ぽやぽやエブリデイ

ドラクエ10などのWeb世界で、世知辛い世の中を憂い

それでいながら眠気には勝てない毎日を繰り返していきます。

ミソスープの具は豆腐とワカメ!!

特撮やアニメの歌が好きです。スライム状のものは嫌いです。


テーマ:

第10話 風の先に見えた 前編 」の続きです。



注:この小説は18禁です。現実と空想の区別がつかない方にはおすすめしません。


バックナンバーは「こちら 」から!!



マインドスイーパー


……精神掃除士(患者の精神疾患を主とした自殺病治療の特殊能力を持つ医師の総称)




10.風の先に見えた 後編



赤十字病院のラウンジで、理緒は汀と小白の乗った車椅子を、日のあたらない場所に設置し、一人、少し離れた場所で水を飲んでいた。


朝、大河内の事を聞きここに来てから、既に半日以上が経過していた。


圭介は顔を見せようとしない。


ここに放置されてからも、随分時間がたつ。


ある程度のお金は圭介に持たされていたが、汀がいつ目を覚ますか気が気ではなかったので、離れるわけにもいかなかった。


頭の中がグチャグチャだった。


寝不足と、疲労と、圭介に投げつけられた言葉の痛みが交互に理緒の胸の中を襲う。


深くため息をついた彼女の周りには、やはり診察を待っている患者や、食事をしている見舞い客などが沢山いた。


誰も、汀達を気にする人などいない。


そんな中だったので、理緒はいつの間にか隣に誰かが座っていることに気づかなかった。


「……?」


きょとんとして隣に目をやる。


そこには、灰色のフードを目深に被った、長袖の少年が座っていた。


理緒と同じくらいの年の頃だろうか。


彼は、売店で買ってきたのか、手にピルクルの瓶と、菓子パンを数個持っていた。


それを理緒に差出し、ぎこちなく笑う。


「た……た…………たっ……」


慎重に言葉を選ぶように、断続的に発音し、彼は息を吸って、そして一気に言った。


「た……べ……る?」


「え……あの……」


理緒はいきなりのコミュニケーションについていけずに、どぎまぎしながらそれに答えた。


「お、おかまいなく。私、大丈夫ですか……」


グゥ、と理緒のお腹が鳴った。


整った顔をしている少年だった。


髪の毛が白い。


同じマインドスイーパーだと気づいて、理緒は顔を赤くしながら、俯いた。


「お、れ……分、ある」


言語障害なのだろうか。


切れ切れに彼はそう言うと、にこやかな笑顔と共に、自分の分のパンを手で指した。


「あ……さから……いた。心配」


「ありがとうございます……」


小さな声でそう言って、理緒はパンを受け取った。


パンを口に入れ、多少は頭の中が整理できた理緒は、息をついて少年を見た。


もぐもぐとパンを食べている彼は、ぼんやりと外を見ている。


髪の毛が白くなければ、タレントにでもなっていそうな程、顔立ちが整っていた。


理緒でなくても、女の子なら誰でも意識はしてしまうだろう。


彼がこちらを向いたので、慌てて目をそらす。


ピルクルで残りのパンを喉に流し込み、彼女は男の子に聞いた。


「あの……お金、払います。お幾らでしたか?」


「いら……ねぇ。男、女……おごる、大切だ……と、思う。逆……おかしいな」


意外と理性的な喋り方をする人だ。


理緒は警戒心を解いて、しかし彼の手に千円札を握らせた。


「お礼です。私の気持ちだと思って、受け取ってください」


少年はしばらくそれを見つめていたが、やがて興味がなさそうに頷いて、ガサッ、とポケットに千円札を突っ込んだ。


その鳶色の瞳でまた見つめられ、理緒は顔を赤くして視線をそらした。


「あの……お名前は……?」


聞かれて、少年は言った。


「工藤…………一貴(くどういちたか)」


「一貴さんですね。私は理緒。片平理緒って言います」


手を差し出すと、一貴は気さくにそれを握り返してきた。


「同業者の方ですよね? どこでお仕事をされてるんですか?」


「ほ……っかいどう。出張……で」


「遠いところから……担当医の方は?」


「戻ら……ねぇ」


ヘヘ、と笑った彼に、理緒は微笑み返した。


「ふふ、おんなじですね」


一貴は頷いて肩をすくめると、眠っている汀に視線を移した。


そして口を開く。


「あの、子……」


「汀ちゃんのこと、ご存知なんですか?」


問いかけた理緒に、一貴は頷いた。


「有、名……特A」


「今ちょっと具合が悪くて……お話は出来ないんです」


目を伏せた理緒の肩を、彼は元気を出せよ、と言わんばかりにポンと叩いた。


そして立ち上がって汀に近づくと、その顔を覗き込む。


しばらく同じ姿勢のまま固まった一貴を、理緒は怪訝そうに見た。


「どうしました?」


