森晶麿のLEVEL 100,000,000

1秒のなかに1億の虚構があり、その1億分の1のなかに1億の真実がある。
本ブログは虚構家による、虚構のための、虚構的ブログである。


テーマ:
:こんばんは、華影忍です。今夜の活字ラジオはいつもと場所を変え、ホテルモーリスのスイートルームからお送りしています。そのうえMCの黒いスーツの奴はお休みをいただいてますので代わりに俺と夢宮宇多でお送りします。
夢センセ:忍はあれだろ、しょっちゅうこのホテル使ってるだろ。
:俺のことを何も知らないくせにそういう物言いは困るな。が、率直に言って常連客だ。さまざまな女と来ている。
夢センセ:やっぱりな。そうだ、このホテルと言えば、『ホテルモーリスの危険なおもてなし』の巻末に、とある小説家の滞在備忘録が載っていたぞ。
ホテルモーリスの危険なおもてなし (講談社文庫)/講談社

¥734
Amazon.co.jp

:その話か。どうも、とある美学教授も滞在していたらしいな。
夢センセ:そうなんだよ、そしてそこにはあの彼女も現れる。
:…何だって? それはもしや、あのポオ研究者の……。
夢センセ:そうそう、ん? 知り合い?
:知り合いというほどではないが……。
夢センセ:まさか忍、すでに毒牙にかけたなんてことは……。
:残念ながらまだだ。
夢センセ:なんだ、期待して損したなぁ。俺は黒猫シリーズは全部読んでるんだ。あのうるさい美学者はどうでもいいけど、付き人ちゃんがめっちゃかわいいと思うんだよね。あの男にはもったいない。
:同感だな。いまのうちは泳がせておいてやるが、あんまりのらくらしているようなら、俺が素早く彼女の唇を奪ってやらないでもない。
夢センセ:いいねえ。あれ、なんかこんなこと言ってたら俺も彼女を狙いたくなってきたな。
:奪い合いは大歓迎だ。しかしおまえには月子という女性がいたのではなかったか?
夢センセ:ん? ちょっと最近耳の聞こえが悪くって。何か言った?
:ふっ。まあおまえのことはいい。しかし、あの美学教授がホテルモーリスで何をしていたのかは大いに興味があるな。
夢センセ:そういえばあの美学教授と忍は浅からぬ縁があるんだっけ?
:あるといえばある、ないといえばない。とりあえず俺のことが知りたければ『四季彩のサロメ』を読むんだな。
四季彩のサロメまたは背徳の省察/早川書房

