ぽやぽやエブリデイ

ドラクエ10などのWeb世界で、世知辛い世の中を憂い

それでいながら眠気には勝てない毎日を繰り返していきます。

ミソスープの具は豆腐とワカメ!!

特撮やアニメの歌が好きです。スライム状のものは嫌いです。


テーマ:

第11話 晴れた空に浮かぶ 前編 」の続きです。



注:この小説は18禁です。現実と空想の区別がつかない方にはおすすめしません。


バックナンバーは「こちら 」から!!



マインドスイーパー


……精神掃除士(患者の精神疾患を主とした自殺病治療の特殊能力を持つ医師の総称)




11.晴れた空に浮かぶ 後編



その名前を聞いた途端、マイクの向こう側に凄まじい緊張感が走った。


スカイフィッシュはボロボロで血まみれの服のまま、チェーンソーを肩に担いで、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。


圭介がそこで大声を上げた。


『汀がいるんだな? 脱出しろ! 訓練は中止だ!』


「わ……わかりました!」


理緒が悲鳴を返し、汀の手を握る。


「大丈夫だよ。大丈夫、私がいるから……」


慰めにもならないようなか細い声でそう言って、理緒は這いずって家の外に汀を誘導した。


小白がソフィーを離して、うなり声を上げた。


スカイフィッシュがこちらに、ものすごい勢いで走ってくるところだった。


理緒は無我夢中でポケットに手を突っ込んだ。


そこで、カサリという音がして、何か紙のようなものが手に当たる。


それは、一貴と名乗った少年が、彼女に渡した、千円札で折られた鶴だった。


理緒は必死の形相で、それを掴んで、自分に向けてチェーンソーを振り下ろしたスカイフィッシュに向けて投げつけた。


閃光弾を爆発させたほどの、衝撃と爆音、そして光が周囲を襲った。


汀も理緒も、小白も、その場の全員が吹き飛ばされて家の庭に転がる。


理緒は泥まみれになりながら、砂場の上で体を起こした。


そのかすむ視界に、右半身が吹き飛んで、奇妙なモチーフのようになってグラグラと揺れて立っているスカイフィッシュがうつる。


「うっ……」


その姿を見て、理緒は猛烈な吐き気を催し、その場に盛大に胃の中身をぶちまけた。


スカイフィッシュはゆっくりと、力なく地面に転がった。


その服、肉、チェーンソーが溶けて、黒い水になって広がっていく。


骨だけになったスカイフィッシュが、徐々に砂になり消えていく。


それに伴い、家の火も消え、青空が顔を出した。


『ステータスが正常に戻った……! 全員強制遮断するぞ!』


圭介が怒鳴る。


その声を最後に、理緒の意識はブラックアウトした。



「一体……何が起こったんですか……?」


顔色を真っ青にして、理緒は点滴を受けながら、椅子に背中を丸めて座った。


圭介が息をついて、腕組みをして壁に寄りかかる。


「通常のスカイフィッシュなら撃退できると思った。だが、今回の奴は『変種』だ。ソフィーがやられたのも納得がいく」


「納得……?」


理緒は、隣のベッドで、呼吸器を取り付けられて、点滴台に囲まれて眠っているソフィーを見て、押し殺した声を発した。


SPの人たちが、入り口と窓を警護している。


「私たちをあんなところに送り込んでおいて、よく無表情でそういうことが言えますね」


理緒にしては珍しく、怒りを前面に押し出した口調だった。


圭介は押し黙ると、理緒の隣の車椅子でボーッとしている汀に目をやった。


