ぽやぽやエブリデイ

ドラクエ10などのWeb世界で、世知辛い世の中を憂い

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ミソスープの具は豆腐とワカメ!!

特撮やアニメの歌が好きです。スライム状のものは嫌いです。


テーマ:

第12話 スカイフィッシュ 前編 」の続きです。



注:この小説は18禁です。現実と空想の区別がつかない方にはおすすめしません。


バックナンバーは「こちら 」から!!



マインドスイーパー


……精神掃除士(患者の精神疾患を主とした自殺病治療の特殊能力を持つ医師の総称)




12.スカイフィッシュ 後編



肩を抱いて震えている理緒に近づき、圭介は彼女に温かいココアの缶を渡した。


「少しは口に入れたほうがいい」


そう言われて、缶を受け取り、プルトップを開けようとするが、理緒はそこでそれを取り落とした。


圭介が息をついて缶を拾い上げる。


「すまなかった。テロリストをこっちで抑えることが出来なかった。大損害だ」


「そんがい……」


理緒はそう言って、隣で鼻にチューブを入れられ、沢山の点滴台に囲まれている汀を見た。


「高畑先生はどうしてそうなんですか……汀ちゃんが、夢の中で殺されちゃったんですよ……」


理緒の言葉には覇気がない。


彼女は椅子の上で膝を抱えて、頭を膝にうずめてから呟いた。


「もうやだ……もうやだよ……」


「…………」


沈黙した圭介の後ろから、そこで聞き知った声がした。


「理緒ちゃん、無事だったか……!」


顔を上げた理緒に、看護士に支えられた大河内の姿が映った。


「大河内先生……!」


思わず椅子から降り、彼女は大河内に近づいた。


「起き上がって大丈夫なんですか? とっても心配したんですよ……!」


「もう大丈夫だ。多少声がかすれているがね……」


苦しそうにそう言い、大河内は、椅子に座ってココアの缶を開けて、中身を喉に流し込んだ圭介の胸倉を掴み上げた。


「お前……」


「先生、お体に触ります!」


看護士が慌ててそれを止める。


圭介は、しかし大河内に掴み上げられたまま、深くため息をついた。


「離してくれないか? 一度に三十人のマインドジャックをして、今尋常じゃないほど疲れてるんだ。これにこの失態だ。お前の相手をしている気分じゃない」


「この……外道め……!」


大河内が看護士を振り払い、圭介の頬に拳を叩き込んだ。


そして激しく咳をして床に崩れ落ちる。


殴られた圭介は、飛んだメガネを拾い上げると、頬をさすって起き上がった。


そして無表情のまま、固まっている理緒を見る。


「……今日はここに泊まっていきなさい。君の分の病室を用意させる。大河内も、部屋に戻った方がいい」


「高畑先生……!」


理緒はそこで圭介に言った。


「何だ?」


「訳が分からないんです……ちゃんと説明してくれませんか……?」


おどおどとそう聞いた彼女に、圭介は向き直ってから答えた。


「そんな義理はないね」


「高畑、卑怯だぞ……!」


大河内が肩を怒らせながら立ち上がる。


そして汀を手で指した。


「お前がいながら、どうしてここまで追い込んだ……! 罠にかけるつもりが、逆に撃退されるとは恐れ入ったよ! 元特A級スイーパーとは思えないな!」


それを聞いて、理緒は呆然として圭介を見た。


「元……特A級……? 汀ちゃんと同じ……」


圭介は眉をひそめて立ち、大河内に向き直った。


そして白衣のポケットに手を突っ込んで彼を睨む。


「部外者の前でその話をするな」


部外者呼ばわりされ、理緒が歯を噛んで口を挟もうと声を出そうとした。


それを手で制止し、大河内は息をつきながら圭介を睨んだ。


「何人犠牲にした? 何人の子供を殺した!」


「やっていることはお前となんら変わりはない。俺はその確立を上げただけだ」


「何だと!」


「大河内先生、傷に触ります!」