¥1,728
Amazon.co.jp

夢センセ:そうか。ちなみに俺のことを知りたければ『偽恋愛小説家』を読んでくれ。文庫化間近だ、と宣伝しておくか。
偽恋愛小説家/朝日新聞出版

¥1,512
Amazon.co.jp

:ところでこのホテルモーリスはゴージャスなわりにあまり客が入っていないようだな。
夢センセ:昔は超一流ホテルだったらしいんだけど、前支配人が自殺したりして今じゃ閑古鳥が鳴いているみたいだ。そのうえ、〈鳥獣会〉とかいうギャングの一味が常連になったからよけいに一般客は寄り付かなくなった。
:ほほう。〈鳥獣会〉か。うちの親父が昔、邪魔者を追い払うときに世話になったことがあるらしい。
夢センセ:げっ…どんな親父だ……。
:ここのコンシェルジュの日野とかいう男がまだ現役の殺し屋だった頃の話だ。
夢センセ:そうそう、さっき一階にいたスキンヘッドのコンシェルジュは元殺し屋なんだってね。ただし弱点がある、お酒にめちゃめちゃ弱いらしい。そんなホテルに、何も事情を知らない経営コンサル会社の青年・准が支配人としてやってくる、というところから物語は始まっている。しかも数日後には〈鳥獣会〉の大宴会が控えている。果たして無事に乗り切れるのか? という話。全五話構成だ。
:面白そうだな。俺もひとつ読んでみるか。巻末の美学教授の件も気になるからな。
夢センセ:スラップスティックとしてはなかなかいい出来なんじゃないかな。仕掛けがわかってからのほうが何倍も楽しめるという意味でも、一回読んで終りにならないから、これで700円というのはけっこうお得な気がするね。さらに帯ソデのQRコードを読み取るとスピンオフの短篇がダウンロードできる。これもいい。ミニスカポリスがかわいいんだよね。(詳しくは一つ前の記事参照)
:ほう、ミニスカポリスだと…(急に前のめり)飼う。
夢センセ:しかもそこでしか読めない、准とるり子の恋の行方というのがあって…。
:待て! るり子というのはさっき下にいった若いオーナー夫人だな?
夢センセ:あ、うん、そう。
:帰りに口説こうと思っていたのだ。
夢センセ:元気だねぇ。
:人の恋路が絡むといっそう燃えるタチでね。
夢センセ:本当にどうしようもない男だ。
:よし、こうしよう、るり子は夢宮、おまえにやろう。
夢センセ:え、「やる」って、勝手にそんな……。
:俺はここに残る。
夢センセ:……絶対何か魂胆あるよね?
:ここに間もなく、美学教授の付き人をしている女性が現れることになっている。
夢センセ:え! な、なんで!?
:ある美学教授の命が〈鳥獣会〉に狙われて危険だと言っておいたのだ。
夢センセ:あざとい……。
:そういうわけだから、おまえはオーナー夫人を口説いてこい。一つ隣の部屋をおさえておいたから、鍵を渡しておこう。
夢センセ:んん、やっぱいいや、俺は。
:ほほう、悪人とみせかけておまえ、案外月子に本気で……。
夢センセ:いよいよ耳が悪くなってきたな、全然聞こえないや。明日にでも耳鼻科に行くか。じゃあ忍、うまくやれよ。
:おい、逃げるのか?
夢センセ:眠くなった。さいなら~(ドアを閉めて廊下に出る)。ふう、言えないなぁ、忍の悪事がすでにコンシェルジュの日野さんにバレていて、付き人ちゃんは来ないだなんて。そのうえ、間もなくあの部屋に日野さんがスカート履いて現れて「付き人でーす」って言いながらバッキバッキに忍をしごこうとしてるなんて……。
忘れよう!さて、原稿に戻らねば。それじゃ、皆さんも『ホテルモーリスの危険なおもてなし』読んでね。ちなみに、この土日に飼い主になったことをTwitterでお知らせいただくと、森晶麿があなたのプロフ画像を褒めそやしに現れるらしいので、ぜひ知らせてあげてください。ではではおやすみなさい。



AD
いいね!(14)  |  コメント(1)  |  リブログ(0)

テーマ:
飼い主を捜しています。

以前、単行本で『ホテルモーリス』として発売されたものが、このたび、めでたく『ホテルモーリスの危険なおもてなし』と改題してリニューアルオープンする運びとなりました。
装画はukiさん、装丁は『恋路ヶ島~』や『ピロウボーイ』でもお世話になったalbireoさんです。
ホテルモーリスの危険なおもてなし (講談社文庫)/講談社

¥734
Amazon.co.jp
どのへんがリニューアルされているかというと、

●ホテルのフィロソフィーが以前より細かく描かれている。

●主人公の准が3割増しかわいい奴になっている。

●エトセトラ(全体の文章の印象など細部を再検討しました)。

さらに、巻末には「ホテルモーリス滞在備忘録」と題して、
ある小説家と、ある美学教授がホテルモーリスを訪れる話が収録されています。
それも、本編終了の夜の出来事として描かれていますから、本編終了後に続けてお読みいただければ楽しさもひとしおではないかと。

それだけではございません!

今回はなんと、帯ソデQRコードを読み取るだけで簡単にスペシャルスピンオフ短篇「カモは誰だ?」がダウンロードできるのです!
「え? QRコードにかざすだけで?」(誰?
そうなんです(誰?
ただし、QRコードは期間限定です。2016年7月31日までにダウンロードしてください。
というわけで、この二つの特典のついた『ホテルモーリスの危険なおもてなし』。
お値段はなんと、本体680円(税別)でのご奉仕!
「これはすごいですね」(誰?
そうなんです(誰?

