黒猫:さあ六回目になります活字ラジオ、一日遅れてのスタートです。これについては作者からお詫びがあるようです。
作者:すみません。本当は六回目までは20日に更新しようと思っていたのですが、締切などもろもろいろいろありまして身動きとれず、六回目より今後、毎月21日更新とさせていただきます。
黒猫:ふつうに考えればさ、締切がきりのいい日にくるに決まってるんだから、活字ラジオは1のつく日がいいって、もっと前からわかりそうなもんだけどね。
作者:ね。いやぁ、まったく気づかなかった。
黒猫:馬鹿なのか。
作者:そうかも知れない。こないだ「あれ、もしかしてココダケ話を11日にずらして、活字ラジオを21日にしたら今よりラクなのでは…」って気づいて愕然としたんだよね。
黒猫:しょーもない。それで、今日は何を話すんだ? 君、9月にまた新作を出すんだって?
作者:「また」なんて言うことはないだろう。君は黒猫シリーズじゃないかぎり自分の出番じゃないからってあくびしたり落書きしたりするんじゃないよまったく。
黒猫:そ、そんなことしてないだろ。勘違いされるようなことを言うんじゃない! それより、どんな本が出るのか話したらどうなんだ?
作者:そうだな。タイトルは『そして、何も残らない』(幻冬舎)、発売日は9月10日。ではアマゾンさんに出ている概要をここにコピペしておこう。

そして、何も残らない/幻冬舎

¥1,620
Amazon.co.jp

あの、一応言っておくとこういう概要は作者が決めてるわけじゃないからね?
おこがましいのは百も承知で、しかし書き手としては一度出てしまった宣伝概要を恥じらっていても仕方ない訳で……。
黒猫:言い訳はいいから早くあらすじを言いたまえ!
作者:よろしい。では。
閉鎖された中学校の校舎で、かつて軽音楽部で生まれた曲の歌詞通りに起こる連続殺人。
アガサ・クリスティー賞受賞作家が書き下ろした現代日本版『そして誰もいなくなった』
すべて伏線、衝撃のどんでん返し……。究極の「青春+恋愛」ミステリー。