問いかけられ、彼は肩をすくめた。


「残念……俺、ともだ、ち。この……子と」


「汀ちゃんのお友達だったんですか?」


「……う、ん」


頷いた彼の隣に行き、理緒は息をついた。


「羨ましいな……私の友達は、汀ちゃん以外、ほとんど『あっち』の世界に行っちゃった」


「…………」


「そこから助けてくれたのが、汀ちゃんなんです」


彼女は、黙っている一貴の方を見ずに続けた。


「だから私は、汀ちゃんに幸せになってもらいたい……自殺病にかかった人間は、絶対に幸せになれないなんて、嘘です。そんな酷いこと……私は信じられません」


「…………」


「工藤さんも、そう思いませんか?」


振り返った理緒の目に、汀を見て目を細めている一貴の姿が映った。


一貴は少し考えていたが、やがて頷いて、ニッコリと笑った。


「俺……たち。だいじょう、ぶ。医者、適当なこ、と、言う」


「そうですよね。そうなんだ。大丈夫。大丈夫だよ」


理緒がそう言って、眠っている汀の手を握る。


一貴はまたしばらく汀を凝視していたが、彼女が目を覚まさないことを確認して、チラチラと腕時計を見た。


そして理緒の肩を叩く。


「お、れ。行く。かたひ、らさん。これ」


彼が差し出したのは、メモ帳の切れ端だった。


そこには、ゼロと一の羅列がびっしりと書かれていた。


その不気味な紙片を受け取り、理緒が首を傾げる。


「何ですか?」


「この……子に、わたし、て。大事……すごく、大事な……もの。医者、し、んようできない。俺、たちのひ……みつ。約束」


勝手に理緒の手を握り、彼は手をひらひらと振って、足早に人ごみの中に消えた。


「あ……待って!」


慌てて後を追いかけようとした理緒が、小さくうめいて目を開いた汀を見て、歩みを止める。


「ん……」


「汀ちゃん! 目が覚めましたか?」


「ここ……どこ……?」


「…………」


大河内が大怪我をしたというくだりは、完璧に忘れてしまっているらしい。


それに愕然とした理緒の目に、圭介が手にビニール袋を持って、疲れた足取りで歩いてくるのが見えた。


慌てて、一貴から渡された紙片をポケットに隠す。


そこで彼女は、いつの間に折られたのか、小さく、鶴の形にされた千円札が手に握りこまれているのに気がついた。


それを見て、どこか顔を赤くする。


一貴の姿は、もうどこにもなかった。


「……どうした?」


袋に入った菓子パンやジュースをテーブルに並べながら、圭介が聞く。


「ああ、もう食べたのか?」


「え……? あ……はい。ごめんなさい……」


「いや、俺の方こそ、随分と待たせてすまなかった。大河内の容態は安定してる。問題はないだろう」


「圭介……? どこ……ここ……?」


緩慢とした動作で、汀がそう聞く。


圭介は彼女に、ストローを指したポカリスエットの小さなペットボトルを握らせて言った。


「赤十字病院だ。大河内が少し怪我をしてな。そのお見舞いに来ていたところだ」


「せんせが……? 私、お見舞いなんてしてないよ」


「したよ。大河内が、疲れただろうからもう帰れってさ」


淡々とそう返し、圭介は理緒が不満げな顔をしたのを無視して、パンを頬張った。


「理緒ちゃんも。こんな時で悪いけど、仕事だ」


「高畑先生……!」


理緒が小声で咎めるように言う。


しかし圭介は、パンをかじりながらそれに答えた。


「急患だ。今、ここの第三棟に運び込まれてる。放置すれば、あと二時間で死に至る」


「そんな……」


「汀、やれるか?」


問いかけられ、汀は頷いた。


「終わったら……また、せんせと会いたいな……」


「いいよ。約束する」


「うん……」


「……高畑先生!」


そこで理緒が、我慢できないといった具合で圭介の袖を引いて、汀から遠ざけた。そして小声で彼に言う。


「何で嘘をつくんですか?」


「また汀を過呼吸にしたいのか?」


「私は……でも……!」


「君達はマインドスイーパーだ。資格があるなら仕事をしろ。『人を助ける』といった仕事をな」


冷たく言って、圭介は柔和な表情で汀を見た。


「行くぞ。ダイブは三十分後だ」



汀と理緒は目を開けた。


そこは、大雨が降っている高速道路の上だった。


一瞬でびしょ濡れになった二人が顔をしかめる。


『どうした? 状況を説明してくれ』


圭介の声が聞こえる。


汀と理緒がヘッドセットのスイッチを入れ、口々に何かを言うが、雨の音でそれはかき消されてしまっていた。


『聞こえないな……汀、どうにかしろ』


圭介の命令に頷いて、汀は足元で小さくなっている小白を抱き上げた。


そして理緒の手を掴んで、高速道路の脇に移動する。


そして親指を立てて、右手をピンと上げた。


(ヒッチハイク……?)


