ぽやぽやエブリデイ

ドラクエ10などのWeb世界で、世知辛い世の中を憂い

それでいながら眠気には勝てない毎日を繰り返していきます。

ミソスープの具は豆腐とワカメ!!

特撮やアニメの歌が好きです。スライム状のものは嫌いです。


テーマ:

第12話 スカイフィッシュ 後編 」の続きです。



注:この小説は18禁です。現実と空想の区別がつかない方にはおすすめしません。


バックナンバーは「こちら 」から!!



マインドスイーパー


……精神掃除士(患者の精神疾患を主とした自殺病治療の特殊能力を持つ医師の総称)




13.涙 前編



燃える家の中に、理緒は座っていた。


その瞳は見開かれてはいたが、光を失い、焦点が合っていない。


彼女は崩れ、倒壊してくる家の中、壁に背中をつけて小さくなっていた。


しばらくして、ドルンというエンジンの音が聞こえた。


うつろな瞳のまま顔を上げた彼女の目に、ドクロのマスクと、ボロボロのシャツにジーンズ、そして巨大なチェーンソーを持った男の姿が映った。


しばらく、男と理緒はただ見詰め合っていた。


「…………殺して」


理緒はそう呟いた。


「早く私を殺して……」


光を失った瞳のまま、彼女は押し殺した声で叫んだ。


「どうしたの? どうしていつも、近づいてこないの? どうしてそこでじっとしてるの? 殺してよ、早く私を殺してよ!」


男は動かなかった。


ただチェーンソーを回転させて、こちらをマスクの奥の黒光りする瞳で見つめている。


理緒は頭を膝を抱き、そこにうずめてすすり泣いた。


「死にたいよ……死にたいよぉ……」


絶望しきったその声が、倒壊する家屋に響く。


顔を上げた時、そこには男の姿はもうなかった。


理緒はぼんやりとした表情のまま立ち上がり、燃える家の洗面所まで歩いていった。


そして、カミソリを手に取り、左手首に当てる。


そこには、沢山のためらい傷や、一文字の切り傷があった。縫った痕もある。


彼女は腕に力を込めて、刃を細い肉に力いっぱい押し込んだ。


ブツリという嫌な音がして、皮、肉、血管、筋が断裂する。


何度も、何度も行ってきた行為。


もう慣れてしまった熱い感触。


血がたちまちあふれ出す。


意識が段々と薄れていく。


「やだ……やだよ……」


彼女はカミソリを取り落としながら、火が落ち着き始めた周囲を見て狼狽した。


そして腕から血を流しつつ、頭を抑える。


「やだ……もう起きたくない……起きたくない!」


火が段々と消えていく。


まるで、テープを逆再生するかのように。


理緒はその場にうずくまり、そして絶叫した。



理緒は目を開いた。


そこは、いつもの変わり映えがしない病室の中だった。


明るい照明。


そして自分を囲んでいる機器と点滴台。


点滴を刺され過ぎて、肘の内側が真紫になっている。


「もう駄目かもしれない」


カーテンの奥から、圭介の声が聞こえた。


ああ、私のことを言っているんだなと理緒は、ぼんやりとした思考の奥でそう思った。


「マインドスイーパーの適正がなかったと考えるしかない。スカイフィッシュに打ち克つ力が、彼女にはない」


「だが、見捨てるにはまだ早すぎる」


大河内の声も聞こえた。


圭介はそれを鼻で笑い、押し殺した声で言った。


「使い物にならない道具に興味はない。お前が欲しいんなら、やるよ」


「大概にしろよ、高畑!」


椅子を蹴立てて大河内が立ち上がる。


「今の言葉は聞かなかったことにする。最後まで責任を持て! お前が原因なんだぞ!」


「声を荒げると、また起きるぞ」


「……ッ!」


歯噛みした大河内が、落ち着きなく部屋の中を歩き回る。


そこで、聞き知らない女性の、ゆったりとした声が聞こえた。


「喧嘩をしている場合? お二人とも、少し休んだ方がいいわ」


「ジュリアさん……」


大河内がそう言って深くため息をつく。


「……その通りだ。お見苦しいところを見せてしまった」


「あなた達がここでいくら喧嘩をしても、患者が良くなるわけではないわ」


ゆったりとした声だった。


患者?