真琴は高校の卒業式を終え、既に廃校となっている母校の平静中学校を訪ねた。
朽ち果てた校舎に、彼女が所属していた軽音楽部のメンバーが集められたのだ。
目的は中学三年のときに部を廃部に追い込んだ教師への復讐。
だが、再会を祝して全員で乾杯した瞬間、ミニコンポから、その教師の声が響き渡った。
「平静中学校卒業生諸君に死を」。
一同が驚愕するなか、突然メンバーのひとりが身体を痙攣させ、息を引き取る。真琴は警察に連絡をしようとするも、携帯電話の電波が届かない。
しかも学校を囲む川に架かる橋が何者かによって焼き落とされ、町に戻ることができない状態になっていた……。
黒猫:なるほど、聞きしに勝る刺激的な宣伝文句が踊っているね。現代日本版……。
作者:だぁあああ! その部分を繰り返して言うんじゃない。本格マニアが「ほう」って反応してしまったらどうする!
黒猫:まるで反応してほしくないみたいな言い方だな。
作者:そういうわけじゃないけどね。ただ、犯人当て小説というつもりはまったく本人にはないんだ。
黒猫:へえ。
作者:僕はね、デビュー当時から一貫してホワイダニットの書き手だと思っていて。
黒猫:あ、そんな自覚があったわけね。
作者:自覚ってほどではないけど、どう考えても「ハウ」や「フー」に重きを置いたものは書いてないからね。しょうじきそこで喜んでもらおうという気はあんまりないわけ。たとえば、一見フーダニットものに見える『COVERED M博士の島』は、たしかに孤島ものなんだけど、210ページで犯人が出てくるくらいまでの展開は、勘のいい人なら推測できて当然なんだよ。そこにまったく重点置いてないの。あれは僕なりの孤島への愛をこめたホワイダニットの話なんだよね。
黒猫:なるほど。それじゃ、今回も主軸はホワイダニットなの?
作者:そう。本人としてはね。ただし『そして、誰もいなくなった』へのオマージュの気持ちがあったのも嘘ではない。だからそういう意味では、ホワイダニット以外の部分でも存分に楽しめるのでは、とは思うよ。
黒猫:前回、君は初期衝動がどうのこうのと言っていたね。
作者:そうそう、初期衝動のなかにある純度の高い青色みたいなものをすくい取って保存したい、と思ってた。だから、この小説をいったん書き上げて編集のNさんに渡したときはまだ本当に粗さばかりの目立つ新人のような書きっぷりだった。ただし、ものすごく青い作品にはなっていたから、これを今の自分がどう書きこなしてくか、というのが二年余りの課題だったんだよね。丁寧に書いてしまえば、勢いがそがれることもある。青さを残しながら、手を加える。これは案外難しかったね。やったことない作業だから。
黒猫:なるほどね。それで二年かかったか。
作者:かき上げるのに1年。書き直しに2年。足掛け3年か。
黒猫:高卒という時期に、あえて中学時代の同級生と集まるというのもずいぶん変わった展開だね。
作者:そうだね。自分が中学校の頃を思い出してみても、とてもうまく生きられた感じはしないんだよね。いつも早く卒業したかった。周りの何もかも気に食わなかったしね。で、高校はやっぱり中学校よりずっと自由で楽しいんだけど、そうであればあるほど中学時代のうまく生きられなかった部分を叩きつぶしたい衝動には駆られるわけだよね。そうすると、これからさらに自由の場へ飛び立つ高卒の時期が、ある意味思春期の過去を清算する最後のチャンスなんじゃないかなと思うんだ。
黒猫:なるほどね。いわゆる黒歴史?
作者:いや、そう言うと語弊があるだろう。黒歴史にかぎらず、あの時代特有のいかんともしがたい不自由さがあってそれはやっぱり時間が経ってもあとあと引っかかる。でもあの時には他に選択肢はなかったんだよねきっと。そういう当時の大量の「仕方なかった」を燃やせるゴミの日にでも燃やしてしまいたいと思うことはよくあるんだよ。君にもあるだろう?
黒猫:は? 何がだ?
作者:せっかく帰国してたのに、ずいぶん回りくどいやり方したせいで気持ち伝わったかどうかわからなくてもやもやしてたこととか。
黒猫:……何のことかな……。
作者:公園で万華鏡を取り出してみたり。
黒猫:何のことかな!
作者:食器洗ってるあいだに逃げられたり。
黒猫:何のことかなって言ってるんだけどね、僕は!
作者:と、このように誰にでもやり直したいことはある。で、それが個人の意志じゃなくて、外部から締めつけられた不自由さによってもたらされた記憶だと、よけいに悔いとして残るところはあるだろう。そういう意味で、高卒の時期に、あえて中学校の同窓会という舞台を選んだ。それに、中学校ってまだ高校と違って、学力がみんなバラバラだったりするから、その分これから進む未来もみんな大きく違う。それは高校にはない荒々しさとかダイナミックさだよな、と思う。
黒猫:たしかに。中学校の頃って、周りがまだ人間になりきれてなくて、あんまり言葉も通じなかったりするしね。それで、この物語は中学時代に同じ軽音部だった連中が久々に集まるって話だけど、君自身は中学時代何部だったんだ?
作者:中学は剣道。サボり魔だった。高校で軽音部に入った。
黒猫:ほう。じゃ、書きやすかった?
作者:いや、ボーカルで何の楽器もできないアホだったしあの頃はバンドとして音をまとめる意味とか何もわかってなかったからね、全然経験は生かされなかったな。
黒猫:そりゃ残念。でもまあ書き上げたわけだ。先日、先に読ませてもらった。
作者:なんだ、もう読んでたのか。
黒猫:君にしてはわりに派手なほうなんじゃないかな。このアイデアはいつぐらいからあったものなの?
作者:思いついたのは初めて打合せにいくときなんだけど、この小説のなかのあるネタは、じつは19歳くらいの頃に思いついていたものなんだ。ただ、その頃はこれをどうやれば小説になるのかわからなくて結局構想だけでお蔵入りさせていたんだけど、それがこの小説にはうまく嵌まった、ということだね。
黒猫:青春小説としての側面でも、大いに楽しめるんじゃないだろうか。話は変わるが、僕は『そして、誰もいなくなった』は後半に進むにつれて詩情がどんどん増していく感じが好きなんだ。あの何とも言えぬ荒涼感というかね。あれはミステリとしての魅力とはまた別個の、もう一つのあの作品の特筆すべき点だと思う。
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)/早川書房