この作品、発表当時より、さまざまな方から評価をいただきましたが、
不思議なことに発表から時が経ってからのほうがより好評が耳に届いてきたということで、
長く、広く愛されているのだなと感じます。

東京オリンピックが刻々と迫っていますね。ここでもういちど「おもてなし」とは何なのかをご確認いただくのも一興です。
ホスピタリティの語源を辿ると敵を迎えるというニュアンスも。

舞台は海辺の高級リゾートホテル。
しかし、今はギャングの巣窟となり栄光は翳り始めている。
現地へ乗り込む主人公の若き支配人はホテル運営未経験。頼みの綱はお酒に弱くてすぐに倒れてしまう元殺し屋コンシェルジュだけ。
さて、日々訪れる危険なゲストを徹底的にもてなし、ゴールデンウィーク初日のギャング大宴会を無事に乗り切れるのか?

ぜひ、文庫化を機に多くの方に飼い主におなりいただきたい一品です。

また、『IN★POCKET 5月号』では文庫化記念で「もうひとつのあとがき」と題して特集していただいてます。こちらもお見逃しなく。
IN★POCKET 2016年 5月号/講談社

¥200
Amazon.co.jp
AD
いいね!(17)  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
ポオは四月のあいだずっと仕事が忙しかったようだ。帰ってくるのは例によって二週間に一度、ひどいときには一ヵ月。ゴールデンウィークも目前だというのに、連休の旅行の計画も立てられやしない。そういえば先日は額に傷を負っていたけどあれはよくなったのだろうか。「アッシャー家が崩壊した際にちょっと怪我をね」とかわけのわからぬことを言っていたけれど。
そんな彼が、今朝久々に帰ってきた。私はここぞとばかりに愚痴をぶちまける。
「毎日食器洗い、買い物、料理、洗濯、部屋の掃除、この繰り返し。そうこうするうちに毎日の意味は失われていくわ。私が存在する意味って何なの? あなたにとって私って何?」
「甘美なシェリー酒、またはアンソンバーグのチョコレートといったところか」
 夫はそう言って私をまた膝にのせる。ずるい男だ。たまに帰ってきておいて、こちらが不満のマグマを噴出させようとしていると、それを察知したかのように魅惑的な言葉で心をとろかせる。そうはいくかと私は彼の膝から降りていつものようにテレビをつける。今日もつまらぬゴシップばかり。
 まったく、つい先日九州で震災があったばかりなのに、もうゴシップを報じ始めているなんて、不謹慎だわ。私はテレビを消す。震災の最中はバラエティ番組が自粛されていたけれど、それも数日で終わってすぐにいつもの馬鹿げた番組が再開したようだ。私にすれば、その自粛終了もまた不謹慎だ。
夫は今日もココアを飲んでは口髭にクリームをべったりつけて、それを小さな舌でぺろりと舐める。
「先日の震災はたいへんだったね。というか、現状も物資の行き届かないところがあると聞く。引き続き我々はできうる限りのことをしていく必要があるね」
「そうね。それなのに、テレビ局はこんな時にゴシップ番組だなんて、不謹慎だわ」
「ふふ、君はそう言いそうだなと思っていたよ。一方で、何でもかんでも不謹慎という輩が多いとの非難もネット上には溢れているようだ」
「その意見もわからないではないのよ。テレビはテレビできっと事情があってやってることでしょうから、嫌なら私のように見なければいい話よ。私は不謹慎だとは思っているけれど、不謹慎をいちいち抗議する人も結局また不謹慎なんだと思うわね」
「ほう。君にしてはわりに冷静な発言だ」ポオはそう言ってまたココアを啜る。「たしかに、見なければ済む話だ。くわえて民放は、スポンサーがいて成り立っている。国民の金で成り立っている某局とは違う。ただ、僕が気になるのは、なぜ不謹慎かどうかが、かくもトピックになり得るのかということだね」
「またそういう穿ったことを言う」
「素朴な疑問だ。不謹慎の適用の基準って何だろう? 被害の種類か、それとも被害の大きさだろうか?」
「妙なことを言うわね。大きな震災だからでしょ?」