それを聞いて、理緒は少し疑問に思ってから、すぐに合点がいった。


そうだ。


私は今、患者なんだ。


「自殺未遂十一回。夢の中でも何度も死んでいるようね。自殺病の発症を確認。もうこの子の精神はボロボロよ。早々に手を打たなきゃ」


「ミイラ取りがミイラになるとは、まさにこのことだな」


圭介の声に、大河内の影が圭介の影の胸倉を掴み上げたのが、理緒の目に見えた。


「お前があの時に、あんなことを教えなければ……」


「お二人とも、出て行ってくださる?」


ゆったりと、ジュリアと呼ばれた女性がそう言う。


「もう起きているみたい。少し二人でお話をさせて?」


背の低い女性の影が、こちらに近づいてくる。


カーテンが開き、その隙間から、長い金髪を腰まで垂らした女の人が中を覗き込んだ。


二十代前半だろうか。


理緒と同じくらいの背丈だが、妙に落ち着いた雰囲気をかもしだしている。


白衣だ。


青い瞳。日本人ではないらしい。


目が大きく、人形のような女性だった。


彼女――ジュリアは落ち窪んだ目をした理緒と視線が合うと、ニッコリと微笑んで見せた。


大河内と圭介が黙って病室を出て行くのが見える。


ジュリアはカーテンの中に入ってくると、理緒の隣の椅子に腰を下ろした。


体を起こそうとした理緒に、そのままでいいとジェスチャーで言ってから、彼女は口を開いた。


「私はジュリア・エドシニア。あなたを助けるために来た、マインドスイーパー治療班の一人よ」


「治療班……?」


理緒はかすれた声でそう言った。


「私、もう治療なんていい……いいです……」


泣き出しそうな顔でそう言って、理緒は血のにじむ左腕の包帯を見た。


ぐるぐる巻きにされている。


全て、ここ数日で切ったものだ。


ガラスを割って刺したこともある。


鏡を割って切り裂いたこともある。


鎮痛剤を投与されているので、あまり痛みは感じなかったが、所狭しと縫われている腕は、ジクジクと異様な感触を与えた。


衝動的に。


いや、そう言ってはおかしいかもしれない。


実に自然に。


理緒は、生きることがとてもつらくなった。


理由という理由はないのかもしれない。


ただ、つらかった。


その原因を考えるまでの余裕は、彼女にはなかった。


大河内をはじめ、周囲は自殺病の発症だといった。


どこから感染したのか、何が病因なのかは分からない。


心当たりが多すぎて、どうしようもなかったのだ。


汀が意識を失ってから、僅か三日で、理緒の心と体は、既に衰弱してボロボロになっていた。


ジュリアは理緒の手を握り、優しく語りかけた。


「死にたいの?」


「はい……」


頷いて、理緒は薄く目に涙を溜めながら続けた。


「夢の中に……あの人が出てくるんです。でも何もしない……私が死ぬのを待ってるんです……私もう疲れました。もう駄目……殺してください……お願いします……もう私を、これ以上苦しめないでください……」