¥821
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作者:それは同感だね。『そして、誰もいなくなった』は、よくネタの部分だけが話題に上りがちだけど、クリスティーの文章から匂い立つものにももう少し目を向けると違った楽しみ方ができるよね。じつは、早川書房さんから「夏に読もうフェア」の読書感想文の添削を担当することになっていて、その課題本というのが『そして、誰もいなくなった』なんだ。なので、もしこれを見ている方、我こそはという方は
http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2015-07-10-150356.html
↑これをコピペしてURLに飛んで概要をご確認ください。たしか今月末までですから。待ってます。
黒猫:まあそんなわけで、森晶麿の新作は9月10日発売予定ですので、ぜひ多くの方に飼い主におなりいただきたい……だろ?
作者:ですです。お願い致します。
黒猫:それじゃあ、最後に恒例の音楽のコーナーに。
作者:今日は、『そして、何も残らない』を書いているときによく聞いていたアルバムをご紹介します。2007年のWilcoのアルバム『Sky Blue Sky』。
Sky Blue Sky/Nonesuch

¥1,626
Amazon.co.jp
じつは作中にもウィルコの名前は出てくるんだけど、そこではここに収録されていない曲が登場する。でも実際に執筆当初に頻繁に聴いていたのはこっちなんだよね。特にこのなかの「サイド・ウィズ・ザ・シード」って曲がすごい。なんてことなさそうな曲調から始まるんだけど、この音数を抑えたはじまりから間奏の世界観が一気にぐじゃぐじゃしてくる感じが何とも言えない。全体に地味な曲が多いんだけど、穏やかでシンプルな音の裏側にじつは何かが変わり始めている、という静かな革命の気配みたいなものを感じさせる。まあ機会があればぜひ聴いてみてくださいませ。
黒猫:よし、それじゃあ今夜はこのへんで。
作者:ところで、最近Twitterのほうで不定期に、君と冷花の幼少期のエピソードを、冷花からヒアリングした資料をもとに公開してるんだ。知ってた?
黒猫:な……なんだって? 何を勝手なことを……!
作者:君がまさかあんな子どもだったとはね。
黒猫:あの女、君に何の話を教えたんだ?
作者:言えないなぁ、それは。
黒猫:まさか……アイツの教科書が僕の鞄になぜか入ってたから、届けに行ったつもりが別の教室に間違って入ってしまったことか!
作者:……そんなことがあったのか。
黒猫:違ったのか(肩を落とす)
作者:ちなみに、教室間違えて、どうなったんだ?
黒猫:大泣きした。小学一年だったからな、まだ。
作者:ぷっ
黒猫:わ、笑うな、小学一年だぞ! どっちかと言ったら僕の鞄に自分の教科書を紛れ込ませたアイツのだらしなさのほうが問題なのであって……。
作者:それでは今夜はこのへんで。皆様、小学一年で知らないクラスでぎゃん泣きしている黒猫を想像しながらおやすみくださいませ。
黒猫:想像はダメだ、絶対にダメだぞ! 著作権違反だ!
作者:では皆様、さようなら
黒猫:ちょっと待て! ちょっと(強制終了)
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『花酔いロジック 坂月蝶子の恋と酔察』のサイン本が当たる酔いのエピソード応募企画、というのを先日行いました。
本当は、昨日が発表日だったのですが、諸事情…というか単に私が原稿その他に押し潰されていたため一日ずれてしまいましたことを、ここで改めてお詫び申し上げます。
先程、当選作5つをTwitterで発表いたしましたが、ここで、もう一度、講評を加えつつ、発表していきたいと思います。
当選者のお名前は割愛いたします。後ほど、当選者の皆様にはダイレクトメッセージにて御芳名およびご住所を伺いさせていただきます。
なお、ご応募いただきながらこのたび当選から洩れてしまった皆様にもダイレクトメッセージを差し上げたいと思います。
ちょっとハードルの高い企画だったかな、と反省しつつ、それでもご参加いただけたことに感謝の意を表明いたします。

