美学講義』が早川書房主催の第一回アガサ・クリスティー賞を受賞する。

今でも、いろんな短篇や長編を書くけれど、たとえば『偽恋愛小説家』のように毒のある話を書こうと思うときは、いつでもスガ楽曲を思い浮かべてしまう。反対に甘く切ないものを書くときにも、それ用のスガ楽曲を聴く。じつは執筆専用に、甘いスガ曲とビタースガ曲をプレイリストで分けたりもしているくらいである。※バージョンは10種類くらいある。

今回の依頼の発端はたぶん5年前だと思われる。デビュー後、ほどなくダ・ヴィンチさんからインタビューの依頼があった。その頃はちょうどスガさんが所属事務所を離れた後で、今後どんなふうに活動されるのか一ファンとして緊張気味に見守っていた時期でもあった。そんなこともあったせいか、インタビューを終えた後、図々しくも「今後、もし何かダ・ヴィンチさんでスガさんについての企画とかあるときは、もうどんな形でも構わないので関わらせてください」とお願いした。

でも、さすがに5年も前の話だし、じっさいに今回の依頼がきたときは、「キターーー!」と叫ぶと同時に「うっそ…まじか…嘘だろ…」の感もあった。というのも、この5年の自分というのは、たしかに作品はたくさん書いたけれども、決して自分に対して60点以上の点数はあげられない状態であることを自覚していたからだ。黒猫シリーズを超えるヒットもなく、いまだに一般文芸とキャラ小説の間を彷徨っている。知名度も決して高いとは言えない。僕に依頼の連絡をくれたのは花酔いロジックの担当さんなので、実際にダ・ヴィンチ編集部のどなたが僕の名前を出したのかは定かではないのだが、恐らくあのときの方が僕の発言を覚えていてくれたのだろう。図々しいお願いを覚えていてくれたことも感動だけれど、今の自分に、ほかにいくらでも適任者がいたはずなのに依頼してくれたことが何よりうれしかった。

もちろん依頼は二つ返事で受けた。長年、スガシカオの楽曲をテーマに習作を重ねてきた人間である。できないわけがない。問題はどれを選ぶか。あれこれ考えて、A案「黄金の月」の主題による短篇、B案「夕立ち」と「海賊と黒い海」の主題による短篇、C案「THANK YOU」の主題による短篇の三案に絞り込んだ。B案は、あの2曲は間奏がじつはたぶんあえて同じになっているところがあるんだろうと思われたので、その二つの歌詞の世界を同じ男女の話にして書いてみようかな、と思っていた。C案はかなり毒気の鋭い話にしようかな、と。何しろ、バイトとか行く前に「みんな死ね」くらいに思いながら「THANK YOU」をかけて黙想するのが、大昔の僕の仕事前の日課だったので、思い入れが深いのだ。

で、スガさんに選んでもらおうと思ったのだが、スガさんから間接的にきたお返事はどれも読んでみたいから選べないとのことで、こちらで選ぶことに。そうなると、やはり20周年を記念するわけだし、ダ・ヴィンチを定期購読していてスガさんを初めて知る人に対しても「まずはこれ聴いて!」の一枚にするのがいいか、と考え、もう絶対人気投票でも一番になるであろう名曲「黄金の月」を選ぶことにした。

主人公はむかし物書きになろうとしたことのある図書館司書。彼のもとに死んだ兄の癖文字で送り状の書かれたキウイフルーツが届く。果たして──という話。24歳で作家になるはずが30過ぎまでくすぶってしまった自分自身の状況を少しダブらせつつ、あくまで「黄金の月」の世界観に添ったつくりにしてみた。トリビュートだからスガさんを登場させるか、と思わなかったわけではないのだが、音楽のトリビュートアルバムでも、みんなリスペクトするからこそ自分のカラーをそこに惜しげもなくのせ、カラーの拮抗をみせつつ結果として楽曲の味を最大限引き出すのがトリビュートかな、と考えてみることにした。

読んだ方、どうでしたでしょうか? スガシカオファンの方にとっての大切な曲「黄金の月」を汚さぬ作品に仕上がっているといいなと思います。

で、今日ふと20年前の自分に今日のこと話したらめちゃくちゃ自慢口調になっちゃうだろうな、と思った。いやもう、だって、この20年間、スガシカオさんと何らかの形で関わる、というのが大きなモチベーションの一つだったんだから。しょうじき、え、もう死ねってことですか、俺に死ねと? と依頼がきたときは思ったくらいで。だから雑誌に無事掲載されているのを見るまでは夢じゃないか、とか、途中で編集部の意見が変わったら、とかあれこれぐじゃぐじゃ考えていたわけですよ。
ですからね、もう、感無量なわけです。