そのつもりなのだろうか。


精神世界で、しかもこの土砂降りの逃げ場がない中で何をしているのだろうと、理緒が目を丸くする。


そこで、凄まじい勢いで、赤い車が走り去った。


エンジン部分が大きく拡張されていて、さながらレーシング用の車だ。


それを追って、サイレンを鳴らしながらパトカーが三台走ってきた。


そのうちの一台が停まり、中から真っ黒いマネキンのような人間が出てくる。


黒いマネキンが、警官の制服を着ている。


二人だ。


表情はうかがい知ることは出来ないが、彼らは腕を立てている汀の前に屈みこんで、心配そうに口を開こうとして――。


そこで、一人が、汀に無造作に投げ飛ばされた。


もう一人が臨戦態勢を作る前に、汀は倒れた警官の喉に一撃を加えてから、その警官の警棒を抜いて、まだ立っている警官のみぞおちに突き立てた。


時間にして五、六秒ほどのことだっただろうか。


警官姿のマネキンを二人とも締め落としてから、汀は唖然としている理緒の手を引いて、パトカーに乗り込んだ。


そして扉を閉め、膝の上に小白を乗せる。


「ダイブ成功。変質心理区域だね。かなり自殺病が進行してると思う」


猫のように頭を振って水を飛ばした汀の隣で、理緒が震えながら暖房のスイッチをつける。


そして彼女は、倒れている二人の警官を見た。


「汀ちゃん……あの人たち……」


「ただの深層心理の投影だから、気にしなくていいよ」


そう言って、汀は車のアクセルを踏んで、パトカーを急発進させた。


「きゃあ!」


理緒が悲鳴を上げて、慌ててシートベルトをつける。


「み、汀ちゃん! 運転できるの?」


六十キロ、七十キロ、次第に速度が上がっていく。


汀は、明らかに小さな体でギアを操作して、先ほど通過したパトカーに追いついてから、面白そうに笑った。


「やり方は知ってる」


「知ってるって……知ってるだけで運転したことは……」


「ないよ。当然でしょ?」


二台のパトカーを追い抜き、汀は更にスピードを上げた。


理緒がまた悲鳴を上げて、体を縮めて目を閉じる。


既に百二十キロ近く出ていた。


少しの段差で、車体が浮くほどの速度だ。


それに今は土砂降りだった。


ハイドロブレーキング、と呼ばれている。


タイヤと道路の間に水が入り込み、タイヤが空回りする現象だ。


その音を聞き、よく分かっていないまでも理緒は顔面蒼白になった。


当然だ。


自分より小さな女の子が、土砂降りの高速道路で百三十キロもカッ飛ばしていたら、その隣に座っていて恐怖を感じない者はいないだろう。


「止めて! 止めてぇえ!」


凄まじい勢いで流れていく周囲の景色についていくことが出来ずに、理緒が絶叫する。


『どうした? 状況を説明してくれ』


圭介が言う。


汀はまたギアを操作し、更に速度を上げてから言った。


「高速道路。多分防衛型の特徴だと思うけど、この人の精神中核が車で逃走中。この人、普通の人じゃないね。犯罪者だ」


汀の的確な指摘に、圭介が一瞬押し黙る。


「は……犯罪者?」


理緒が引きつった声を上げ、目をギュッ、と閉じて震えながら言った。


「私達、犯罪者の人の心の中にダイブしてるんですか?」


「それも普通の犯罪者じゃないね。警察に対して異常な警戒心を持ってる。多分何かの逃走犯だ」


『汀、仕事に集中しろ』


「分かってる」


「高畑先生! 犯罪者って本当ですか?」


理緒がヘッドセットに向けて悲鳴のような声を上げた。


「それも逃走犯だなんて……マインドスイーパーは、犯罪幇助はしちゃいけないんですよ!」