「何とか言ったらどうだ、汀。お前の夢に変種が出てくるなんて、俺は初めて聞いたぞ」


「……言ったことないもん」


汀はかすれた声でそう言って、クマの浮いた目を圭介に向けた。

「勝手に私の夢の中にダイブしてきて、そういうこと言われるのって、結構心外だな」


「…………」


圭介は自分を睨んでいる理緒を見てから、息をついて肩をすくめた。


「……参ったな。完全に俺が悪者か」


「小白がいなきゃみんな死んでたよ」


汀が淡々とそう言って、膝の上で丸くなっている小白を撫でる。


「だから、私の夢に関わるのはやめようって言ったのに」


「高畑先生」


そこで理緒が口を開いた。


「どうしてスカイフィッシュっていうあのトラウマは、坂月先生の顔をしていたんですか?」


「さかづき?」


汀がきょとんとしてそれを聞く。


「汀ちゃん、知らないの……?」


怪訝そうに理緒が聞くと、汀は頷いて言った。


「誰?」


「赤十字病院のお医者さん。二年位前に、行方不明になったって聞いたけど……いい先生だったよ」


「見間違いだろう。混乱していたんだろ?」


圭介はそう言って、資料を持ち上げ、脇に挟んだ。


そして病室の外で溜まっている医師達を見回して、口を開いた。


「大丈夫です。二時間後にダイブを実行します」


「え……」


理緒と汀が目を見開いて、唖然とする。


理緒が素っ頓狂な声を上げた。


「二時間後って……ソフィーさんはショックで目を覚まさないし、私達、何のレッスンも出来てないです! それにこんな状態で……」


「ソフィーにやり方を教えてもらって、何回か変質を成功させたんだろう?」


圭介はそう言って、ポケットから出したものを理緒に放って渡した。


それは、千円札で折られた鶴だった。


「あ……これ……」


理緒がそれを受け取って、僅かに頬を赤くする。


「なら出来る。レッスンは無事に終了してるよ」


「出来るって……何の根拠があって……」


噛み付く理緒に、圭介は軽く笑ってから言った。


「経験則だよ」


医師達を連れて歩き去った圭介を見送り、理緒は深くため息をついて、頭をガシガシと、苛立ったように掻いた。


「高畑先生……別人みたい……」


呟くと、汀は小白を撫でながら、何でもないことのように言った。


「そう? 圭介はあんな感じだよ。本当は」


「本当は?」


「うん。あれが本性だと思う」


淡々とそう言って、汀は大して気にしていないのか、眠っているソフィーを一瞥した。


「私の夢なんかに入ってくるから……」


「汀ちゃん教えて。スカイフィッシュって何なの? あんなトラウマ、聞いたことも見たこともないです。どうして汀ちゃん達は、あれをあんなに怖がるの?」


聞かれて、汀は口をつぐんだ。


しばらくの沈黙の後、汀は呟くように言った。


「理緒ちゃんは、まだ毒状態じゃないから」


「どういうことですか?」


「毒状態。ゲームとかでよくあるでしょ? 毒になると、HPが段々減っていくの」


理緒と目を合わせないようにしながら、汀は小さな声で続けた。


「私も、この子も、もう『毒状態』なんだ」


「言っている意味が……分からないです」


「つまりね。マインドスイープって、すればするほど、マインドスイーパーのトラウマを広げるの。それは毒みたいに心に広がって、侵食して、成長していくの。スカイフィッシュはその投影。トラウマが強ければ強いほど、スカイフィッシュも強くなる。だから、私の夢に出てくるスカイフィッシュになんて、誰が何してもかなうわけがないんだ」