今作は、ふだんの僕の書いている作品よりだいぶオトナなテイストだしキャラ小説でもない。でも、じつはこれがデビュー前の頃の僕のテイストだったのだ。まあ僕のテイストというよりスガシカオを真似る森晶麿テイストというべきか。でも、とても短期間で楽しく書けたし、もっとも素の部分で勝負できたようにも思う。こんなにするっと小説を書き終えたのはデビュー後初めてかもしれない。またやりたいなぁ、とかも思う。爆発的な反響とかあったりしてもっと書かせてもらえないかな、とかも思う。そんな欲深くなるくらい自分はスガシカオの世界がやっぱり好きなのだ。

自分にそんな新たな可能性も感じさせてくれたダ・ヴィンチ編集部さんに、スガシカオさんに、改めて御礼申し上げます。そして、スガシカオさん、デビュー20周年本当におめでとうございます。これからもスガさんの新譜を聴くことが「事件」でありますように。

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黒猫:今晩は。約2カ月ぶりの活字ラジオです。今夜は特にないんでしょ? お知らせとか。

作者:そうだね。まったりいこう。宣伝ばっかしてても疲れちゃうからね。と言いつつ現在絶賛発売中、『僕が恋したカフカな彼女』(富士見L文庫)どうぞよろしく。書店によって置き場が文庫コーナーだったりライト文芸だったりといろいろだと思うのでわからないときは書店員さんに聞いてみてください。

 

黒猫:宣伝してるね。

作者:しちゃったね、やっぱり。あと、本作と『人魚姫の椅子』(早川書房)は「小説を書くこと」についての小説でもありコインの裏表のような関係にありますので併せて手にとってみてくださいませ。こちらも絶賛発売中。

黒猫:すごく宣伝してるね。

作者:まあこれくらいはね、しとかないと。

黒猫:まったりいくんじゃなかったの?

作者:わかった。じゃあ、まったりいこう。

黒猫:本当かな。まあいいや。最近はどう? どんな生活してるの?

作者:どんなって……起きたら書いてる、かな。音楽聴きながら、たまにネット見たり、、あ、そうだ、先月ね、京都行ったんだよ。文フリとトークイベントで。

黒猫:お、そうだったね。どうだった?

作者:楽しかった。

黒猫:馬鹿なのか君は。なんでそんな稚拙な感想を言うんだ。

作者:だって楽しかったから。

黒猫:ほかにないのか。

作者:文フリって独特だね。あと文フリの中の人が大学院時代の同期だったりして懐かしい再会もあったな。

黒猫:ほう、それは奇遇な。で、独特ってのは?

作者:出版ってものを根本から考えられるから面白いなぁと。開催時間は5、6時間。その間にぐわぁっとお客さんがきて物色して去っていく。まあTwitterとかで告知しているから最初から僕がいることわかっていて来て下さる方はそりゃあ確実に買ってくれるわけだよね。でも知らない人にとってはただの同人誌で、そこが潔いし、素通りされたときの悔しさとか含めて、すっごい新鮮だったな。出版界の人は全員文フリ強制参加とかしてもいいんじゃないだろうか。

黒猫:そんなに新鮮なのか。

作者:どれくらい「いちげんさん」の足を留められるかって考えることは大事だよ。むしろ書店における一冊の本になったときでも同じだけの緊張感はやっぱり必要なはずで、文フリの雰囲気に接していると、果たしてこの会場で本を売ってる人たちほどの熱気で日頃の本づくりに取り組めているのかって改めて考え直す部分はあったね。作品しかりコンセプトしかり。見せ方しかり。すべてで魅せていかないと足は止められない。その必死さというのがもしかしたら今必要かもしれないな、とね。

黒猫:まあ、何からでも学べるというのはいいことだ。僕は呼ばれなかったんだよな。

作者:お、珍しくすねている。今回は、まあ初心に帰るっていう狙いがあったから君には声かけなかったんだ。付き人ちゃんにも。やっぱり「黒猫と付き人の出ている話を売りますよ」って言うと、そりゃあ客足が変わってくるのはわかるわけですよ。でもそれやっちゃうと「いちげんさん」に対しての真っ向勝負ができないし、現状の自分の弱点とかがわかりにくくなっちゃうからね。

黒猫:なるほど。べつにすねてはいないけどね。京都久しぶりに行きたかったな、と思って。

作者:なんだ、祇園か? 祇園か?

黒猫:ち、違う! 変なことを言うな。

作者:舞妓さんにすれ違ったぞ。

黒猫:べつにうらやましくはない。

作者:無理するな。

黒猫:本当だ。

作者:トークイベント、お客さん全員女性だった(史上初)。

黒猫:…い…いやべつにうらやましくは…。僕のイベントはいつもだから(髪かき上げる)。

作者:トークイベント、迷子になって遅刻しかけた。

黒猫:もはや全然うらやましくはない。

作者:京都の街って迷うと魔界に見えてくる。「千と千尋」の千尋の気分だった。

黒猫:…そりゃお気の毒。

作者:でもトークイベント、冗談はさておきほんとに面白かったよ。俺も疲れてたからどんどん本音でしゃべってしまったしね。参加者の皆さんもリラックスしていろいろ質問してくれたからとてもよかった。

黒猫:どんな話をしたんだ?

作者:西野カナになりたいって話。

黒猫:……外見、じゃないよな?