「それはただの夢よ。現実ではないわ」


「現実か夢かなんて……誰も分からないじゃないですか。私、今ここにいることが現実かどうかも……分からなくなってきました」


理緒の目から涙が流れる。


「分からない……分からないんです……」


両手で顔を覆い、涙を流す理緒の頭を撫で、ジュリアは続けた。


「よく聞いて。あなたは自殺病にかかっているわ。無理なダイブを繰り返したせいで、スカイフィッシュ症候群に感染したの。即急に治療をしなければ、命が危ない」


「治療なんて……いいです……」


「生きる気力を、患者が持たないといけないわ。しっかりして」


「本当にいいんです……もう許してください……」


ひく、ひくと泣いて、理緒は体を脱力させた。


「薬なんて効かない……私もう眠れない……」


「あなたを絶対に助ける。そのためには、あなたの協力が必要なの」


ジュリアはそう言って、ベッドの上に腰を移すと、理緒の頭を抱いて引き寄せた。


久しぶりの人間の感触に、理緒が小さく息を吐く。


「…………」


「落ち着いた? あなたはまだ戻れる。戻れるうちに、帰って来なさい。私達が待ってるから……」


「私……帰れる……? 戻れる……?」


「ええ。あなたは帰れる。お家に、帰れるわ」


「あなたに……何が分かるんですか……」


落胆した声で、理緒は小さく呟いた。


言葉を飲み込んだジュリアに、彼女はかすれた声で続けた。


「私のお家は、赤十字病院です……お父さんもお母さんも死にました。親戚もいません……私は、一人ぼっちなんです……」


「そうだったの……」


ジュリアは強く理緒の顔を抱きしめると、ささやくように言った。


「でも、絶対に助ける。諦めないで。あなたも、あなたの友達も、私達が助けるから」


「私の……友達……」


光がなかった理緒の目に、少しだけ活力が戻った。


「私……友達がいる……」


「そう、あなたには友達がいるでしょう? 大事な友達。あなたが、命がけで守った友達がいる。見捨てて逃げることは出来ないんじゃなかったの? 聞いたわ。あなたは優しい子なのね……」


「ジュリアさん、私……」


理緒はジュリアの胸にしがみついて、涙を流した。


「汀ちゃんに会いたい……」



「……以上が今回のプランです。S級のスカイフィッシュに対抗するために、私もダイブに同席します」


ジュリアがそう言って、息をつく。


元老院と赤十字病院の医師達が集まっている、薄暗い会議室の中を、彼女は見回した。


後ろの方の席に圭介はいた。


興味がなさそうに足を組んで、ボールペンをカチカチと鳴らしている。


前の席に座っていた大河内が、咳をしてから、かすれた声で言った。


「……テロリストの進入も考えられる。安易なダイブは危険を招く」


「しかし即急に救わないと……少なくとも片平理緒さんの命は、長く見積もっても、あと三日もつかもたないかです」


それを聞いて、医師達がざわめく。


「……沢山のマインドスイーパーがここで命を落としている。病院の見解としては、マインドスイープに対してかなり慎重にならざるをえないことは理解してもらいたい」


赤十字病院の医師の一人がそう言うと、同調するざわめきが広がった。


ジュリアは頭を抑え、軽く髪を手で梳いてから圭介を見た。


圭介は一瞬彼女と視線を合わせたが、すぐに視線をそらして横を向いた。


彼を睨んでから、ジュリアは元老院の方を向いた。


「ご老人方はどうお考えですか?」


問いかけられた元老院の老人の一人が、少し考えてから重苦しく口を開いた。


「……高畑汀と、片平理緒を失うのは、今の日本の医療業界にとって、重大な損失だ。できることなら……いや、確実に二人は治療しなければいけない」


「ありがとうございます」


ジュリアが頭を下げる。


「そのために私は、日本に来ました」


「しかし……テロリストの件が表立ち、今の日本ではマインドスイープを行える医師が、治療を自粛する流れになってきている。聞けば、テロリストの狙いは、高畑汀だそうではないか、なぁ高畑医師」