理緒が青くなって、殴りかかろうとした大河内を止める。


「誰がやってもこの結果になっていただろう。ナンバーXは、『変異亜種』だ」


圭介が淡々とそう言ったのを聞いて、大河内は手を止めた。


「何……?」


「俺達じゃ止められない。同じ変異亜種が必要だ。坂月のような」


「ふざけるな! スカイフィッシュへの人体変異なんて、もう起こらないと、当の坂月がそう言っていたでは……」


「その坂月はどこにいる?」


口の端を歪めて笑い、圭介は目を細めて大河内を見た。


「あの男を信用したいお前の気持ちは分かるが、無駄だと何回も言っただろう。人間はスカイフィッシュに変わる。それが、あの正体不明の物体の正体だ」


「お二人とも……一体何の話をしているんですか……?」


理緒が青くなってそう問いかけた。


「坂月先生が関わっているんですか? 私にも何が起きているのか、説明してください!」


悲鳴のような声を上げた理緒を、淡々とした目で圭介は見た。


そして椅子に腰を下ろす。


「……いいだろう。教えるよ。大河内も座った方がいい。死ぬぞ」


看護士に促され、大河内は息をつきながら、汀の脇に腰を下ろした。


圭介は看護士に出て行くよう、目で追い出すと、扉が閉まったのを確認して、理緒を見た。


「さて、何から話せばいい?」


唐突に問いかけられ、理緒は口ごもって下を向いた。


「え……あの……」


「さっき、俺もマインドスイーパーだったのかと聞いたな。その通りだ。大河内も、坂月もマインドスイーパーだった。それどころじゃない。今の赤十字病院を動かしている医者のほとんどが、マインドスイーパーの『生き残り』だ」


「生き残り……?」


「ああ」


テーブルに置いた、ぬるくなったココアを喉に流し込んで、圭介は息をついた。


「生き残ってしまった者達の集まりさ。赤十字ってのは」


「お前は……あの時に全滅していれば良かったとでも言うつもりか……?」


大河内が押し殺した声を発する。


圭介は一瞬沈黙してから、大河内を見ずに淡々と言った。


「そうすれば、自殺病がここまで拡大することもなかった」


「…………」


大河内が言い返そうとして、しかし失敗して深く息を吐く。


そして彼は、頭を手で抑えた。


「図星を突かれたか? だから、俺はお前達を許さない」


圭介は裂けそうなほど口を広げて、笑った。


その顔に理緒がゾッとする。


「許せるか? 許せるわけがない。俺は、お前達を、絶対に、許さない」


舐めるようにそう呟いて、圭介はココアを喉に流し込み、クックと笑った。


「理緒ちゃんが遭遇したのは、紛れもないスカイフィッシュだ。もう既に人間じゃない」


「ど……どういうことですか?」


「スカイフィッシュは、元は人間なんだよ」


圭介はそう言って、理緒を見た。


「そもそも君は、あの得体の知れない化け物を、何だと思う?」


「何だとって……汀ちゃんは、トラウマの投影だって言ってましたけれど……」


「そういう認識なのか。だからやられるんだ」


圭介は小さくため息をついて、缶をテーブルに置いた。


「スカイフィッシュとは、DIDで分裂した人間の精神だ。分かるかい? マインドスイーパーは既に、DID(精神分裂病)にかかっている患者なんだよ」


「え……?」


呆然とした理緒に、抑揚なく圭介は続けた。


「君のような特殊な温室育ちとは、汀達が違うことは、いい加減理解できているだろう。マインドスイーパーは他人のトラウマに接触すると、それだけ要因不明のトラウマ……つまり、データで言うとデフラグし忘れたエラーのようなものを心に蓄積させていく」


「高畑……それは、実証されていない仮説だ」


「だが現実だ」


椅子をキィ、と揺らして、圭介は続けた。


「蓄積されたエラーは、されればされるほど強力なトラウマとなって心を侵食する。だから、強力なマインドスイーパーの夢に出てくるスカイフィッシュほど、夢の持ち主がかなうわけはないんだ。自分自身の恐怖心が分裂した、と言えばより分かりやすいかな」