作者:馬鹿か君は。メタファーだメタファー。

黒猫:まあ、深くは突っ込まないことにしよう。朗読もしたのか?

作者:今回は「夏を掬いに」と「傘とフラミンゴ」をね。

黒猫:「夏を掬いに」は丹地先生の冊子に収録されている僕らの話だね。

作者:そうそう、声に出して読んでみるとまたちょっと違った風景がみえて面白いなと我ながら。

黒猫:もう一つの「傘とフラミンゴ」って初めて聞くが……。

作者:これはね、デビュー前からあった短篇を今回のために圧縮して朗読用の長さにしたんだ。思いのほかいい感じにまとまったから、また機会があればべつの場所でも朗読してみようかなと思う。

黒猫:いろいろ活動の場を広げているようで何より。ところで、活動の場といえば来月何やら某有名雑誌に、とあるアーティストに捧げる特別短篇を寄稿したのだとか?

作者:み、み、耳が早い……その話は来月にしよう…胃が出てきそうだから……。

黒猫:なんだ、緊張してるのか…?

作者:もうね、これはね、ああああああ、いやもう雑誌に載るまで夢かもしれないからホントこの話はやめましょう。

黒猫:ふうん、そうなんだ。つまらないな。じゃあ、久々に「今夜の一枚」、やっとこうか。

作者:こ、今夜の一枚は、スガシカオ『CLOVER』

 

CLOVER CLOVER
3,146円
Amazon

このアルバムのなかの「ドキドキしちゃう」を最初に聴いたのが18歳~19歳の頃で、その後スガシカオにハマって「黄金の月」とか「ヒットチャートを駆け抜けろ」を知っていくんだけど、最初のうちはどうして自分がこんなにハマってるのかわからなかったんだよね。

黒猫:ファンクなところじゃないの?

作者:最初はそうかなと思うわけ。でも、それならほかのファンクやってるアーティストにも同様にハマらないとおかしい。

黒猫:歌詞かな。彼の歌詞の世界は独特だよね。

作者:そう、そうなんだよ。でもね、歌詞が独特とかそういうことじゃなくて、楽曲と歌詞とが一体となってすげーディープな世界観ができちゃってる。みんなしがない現実があって、でもそこにズブリと浸かっているのは当たり前のようでもじつはすごく奇妙なことかもしれないっていうその、当たり前と当たり前じゃなさの境界線上に立って何かを語りかけてくるんだよね。

黒猫:なるほどなるほど。その話を、あれかな、来月の雑誌を見ながら思い出せばいいのかな?

作者:ぬおおおおおおおお、俺いま何か話した? 何も話してないよね。

黒猫:もうちょっとその話聞かせてもらおうか。

作者:黒猫がねちねち攻めてきたので、こういう攻められ方をいつも付き人ちゃんもしてるんだろうかなと思いながら、本日の活字ラジオはここまで。また来月!

黒猫:あ、逃げたな? っていうか僕は彼女をねちねち攻めたりはしない!

作者:嘘をつけ! 彼女に聞くぞ!いろんな意味で聞くぞ!

黒猫:うっ…それでは皆さん、今夜はこのへんで。

 

 

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早いところではもう発売していますが、全国的には明日以降となります『僕が恋したカフカな彼女』、装画はカズアキさん、装丁は西村弘美さん。


定価:本体620円(税別)

「君をカノジョにするチャンスをくれ」

「なら──カフカにおなりなさい」
**
「何、この誤字脱字だらけのダブンは」架能風香への恋文は見事に散った。フランツ・カフカを敬愛する彼女にふさわしい男になるため、深海楓は急遽小説家を志す。そして彼女の洞察力を目の当たりにすることになる――

 

という感じです。

 

これまでの焦れ焦れとはずいぶんテイストが違います。

ある意味、これまで僕が苦手だったような読者さんに対しても広く開かれた入門編として、今回の二人はまったく違った恋愛模様が展開されます。

はたして主人公の「僕」はカフカになれるのか? カフカになるとはどういうことなのか?

ぜひ飼い主におなりいただき確かめてください!

 

さて、そこで特典クイズ!!

 

【クイズ】
本編のなかに
二か所、黒猫と付き人(黒猫シリーズを知らなくてピンとこない方のために、黒いスーツの人とその隣にいる女性と言っておきます)が出てくるところがあります。それは何頁と何頁でしょう? 両方ともお答えください。

【応募期限】
2017年1月20日~2月20日まで!※毎回フライングする方います、ご注意ください。

 

【正解者プレゼント】

正解者にはもれなく、本作の後日談を愉しめる特別短篇「カフカな彼女AFTER(アフター)」のPDFデータをプレゼントします。25日以降随時正解者のメルアドに送信させていただきます。

 

【応募先】

kuroneko.since2011@hotmail.com

これも毎回のことですが、ヤフアドの方がなぜか届きにくいので、TwitterDMでのご応募も受け付けさせていただきます。

 

ではでは、多くの方のご応募をお待ちしております。

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