『君達はただ、精神中核を治療すればいい。仕事をするんだ』


「高畑先生も汀ちゃんも、おかしいよ!」


理緒はあまりのスピードに腰が抜けたのか、頭を抑えてその場にうずくまった。


百四十、百五十。まだ速度は上がっていく。


前方に、赤い車が見えてきた。


もはや気を失ってもおかしくないほどの恐怖が、彼女を襲っていた。


半狂乱になって、理緒はどこかに逃げ場はないかとパニックになって怒鳴った。


「止めて! 止めてよ! 死んじゃうよ! やだ、こんな速いのやだあああ!」


車の速度計から流れる警告音が彼女の精神を削り取っていく。


汀は、しかし運転に集中していて理緒の相手をする暇がないのか、小白を彼女に投げてよこしただけだった。


「大河内先生が死にそうなのに、仕事なんてできません! 戻してください! 私、仕事できません!」


理緒が悲鳴を上げる。


「え……?」


そこで初めて、汀は理緒の方を見た。


「せんせが、死にそう?」


『二人とも、仕事に集中するんだ』


「出来ないです! 私は人間です! 人間って、心があります、機械じゃないんです! 二人ともおかしいよ! おかしいよ!」


「理緒ちゃん落ち着いて。落ち着いてその話をよく聞かせて」


汀が冷静に言って、震えて固まっている理緒を横目で見る。


『やめるんだ理緒ちゃん。終わったら俺の口から……』


「圭介は黙ってて」


圭介の声を打ち消し、汀は続けた。


「理緒ちゃん、すぐに怖いのは終わるから。大丈夫。私がいる」


「汀ちゃん……」


鼻水を啜り上げながら、理緒は、途切れ途切れに口を開いた。


「大河内先生が……通り魔に遭って……今、重篤な状態で……」


「圭介、本当? それ」


『…………』


「圭介!」


汀が怒鳴る。


『本当だ。犯人はまだ捕まっていない』


しばしの沈黙の後、圭介はそう答えた。


「私の記憶を消したのね……何で!」


『仕事があるからだ』


「戻る。すぐに戻る!」


『…………』


「この精神中核を捕まえたら、すぐにせんせのところに行く!」


『冷静になれ! 精神中核が外壁防御もなしに高速で逃走中なんだろう。慎重に行け!』


「知らない……知らないこんな犯罪者!」


汀は怒鳴って、更にスピードを上げた。


そして理緒に


「ぶつかるよ!」


と叫んでから、前方でエンジンを高速で回転させている赤い車の後部に、パトカーを衝突させた。


凄まじい衝撃が二人を襲う。


「きゃあああ!」


『やめろ汀! 患者を殺す気か!』


圭介が怒鳴る。


しかし汀は、それには答えずに、何度も、何度も車を衝突させた。


仕舞いには赤い車の後部タイヤがパンクしたらしく、それはぐるぐると道路をスピンしながら、ガードレールに激しくぶつかった。


そして何度も回転しながら、崖下に車が落ちていく。


パトカーをスピンさせながら急停止させ、汀はヘッドセットに向けて叫んだ。


「戻して! 早く!」


『…………』


圭介がマイクの向こうで歯噛みする。


ボンッ! という音がして、崖下で車が爆発した。


火柱が吹き上がる。


「圭介!」


ぐんにゃりと、景色……いや、「空間」それそのものが歪んだ。


まるでコーヒーにミルクを入れてかき混ぜるように、汀達を包む空間がドロドロになり崩れていく。


「精神中核の崩壊を確認。戻して!」


ヘッドセットの向こうから、圭介の舌打ちが聞こえた。


そこで、彼女達の意識はブラックアウトした。