「じゃあ……私が汀ちゃんの夢の中で見た坂月先生は……」


理緒がそう言うと、圭介は表情を暗くして声を遮った。


「それは君の見間違いだろう」


「でも、確かに私……」


「坂月の分身は俺が殺した。この手で確かに破壊したんだ」


そこで言葉をとめた圭介から大河内に、理緒は視線をシフトさせた。


大河内も俯いて、苦そうな顔をしている。


「……あの……じゃあ、工藤さん……」


「工藤?」


「あ、いえ……」


口ごもってから理緒は言った。


「ナンバーXという人は、どうして夢の中で自由に、スカイフィッシュになれるんですか?」


「精神が分裂しないまま、トラウマに侵食されたパターンだ。やがてはトラウマに食われて死ぬだろう。だが、それだけに力は強大だ。ありとあらゆる恐怖心の塊なわけだからな。夢の世界で、その変異亜種にかなうわけがない」


「じゃ……じゃあ、またハッキングされたら……」


「防ぐ手はないな」


圭介が息をついて、立ち上がった。


「そろそろいいかい? 俺も大分疲れた。休ませてもらいたい」


「高畑先生が操っていた、マインドスイーパーの子達はどうなったんですか……?」


恐る恐る理緒がそう聞く。


圭介は、ゾッとするほどの無表情で理緒を見下ろし、そして言った。


「全員、さっき息を引き取ったよ」


「……!」


言葉にならない悲鳴を何とか飲み込んだ理緒に、圭介は続けた。


「スカイフィッシュにやられた傷は治りにくい。それは、トラウマを直接マインドスイーパーの精神中核に注入されるからだ。毒のようなものだな。だから、スカイフィッシュに殺された人間は、もう元には戻れない」

「じゃあ……汀ちゃんは……」


「汀は、君の話によるとスカイフィッシュの変異亜種の攻撃でやられたわけじゃないんだろう? 連れていた女の子が撃ち殺したらしいな。なら大丈夫だ。もうじき目を覚ますだろう」


「高畑先生! それでいいんですか!」


理緒が叫ぶ。


圭介は不思議そうに首を傾げた。


「何がだい?」


「沢山死にました! 汀ちゃんも酷い目に遭いました! 私もです! 患者さんも殺されてしまいました! 先生はそれでいいんですか? それでいいんですか!」


「いいわけがないだろう」


淡々と、圭介は無表情でそう返した。


「君はそれでいいのかい?」


逆に問いかけられ、理緒は肩を抱いて小さく震えた。


「私は……」


「…………」


「もう、やだ……」


「…………所詮子供か」


「馬鹿にしないでください! 高畑先生に、私の気持ちなんて分からないです!」


噛み付いた理緒を、ポケットに手を入れて見下ろし、圭介はメガネの奥の冷たい瞳で言った。


「ああ分からないな。道具に感情なんてないからな」


「道具……?」


理緒は顔を青くして立ち上がった。


「私は道具じゃない!」


「じゃあ何だ?」


「私は……私は人間です! 汀ちゃんも……人間です! 私達は、あなたと同じ人間です!」


「違うな。道具だ」


鼻でそれを笑い、圭介は続けた。


「俺達の庇護がなければ何も出来ない餓鬼の分際でよく吼える。世間も、常識も、何も分からないくせによく言う。俺達がいなければ何も出来ない存在のくせに、言うことだけは一丁前。要求することだけは一丁前」


「そんな……酷い……」


「酷くなんてないさ。ただ、そんな赤ん坊同然の君達が、出来ることはダイブだ。だがそれさえも、俺達の補助がなければ出来ない。汀に至っては、俺の介護がなければ生きていくことさえも出来ない。君達は人間になる前、それ以前に、道具なんだよ。まだ君達は、人間にはなっていない」