汀はそこまで言うと、理緒が持っている千円札の鶴を見て、怪訝そうに聞いた。


「……理緒ちゃん、何したの? それ、誰にもらったの?」


理緒は、そこで一貴の顔を思い出し、ハッとした。


そしてポケットをまさぐる。


「あれ……おかしいな。紙をもらったはずなんだけど……」


「紙……?」


「うん。赤十字病院で。工藤一貴さんっていう、マインドスイーパーの男の子にもらったの。汀ちゃんに渡してって言われたんですけど……」


「どんな紙?」


「ゼロとか一とか、沢山書いてありました」


「……夢座標だ」


汀は、そこでハッと顔色を変えた。


「多分圭介が持ってる。それ、多分夢座標だよ」


「夢座標?」


「マインドスイーパーが夢の中に入る時、座標軸を設定するの。その人、私と話したいことがあったんだ……」


そこまで言って、汀は理緒が言った名前を繰り返した。


「工藤……一貴……?」


「汀ちゃん?」


「いちたか……いっくん……?」


汀はそこで上体を起こし、理緒の手を掴んだ。


「理緒ちゃん。ダイブするよ」


「え……? で、でも私、夢の中で右足を切られちゃって、まだ上手く動かせなくて……」


「大丈夫。それより、もっと大変なことになるかもしれない。そうなる前に、その人のこと助けなきゃ」


汀はそう言って、歯を噛んだ。


「……圭介の思うとおりにはさせない……!」



理緒と汀は目を開いて、そして同時に短い悲鳴を上げた。


二人がギョッとしたのも無理はなかった。


ものすごい勢いで、落下していたのだった。


上空の雲の上に、彼女達はいた。


汀が落下速度で目を開くことも出来ず、手を広げて理緒の体を掴んで引き寄せる。


二人でもつれ合いながら落下する。


そこで、汀の肩にしがみついていた小白が、ボンッ、という音を立ててパラシュートのように膨らんだ。

それに減速され、二人は次第にゆっくりと落下していった。


しばらくして、ポスン、という音を立てて、二人が雲の上に着地する。


雲はまるで綿菓子のようで、きちんとした地面としての質感がある。


理緒は腰を抜かして、その場にしりもちをついて呆然としていた。


そして汀と顔を見合わせる。


『どうした? 状況を説明してくれ』


圭介にそう問いかけられ、汀はヘッドセットのスイッチを切って、脇に投げ捨てた。


それを見て理緒が慌てて口を開こうとして――汀の手に、口をふさがれる。


汀は理緒のヘッドセットも同じように雲の下に投げ捨てた。


「何するんですか! あれがないと、私達帰還できないですよ!」


「タイミングが分からないだけで、圭介が強制遮断すれば元に戻れるよ」


そう言って汀は、お尻を叩きながら立ち上がった。


「早くしなきゃ。この座標のはずだよ。じゃなきゃ、こんな場所にダイブして出てくるわけがない」


理緒は自分の右足を見た。


腱の部分がズキズキと傷む。ケロイドが醜く、足のかかとまでに広がっていた。


よろめきながら立ち上がり、理緒はしかしすぐに崩れ落ちた。


「駄目……立てない……」


「私に掴まって」


汀の手に掴まって立ち上がり、理緒は雲の下を見て気を失いそうになった。


町が広がっている。


数百メートル下に。


雲は形を変えながら風に流されていく。


小白が下を見てニャーと鳴く。


その頭を撫でて、汀は言った。


「本当なら、町の方にダイブして出るはずだったんだよ。それを、圭介が夢座標の位置をいじったから、こんなことになったんだ」


「ど……どうすればいいんですか? この人、普通の人で、トラウマとかがないらしいですから……」


「トラウマがない人間なんて、赤ん坊くらいだよ。そこをくすぐれば、すぐ煉獄に繋がる道は開くと思う。問題は……」


そこまで汀が言った時だった。


不意に晴れた空が曇り始め、分厚く寄り集まり始める。


そして、ところどころで光が上がった。


それが雷だ、と分かったのは、轟音が二人の耳を打った後だった。


足元の雲から、凄まじい勢いで、土砂降りのスコールが降り注ぎ始める。


上空は晴れているのに、足元はスコール。


不思議な感覚だ。


「何が……きゃぁ!」


また雷が近くで鳴り、理緒が肩をすくめる。


それを支えながら、汀は言った。


「ハッキングだ。この人の心の中に、誰か進入したんだよ。だからこの人の心が警鐘を鳴らしてるの」

「だ……誰が……」


「工藤……一貴……」


汀はそう言って、ゆっくりと振り返った。


「いっくん」


そう言って、数メートル離れた場所に立っていた、白髪の少年と目を合わせる。


いつの間に現れたのか、白髪の少年――一貴はニコニコしながら汀を見ていた。


それを見て、理緒がハッとしてから少し顔を赤くする。


「あなた……」


「やあ、片平さん。また会ったね」


理緒に興味がなさそうに手を上げてから、一貴は汀に向けて両手を広げた。


彼の隣には、赤毛の少女……岬が立っていた。


ポカンとして汀を見ている。