「じゃあ大きな火災ならどうだろうか? どこかの集落が焼けた。火が燃え移り山火事が起こった末の災害。立派な自然災害だ。ひと事じゃないよ。火はつねに我々に多くのものを与え、同時に奪ってもきた」
「それはそうだけれど……やっぱりその場合、バラエティ自粛とまではいかないかも知れないわね」
「となると、災害の規模ではなく、地震ということか。この国は二千もの活断層がある。この国の人々の暮らしをつねに脅かす存在。そのどこかに罅が入り激震が走るたびに、我々は他人事ではないと考え、心をひとつにする、か」
「あなたが言うと調子狂うけれど、まあそういうことね」
「つまり、大地が我々の神経と直に繋がっており、こと震災に関してはその場にいるいないに拘わらず神経が尖らざるを得ない。もしかしたら、茨城がテロリストに占拠される事件が起きても、ここまでの自粛騒ぎにはならないかも知れないね」
「その発想自体が不謹慎かも」
「また不謹慎か。しかし、日頃から連続殺人だのなんだのと悲惨な事件は起きてる。すべてが他人事ではないのに、それらと並行してバラエティ番組があることは許され、震災のときだけ許されないというのは、よほどこの国にとって震災が国民の身体的問題なんだろうね。仮に殺人事件で友人や家族の誰かが死んだら、そのときはテレビ番組のすべてが不謹慎に映るだろう。しかし、テレビは個人的な、あるいは個人的に見えるような惨事では自粛してはくれない。だが、震災はべつだ。これはその場の人たちだけでなく、我々みんなの問題だから、というわけだ」
「皮肉が言いたいの?」
「いいや。とりもなおさず、それがこの国のかたちだということさ。今では不倫騒動に湧いていた一ヵ月前が遠い過去に思えるくらいだ。最近、よく自粛には意味がないという意見を見かけるんだが、自粛に意味があるないという議論を自粛主張論者に対してするのは、それこそまったく無意味なんじゃないかという気がするね。両者のベクトルは完全にズレていて、いわば交わることがない。そもそも、自粛主張論者は、自粛に意味があると思って自粛しろと主張しているわけではないからね。ただ単に自粛していない状態が神経に触るからやめてほしいわけだから」
 それから彼はココアを飲み干す。そして、不意に痙攣し始める。
「あら寒気がするの? もう五月になるというのに」
「……胸が……胸が……」震えた指先が、テレビを指さしているように見えた。
「テレビが見たいの?」
 私はテレビをつけてあげた。馬鹿みたいなバラエティ番組が始まったところだった。
「……苦しい……こんな時に……」
「え? よく聞こえないわ、テレビが」
「テレビなんて……ふきん、しん……だ……」
 そのまま夫は背後に倒れた。首に脈を当てると、すでに息絶えていた。少し毒が効きすぎたようだ。
「あなたの身体に活断層が走ったら、とたんにいつもの客観的な物言いができなくなったわね」
 私は大きく見開かれた夫の目をそっと閉じた。
 その時、ドアが開いた。入ってきたのは──夫だった。
「嘘よ……どうして……」
 この部屋には夫が二人いた。彼は言った。
「そいつはウィルソン。昔から僕の周囲に出没する僕のそっくりさんだ。殺してくれたことに感謝するよ」
 ポオは私のもとへやってくるとそっと接吻をした。それまでなぜかカーテンの後ろに隠れていた黒猫のノワールがやってきて、ポオにじゃれついた。ノワールには夫じゃないと分かっていたのだろう。
「さて、この死体の始末、どうしようか、愛しき妻よ。まあ、少し楽しんでから考えるとするか」
 夫はいつものように私を抱き上げてしまう。ズルい男だ、と私は思う。また今日も、私はこの男のやり口で誤魔化されてしまうのだ。床に転がった死体をまたぐと、夫はそのまま寝室へと向かった。
 
AD
いいね!(16)  |  コメント(2)  |  リブログ(0)

AD

Amebaおすすめキーワード

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

ランキング

  • 総合
  • 新登場
  • 急上昇
  • トレンド

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。