部屋の隅に立って、タバコを吸っていた初老の男性が口を挟んだ。


深く掘りが入った顔に、くぼんだ目をしている。表情が読めない男性だった。


圭介は彼をちらりと見ると、資料をテーブルの上に投げてから口を開いた。


「その件に関しては、お話しする義理がございません」


「高畑医師! それはあまりにも粗暴がすぎないか!」


赤十字病院の医師の一人が、顔を真っ赤にして立ち上がり、怒鳴った。


「あなたの……いや、お前のせいで、何人のマインドスイーパーが死んだと思っている! いくら元老院所属とはいっても、これ以上の協力は我々としても……」


「静粛に」


大河内が低い声を発する。


彼が手を叩いたのを聞いて、医師達は圭介を睨みつつ、歯軋りしながら口をつぐんだ。


元老院に頭を下げ、大河内は続けた。


「お見苦しいところをお見せしました。ご老人方、どうか気分を悪くされないでいただきたい」


「良い。この度の一件に関しては、こちらにも非がある」


元老院の老人がそう言う。


圭介は興味がなさそうに、軽くあくびをして、椅子に肘をついた。


「……議題を戻してもよろしいでしょうか?」


ジュリアが周りを見回し、おっとりとした声で続けた。


「高畑汀さんの精神中核を持っているのが、片平理緒さんである以上、汀さんを助けるためには、理緒さんをまず救わなければいけません」


「何……?」


そこで初めて、圭介が狼狽したような声を発した。


彼はジュリアを見て、噛み砕くように言った。


「理緒ちゃんが、汀の精神中核を持っているのか……?」


「先ほど本人から聞きました。ある程度落ち着かせて、断片的に聞いた内容ですが、間違いないと思われます」


「そんな重要なことを、何故今まで黙っていた……?」


押し殺した声で呟くように言った圭介を冷めた目で見て、ジュリアは続けた。


「目の色が変わりましたね、ドクター高畑」


「質問に答えて欲しい」


「聞かれなかったから答えなかったまでです。あなたは、あの子達に信用されていないのでは?」


公の場で嘲笑にも等しい侮辱を受け、圭介は軽く歯を噛んだ。


そして背もたれに体を預け、足を組みなおしてから口を開く。


「それは、そちらのご想像にお任せしましょう。議論の余地はありません」


「……そうですね。軽率な発言でした。とにかく、汀さんの精神中核を、理緒さんの精神内から抜き取って、元に戻さなければいけません。その施術を行いつつ、スカイフィッシュの相手をしなければいけません。私のチームが力を当てますが、卓越した技量を持つマインドスイーパーの力が必要です」


彼女がそう言うと、医師達の間にざわめきが広がった。


一人の医師が声を荒げた。


「私は協力を辞退させていただきます。これ以上、ラボから人員を消すわけにはいかない」


それに同調する人々の声を聞いて、ジュリアは手を上げて声を制止した。


「ドクター高畑、協力していただけますね?」


含みをこめて聞かれ、圭介は一瞬視線を揺らがせたが、狼狽したように彼女に言った。


「……私が?」


「はい。元特A級能力者、対スカイフィッシュ戦闘用マインドスイーパーの、あなたの力が必要です」


医師達が目を見開く。


元老院の老人達は目をつぶり、息をついた。


くっくと笑うタバコの男を横目に、圭介は苦々しげに言った。


「…………どこからその情報を入手したのかは分からないが、私はもうマインドスイープを止めました。ダイブは無理です」


「あの子達を、助けたくはないんですか?」


ジュリアに問いかけられ、圭介は発しかけていた言葉を飲み込んだ。


そして、しばらくして頭を抑え、目を隠す。


まるで、殺気を込めた視線を隠すように。


圭介はメガネをテーブルの上に置き、深呼吸してからジュリアに言った。


「……分かりました。ただし、ダイブの時間は五分とさせていただきます」


「ご協力感謝いたします。それでは今回のダイブの説明を始めさせていただきます」


ジュリアが頭を下げ、ホワイトボードを手で示した。


大河内が横目で圭介を見る。


圭介は爪を噛みながら、瞳孔が半ば開いた目でジュリアを睨んでいた。



薬で眠らせている理緒を囲むようにして、ヘッドセットに機器を接続したマインドスイーパー達が椅子に腰掛けていた。


ジュリアと圭介の頭にも接続がしてある。


暗い表情をしている圭介をちらりと見てから、計器を操作している大河内が口を開いた。


「第一段階のダイブは、時間を十分に設定します。いいですね、ジュリア女史」


問いかけられ、ジュリアが頷いた。


「時間が600秒を突破しましたら、何が起こっても強制的に回線を遮断してください。たとえ、この中の誰が帰還不能になってもです」


機器が接続されているマインドスイーパーは、黒人や西洋の人間など、いろいろな人種が混ざっているが、一様に二十代前半から後半の者達だった。


「目的はスカイフィッシュの排除。精神分裂を防ぐことです。また、外部からのハッキングが考えられます。防御手段を持たないので、スカイフィッシュ共々、この機会に駆逐します」


「分かりました。幸運を祈ります」


ガラス張りの部屋の向こう側には、沢山の医師達が腕組みをしながらこちらを見ている。


タバコを吸っている男も、無機質な目で圭介を見ていた。


「高畑、いけるのか?」


大河内に小声で問いかけられ、圭介は鼻を鳴らして、自嘲気味に笑った。


「さてな」


「さてな……って……お前、遊びではないんだぞ」


「また俺をあそこに送り込むのか。鬼畜共め」


くっくと笑い、圭介は大声を上げた。


「ダイブを開始してください!」


その右手が、かすかに震えている。


圭介は左腕でそれを押さえ込むと、大河内を見てニヤリとした。


「やるよ、俺は。お前みたいな役立たずとは違うからな」



後編に続く。



バックナンバーは「こちら 」から!!



 ドラゴンクエスト10オンライン・攻略ブログ  にほんブログ村 ゲームブログ ドラクエシリーズへ

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

みけねこさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。