「思い出してくれたんだね! すっごく嬉しいよ、なぎさちゃん!」


「……残念だけど、私はあなたのことは何も知らない。でも……」


汀の脳裏に、笑顔で何かを差し出す、小さい頃の一貴の顔がフラッシュバックする。


「あなたが、いっくんね」


「うん! 良かった。そこまで分かってくれれば上等だよ。なぎさちゃん、僕は君を助けに来たんだ」


「助けに……?」


怪訝そうな顔をした汀に、一貴は続けた。


「僕らに、君達の基本夢座標の位置を教えて欲しいんだ。それで、こっちから、君達の頭の中にハッキングが出来る。だから……」


「話してる暇はないわ。『いっくん』、すぐにここを出て」


汀が、彼の声を打ち消してそう言う。


一貴は一瞬きょとんとした後、首を傾げた。


「どうして?」


「赤十字病院が、あなた達のハッキングを察知してる。これは罠よ」


「ねぇ……なぎさちゃん? 何も覚えてないの……?」


そこで、一貴の隣で、おずおずと岬が口を開いた。


汀は面倒臭そうに彼女を見て、言った。


「言ったでしょ。私は何も覚えてない。だから早くここから……」


「あぁ、もう遅いみたいだ。でも想定の範囲内だよ」


一貴がそう言って、ニッコリと笑った。


「なぎさちゃんは、絶対にそこから助け出す。だから、少しだけ待ってて」


彼はそう言って、足元の雲に手を突っ込んだ。


そして長大な日本刀を掴み出す。


「変質……? あんな簡単に……」


理緒が呆然として呟く。


そして彼女は、小さく悲鳴を上げた。


彼女達の周囲に、いつの間にか赤十字のマインドスイーパー達が立っていたからだった。


取り囲むように十……二十……三十人ものスイーパーに囲まれている。


彼らは一様に目に生気がなく、ぼんやりとした表情だった。


「何……これ……」


理緒が呟く。


「マインドジャックだ」


一貴がそう言う。


「最も非人道的な行為だよ」


『言ってくれるじゃないか。クソガキが』


三十人のマインドスイーパー達が、同時に言葉を発した。


「圭介……?」


汀が呟く。


「マインドスイーパーの心を、逆にマインドスイープでジャックして、操る手法さ」


一貴の声に、三十人のスイーパーたちは、同時に手を雲に突っ込んで答えた。


『おしゃべりはそこまでにしようか。汀、理緒ちゃん。小白を使って降りるんだ。この人の心にロックをかけろ。こいつらは、この人の中枢を破壊して「殺す」気だ!』


「え……」


理緒は青くなって一貴に向かって声を張り上げた。


「どうして? マインドスイープで人を殺したら、現実世界でも死んじゃうんですよ!」


「それがどうしたのさ? 仕事だからさ」


一貴は日本刀を肩に担いで、挑発的に、周囲を取り巻いているスイーパーたちを見回した。


「早くかかってきなよ。OBさん。じゃないと」


一貴の姿が消えた。


手近にいた女の子のスイーパーの喉に、次の瞬間、日本刀が突き刺さって、貫通して向こう側に抜けていた。


一貴はそれをずるりと引き抜き、女の子を蹴り飛ばした。


岬は呆然としている。


一拍遅れて、倒れた女の子の首から、凄まじい勢いで血が噴出した。


「皆殺しにするよ」


あながち冗談ではなかった。


考える間もなく、一貴は日本刀を一閃して、また近くにいたスイーパーの男の子を袈裟斬りにした。


返り血を浴びて、楽しそうに彼が笑う。


『チッ!』


二人も一瞬でやられたスイーパーたちが、雲の中から刃渡り三十センチはあろうかというサバイバルナイフを掴みだす。


一貴はそのドスとも言えるナイフの斬撃を刀で受けて、その場を転がった。


そして近くのスイーパーの胸に刀を突きたてる。


汀は、震えている理緒の手を掴んで


「行くよ!」


と叫んだ。


それを聞いて、周囲をスイーパーに囲まれながら一貴が叫ぶ。


「待って、なぎさちゃん!」


「患者を殺させるわけには行かないわ! どうしてもやるっていうなら、相手になる!」


「なぎさちゃん!」


岬が、一貴から日本刀を受け取り、スイーパーの斬撃を受け止めながら声を張り上げる。


「あたしだよ! 岬だよ。何で分からないの!」


『行け、汀!』


「私は人の命を助ける! テロリストと話すことは何もないわ!」


汀はそう言うと、小白を小脇に抱えて、理緒の手を引いて雲の下に体を躍らせた。


理緒が一拍遅れて、ものすごい悲鳴を上げる。


小白がまた膨らみ、パラシュートのように広がった。


それを見て一貴が舌打ちする。


「いっくん、どうするの!」


岬が悲鳴のような声を上げる。


一貴は口の端を醜悪に歪めて、そして言った。


「なぎさちゃんは絶対に連れて帰る。そのためには……」


周囲を見回し、彼は言った。


「全員、殺す」



第12話に続く。



バックナンバーは「こちら 」から!!



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