黒猫:こんばんは、活字ラジオ臨時放送の時間がやってきました。

作者:今日は文庫版『黒猫の約束あるいは遡行未来』の発売日なんだっけ?

黒猫:……ちがうよ、それは明日だ。というか君のせいで僕はたいへんな目にだな……。

作者:ん? 付き人に平手打ち喰らった?

黒猫:彼女はそんなことはしない。ええ、本日書店へ駈け込んでくださった皆様、ご足労いただき申し訳ありませんでした。

作者:ホントに君は嘘の情報を流してはいけないね。私からも重ねてお詫び申し上げます。

黒猫:君ねぇ…(わなわな)

作者:まあでも出版社ごとに発売日表示の感覚って微妙に違わない? よく前倒しで書店さんに出回ってたりするしね。何度か「明日発売」って言った直後に「げっとぉ!」って叫んでるフォロワーさんのつぶやき見たり報告されたりしてるからね。

黒猫:なんだその言い訳めいた発言は。

作者:言い訳めいてるんじゃない、言い訳そのものだ。

黒猫:自分で……。まあいいや。それで、今夜は何を話すんだ? 『約束』執筆時の話なら単行本刊行時にけっこうしたと思うけど。

作者:いやいや、あの頃はまだ活字ラジオ始まってないから何も言ってないよ。

黒猫:あ、そうか。二年前だもんな。

作者:今回ももちろん装画は丹地陽子先生、装丁はハヤカワデザインさん。単行本の雰囲気をそのままに、二人の表情がより細やかに描かれている。またキャッチが今まで以上にこう、ぐっとくるじゃないか。『一歩を踏み出す勇気がほしい。たとえ彼の心が見えなくても。』彼の心が見えなくても!

黒猫:二度も言わんでいい。

作者:彼の心が見えなくても!

黒猫:しつこい。

作者:この男の心なんかまる見えなんだけどな。見えてないの彼女くらいだろ。

黒猫:(それな)何のことかな。

作者:しかし付き人は姿勢がいいなぁ、かわいい。

黒猫:君ね、つきびとばかり愛でてないで、少しは…。

作者:君を愛でろというのか……まさか……。

黒猫:いやそうじゃなくて。ほかにも言うことがあるだろう。

作者:あ、そうそう。今回は何と、巻末に掌編「約束の朝─黒猫視点によるヴァ―ジルホテルの朝─」が収録されています。

黒猫:なんだって……あの話か……。

作者:『回帰』の特典のときに出した『甘すぎる断篇集』のなかの一篇がT嬢ディレクション版として初の紙化! これは画期的。今まで僕の特典は僕が個人的にやってきたことだったけど、その一部を早川書房さんの文庫の形態で残せたんだからね、とても大きなことだよ。

黒猫:ふむ。それはいいが、よりによってあれでなくても……(←いちおう読んでいる人)

作者:「あの」出来事があった翌朝の黒猫視点が静かに描かれている。

黒猫:「あの」とか言わなくていいから。

作者:え、じゃあもっとはっきり言ったほうがいいのか?

黒猫:だああああ、もっとべつの話をしたまえ。

作者:本編終了後に読むとなかなか美味です。お試しあれ。それと、今回も帯袖のQRコードから特典短篇がダウンロードできます。

黒猫:聞いたよ。タイトルがひどい。

作者:うちの長女がゲラ段階のを見つけて「まさか新作のタイトル?」って不安そうに聞いてきたから笑った。

黒猫:そりゃ、あれが新作のタイトルだったら真剣に心配するな。

作者:『黒猫の号泣あるいは嗚咽講義』っていうのは今年のエイプリルフールネタだったんだけど、『約束』の特典何にしようかって考えていたときにもうこれしか浮かばなくなっちゃって。

黒猫:なんでだ……おかげで僕はひどい目に……。

作者:あはは、たいへんだったね。でもおかげでとてもいいものが見られたろ?

黒猫:……ノーコメントだ。

作者:なんとこのたびの特典には丹地先生×ハヤカワデザインさんによる着せ替えカバー付きなんです。ぜひダウンロードした装丁を自宅やコンビニのコピー機でプリントアウトして以下のようにしてみてください(写真提供丹地先生)

黒猫:おお、チラ見せ……。

作者:もうちょっと見せよう。これがPDFデータ。

黒猫:スクショ…しかも遠い。

作者:いやーホントこの付き人がもう……いろんな意味でたまらない……。

黒猫:……まあ否定しないでおこう。

作者:素直に「でっしょでしょでしょ」って相槌打てばいいだろうに。

黒猫:そんなこと僕が言うか。あ、君、インスタからお知らせきてるよ。

作者:上の表示は見なくていいんだ。

黒猫:あと充電したほうがいい。

作者:よけいなお世話だ。

黒猫:あと18時32分。

作者:いつからボケに回った?

黒猫:しかし、まあ私的感想はともかくずいぶんゴージャスな特典だ。

作者:本当にね。前回の『偽恋愛小説家』や『ホテルモーリス』でもそうだったけど、僕ひとりではできないことだからね。今回はとくに、丹地先生、ハヤカワデザインさん、そしてT嬢のご協力をいただき実現できた特典だよ。全力の「遊び」が詰まっている。T嬢曰く「約束のおまけではありますが、5年間応援してきてくださった読者の皆さんへの御礼だと思っております」とのこと。

黒猫:なるほど。そうか、このシリーズもかれこれ5年か。

作者:簡単に言うなよ。君はテキトーに薀蓄垂れ流してればいいかもしれないけどこっちは書かなきゃならなかったんだからな?