圭介の暴論を、理緒は足を震わせながら、唇を強く噛んで聞いていた。


大河内がそこで歯軋りして立ち上がる。


「いい加減にしろよ……子供になんてことを……」


「だがそれが真実だ。『真実だった』だろ?」


肩をすくめた圭介から視線を離し、理緒はすがるように大河内に聞いた。


「大河内先生、何とか言ってください! この人……この人おかしいです!」


「…………」


「大河内先生!」


「……理緒ちゃん、今日はもう休むんだ。高畑と議論するのは時間の無駄だ」


「先生まで……そんな……」


「高畑、お前の気持ちは分かるが、理緒ちゃんに聞かせるべき話じゃない。子供を追い詰めるな! 同じ徹を踏みたいのか!」


「その徹を踏んだ俺から言わせてもらえれば、擬似愛情ごっこ程あくびが出るものはないね」


また鼻で笑い、圭介はよろよろしながら病室を出て行った。


黙り込んだ大河内に、すがるように理緒は言った。


「同じ徹って……何ですか? 高畑先生はおかしいです! 大河内先生、何とか言ってください!」


「…………」


「愛情ごっこって……そんな、嘘ですよね? そんなのあんまりです……酷すぎます!」


「いいか、よく聞くんだ理緒ちゃん」


大河内はそう言うと、理緒に向き直った。


そして低い声で言う。


「君は、これ以上汀ちゃんと高畑に関わらない方がいい。赤十字に、私から申請しておこう。戻っておいで」


「質問に答えてください!」


「興奮しないほうがいい。お互い体力もかなり低下している」


理緒をなだめてから、大河内は続けた。


「今は元老院の方が力が強いが、君の意思が重要だ。赤十字も、人の意思を曲げることは出来ない。もとはといえば、この二人と君は他人なんだ。入れ込む必要はない」


「先生まで……そんな……」


愕然として理緒は、両手で顔を覆った。


「今更、汀ちゃんを見捨てることはできません……私、一人で逃げるなんてことできません……」


「君は優しいからな。だが、それとこれとは別の問題だ」


大河内はか細い理緒の声を打ち消し、続けた。


「逃げではない。自分の身を守るんだ。ソフィーも、高畑の計画で手痛くやられてしまっている。沢山の命も失った。安全な場所に避難するんだ。自分から、最も危ない場所に飛び込んでいくことはない」


大河内は息をついて立ち上がり、壁に寄りかかった。


「よく考えて決めてくれ。このままだと、君まで高畑に殺される」


ソフィーと同じ台詞を口にして、大河内は病室の出入り口に手をかけた。


「とにかく、私が来たからには高畑の好きにはさせない。今のところは落ち着いて、ゆっくり休みなさい」


「先生……」


理緒は顔を上げ、そして両目から段々と涙をこぼし始めた。


そして汀の手を握り、呟くように聞く。


「汀ちゃんは……ソフィーさんは、目を覚ますんですか……?」


「ソフィーは先ほど目を覚ましたと聞いたよ。面会できるほど回復はしていないが……汀ちゃんは、しばらくの間無理だろう」


「無理……?」


「精神が殺されると、肉体も一時的に仮死状態になる。それを投薬で無理やり生きながらえさせたのが、今の汀ちゃんの状態だ。頭の中でトラウマの整理がついて、ちゃんと現実が現実だと認識できるようになるまで、相応の時間がかかる」


それを聞いて、理緒はあることに気がついて青くなった。


「あの……」


「何だい?」


「あのテロリストの子……ナンバーXさんは、汀ちゃんのことを狙ってました。でも、言ってたんです。私の夢座標も欲しいって……」


それを聞いて大河内は顔色を変えた。


「何だって……?」


「私も……狙われているんですか? 私の夢の中に、あの人たち、侵入してくる可能性もあるってことですか?」


「…………」


「先生!」


「……君は私達が全力をもって守る。安心して、ゆっくり休みなさ……」


「休めないです! 私の夢の中にもスカイフィッシュが出てきたら、私どうすればいいんですか? 汀ちゃんも……マインドスイーパーの子達もいない……小白ちゃんも私の夢には入ってこない……私、一人ぼっちじゃ……」


そこで理緒は、圭介がソフィーのことを


『眠れないだろう』


とせせら笑ったことを思い出した。


大河内は少し考えた後


「少し強いが……夢を見なくする薬ならある。汀ちゃんにも投与している薬だ。服用しすぎなければ副作用はない。それを急いで処方しよう」


と言った。


「怖い……怖いです……」


肩を抱いて震えだした理緒の頭を撫で、大河内は息をついた。


「君がちゃんと眠れるまで、私がそばについていてあげよう。大丈夫だ。マインドスイーパーは誰もが経験する。少し待っていなさい。すぐに戻ってくるから」


そう言って大河内は、足を引きずりながら部屋を出て行った。


理緒が、椅子の上で足を抱いて小さくなる。


しばらくして、彼女の泣き声が静かな部屋の中に響いた。



第13話に続く。



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