では、さっそく、当選エピソードと、その講評を。

【当選エピソード①】
本屋時代の先輩の送別会でその先輩から告白されたのだけど、酔いのせいか話相手を同じ苗字の男の子と混同してて、結局どっちが好きなのか聞いたら「付き合いたいのはIさん、結婚したいのはI君」という珍回答をいただいた。
【講評】
いいですね。どこまで言っても謎が続く謎物語のようです。でも、この数パーセントの謎が付き合いだしてからも続いたりしたら、やきもきしそうですね。それはそれで楽しそうですが。でも結婚を視野に入れ出した頃に「結婚はI君とするって言っておいただろ?」とか言われないといいですね。

【当選エピソード②】
居酒屋に行った時、隣に座っていた男性が酔っ払ってトイレの便器を抱きしめて○○大好きだー!と彼女の名前を叫んでいました。因みに女子トイレです。
【講評】
よほどО脚の女性に恋していたんでしょうかね。それともあの曲線美が酔った頭には女性的と感じられたのか。たしかに便器って機能的で無駄がなくて美しいですよね。マルセル・デュシャンの気持ちがよくわかります。ってそういう話じゃなさそうですね。

【当選エピソード③】
我が妹提唱美しくなるための自分酔い。毎夜鏡の前で私は可愛いと呟く呪いです笑馬鹿だなと思ったのですが、逆にお姉ちゃんは何も分かってないね。的に嘲笑われたので、今では私も一緒に呪いを呟く側に。
【講評】
姉妹二人が並んで「私はカワイイ」と言っているところを想像するとね、これはなかなかですよ。なかなか、怖いです。その隣で歯を磨いて眺めていたいなと思いました。

【当選エピソード④】
あまり普段家ではお酒を飲みませんが、たまに晩酌すると、いつの間にかアマゾンやその他ネット通販で本をまとめ買いしたお知らせメールが来ています。妖怪の仕業でしょうか。そしてどうやら今日もまた。(←スイ研シリーズご購入の写真あり)
【講評】
これねえ、僕もよくやらかすんで気持ちがわかります。でもそれで拙著をご購入いただけたというのが、結局いちばんの評価ポイントだったりしますが(笑)僕は音楽なんかもいっぱいダウンロードしてしまって、翌日に聞いても良さがわからなかったりするので困ります。きっと全部妖怪のせいですね、間違いありません。

【当選エピソード⑤】
夕暮れ時に電車で移動中、偶然、好きな人が同じ車両に乗って来ました。 窓の外は燃えるような夕焼けで、幸福感と美しさにうっとり…。 気がついたら口を開けて寝てました。 彼は真正面に座ってて、目が合うし。 恥ずかしかった。
【講評】
睡魔は運命の人の前にすら立ちはだかるんですね、恐ろしい。でもそんな睡魔が大好きです。
まあ考えようによっては好きな人に口の中までお見せしたわけで、なかなか睡魔なしにはできない大胆なことをされたとも言えます。違うか。

といったところです。
ではでは、これより皆様にDMをお送りいたします。
このたびはご応募いただきありがとうございました!

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