黒猫:え…何かその理屈おかしくないか?

作者:おかしくない!

黒猫:いや、おかしい。僕は謎の解決だってやっているわけだし、それに……。

作者:それに?

黒猫:いや、何でもない。

作者:いやいや何か言おうとしたね? まさか、「それに僕と付き人のロマンスがなかったらどうなると思うんだ?」って言おうとしたのかな?

黒猫:言おうとしてない!

作者:「僕と付き人のロマンスが…」

黒猫:言ってないのに口真似をするな。

作者:しかし僕はデビュー当時はシリーズものにする気なんかさらさらなかったんだけどね。もっとも、デビューより7年も前からいちおう三部作の予定ではあったんだけどね。

黒猫:シリーズ化する気だったんじゃないか。

作者:いや、僕の構想では第二作で君が死んで、第三作で付き人が一人で推理する話にしようとしてたから。

黒猫:……何かむかし聞いた気もする……頭が痛くなってきた……。

作者:殺されなくてよかったね。

黒猫:T嬢に感謝するしかない。

作者:跳ねっかえりだった僕はデビュー当初、次も黒猫を書いてくれって言われてかなりウーンって思ってたんだけど、いま考えればシリーズ化してなかったら僕はとっくに作家生命を絶たれていたかもな、とも思うんだよね。

黒猫:そういう意味では僕に感謝だな。

作者:いや、T嬢ほか早川書房の皆さんと丹地先生、付き人に感謝。それともちろん飼い主の皆様ね。

黒猫:本当に君くらいの「小規模作家」は飼い主の皆様が毎回飼ってくださるおかげで生きているようなもんだもんな。

作者:小規模作家って初めて聞いたぞ。じっさい僕の作品の飼い主の皆さんはすごく素晴らしい方が多いんだよね(貧弱ボキャブラリ)。毎回トークイベント開くたびに編集者の方がみんな驚いてる。「森さんの読者さんは皆さん穏やかでとても雰囲気がいいですね」って。

黒猫:何て返してるんだ?

作者:「ね! 僕がいちばんびっくりしてます!」

黒猫:馬鹿まるだしの回答だな。

作者:だってびっくりなんだもん。で、こんな素晴らしい読者さんがこの日本に10倍20倍の数いるなんてあまり想像できないんだよね。だからもう僕は小規模運営で……。

黒猫:何を言ってるんだ、そういうことは大規模になってから「あの頃に帰りたい」って言ってこそ価値ある発言だ。

作者:え、そんな上昇志向なの、黒猫って……。

黒猫:パフェは大きいほどいい。

作者:パフェの話なのか。

黒猫:パフェの話じゃないよ。

作者:いまパフェって言ったよ。

黒猫:たとえだろうが。

作者:あそう。まあ売れたほうがいいとは思うけどね。マイペースにいきますよ。

黒猫:君にペースなんてものがあったとはね。

作者:ないけどね。

黒猫:ないのか。

作者:ないよ。超特急の次の日は鈍行列車だしね。執筆ペース。まあそんなことはどうでもよくて、すっごく話を戻すと、特典PDF、とてもゴージャスです。黒猫がなぜ号泣したのか知りたい方はぜひ、ぜひ、ぜひ飼い主に。

黒猫:僕は号泣はしてない。そこは断言を……。

作者:はいはい、泣かなかったね、偉かったねー。

黒猫:おまえ……。

作者:それと、帯裏には何と来月の文庫の告知も!

黒猫:ま、待て! この会話、後ろに載せていたのか!

作者:さて君が誰と『恋路ヶ島サービスエリア』に行ったのか? このへんの話はまた来月にしよう。では今日の活字ラジオはここまで。ところでひとつ今日意外なことを知った。

黒猫:何だ?

作者:君、スクショなんて単語知ってたんだね。

黒猫:……それくらい知ってるだろ。

作者:ちなみに、どんな画面をスクショするんだ?

黒猫:べつに……。

作者:ほう。Twitterに流れてくる丹地先生の付き人イラストとかじゃないのか?

黒猫:…君がそういう憶測を口にすること自体がだな……

作者:さて黒猫の顔が赤くなったところで、本当に今日の活字ラジオはここまで。

黒猫:ちょっと待て! 赤くなってないうえにだな…(ガムテープ貼られる)……

作者:黒猫、晩ご飯、付き人に何作ったんだ?

黒猫:いううううう!

作者:なに、チューで済ませただと? いやらしい。

黒猫:いううううう(シチュー)!

作者:聞いたこっちが馬鹿だったよ。まさかのろけられるとはね。ごちそうさま。皆さん発売日は明日(以降)です。書店で見つけて飼い主におなりいただければ犀Yです。『黒猫の約束あるいは遡行未来』は、文庫化されている黒猫シリーズ中最大級のゴロンゴロンが待ち受けています。もちろんミステリ的な意味でもシリーズ内トップクラスと言えるかと。ではでは、おやすみなさい。

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