「患者の死亡が確認された。死因はショック死だ」


圭介が淡々とそう言う。


「死んだ……?」


理緒が唖然として、その言葉を繰り返した。


「え……死んだ……? 死んだんですか……?」


「ああ、君達が殺したようなものだ」


端的にそう言って、圭介は表情の読めない無表情のまま、手に持った資料を脇に投げた。


大河内を見舞ってから、赤十字の会議室で、汀は圭介を睨んでいた。


「……知ったことじゃないよ」


「それでも特A級マインドスイーパーか。呆れてものも言えないな」


圭介は首を振り、立ち上がった。


「少しここで頭を冷やすといい。大河内は命は助かるが、君達が見放した命は大きい。それがたとえ、犯罪者のものだったとしてもな」


会議室の扉を閉めた圭介を目で追って、汀は唇を強く噛んで俯いた。


「死んだって……どういうことですか……?」


理緒がかすれた声を出す。


汀はしばらく沈黙していたが、やがて、小さな声で返した。


「……私が、精神の中核を、車ごと崖の下に落としたから。精神の崩壊は、脳組織の崩壊を誘発することもあるの……」


「私が……汀ちゃんに、大河内先生のことを話したから……ですか?」


汀は、また少し沈黙してから、首を振った。


「…………」


「汀ちゃん……?」


すがるように口を開いた彼女に、汀は両目から涙を落として、かすれた声で答えた。


「私が……殺した。カッとして……殺しちゃった……」



圭介は、日も落ちて、暗い診察室の中、椅子に座って、資料を見ていた。


理緒と汀は、隣の部屋で、泣き疲れて眠っていた。


今日起きた一連のことは、彼女達の年齢では、処理できる理解の範疇を超えていた。


睡眠を体が選んだとしても、それは無理のないことだった。


そこで、圭介の携帯電話が鳴った。


圭介が顔を上げて、一瞬止まった後それを掴む。


そして耳にあて、彼は言った。


「誰だ?」


電話の主は、非通知だった。


『久しぶりだな。高畑君』


しかしその声に、圭介は表情を変えて答えた。


「…………久しぶりですね…………」


『相変わらずクールだな。どうだ? 今回の失敗は、随分と堪えたんじゃないのか? 元老院もな』


「あなたには関係のない話だ」


『今回の失敗を、もみ消してやれると言ってもか』


電話口の向こうでタバコでも吸っているのか、息を長く吐きながら、相手はそう言った。


圭介はしばらく考え込んだ後


「あなたには関係がない話だ」


と、先ほどの台詞を繰り返した。


電話口の向こうの相手は、それに構わずに続けた。


『ナンバーⅣをこちらに引き渡したまえ。悪いようにはしない』


「お断りします」


圭介はせせら笑って、それに返した。


「あの子は俺のものだ。あなたのものじゃない。残念だったな」


醜悪に口の端を歪め、彼は吐き捨てた。


「つるむ相手を変えたいのは分かりますが、相手は選んだ方がいいですよ」


プツッ、と電話を切る。


そして彼は携帯電話をテーブルに投げてから、立ち上がった。


手洗いが一緒になっている洗濯室に入り、理緒と汀の洗濯物を、洗濯機に突っ込む。


そこで、理緒の服のポケットに紙切れが入っているのを見て、圭介はそれに目を留めた。


ゼロと一の羅列が所狭しとかかれた紙。


そして、鶴の形に折られた千円札。


圭介は鼻を鳴らし、紙を自分のポケットに移した。


そして鶴の形を整えて、洗面台の上に置く。


それを見る目は、どこか笑っていて。


どこか、悲しそうだった。



第11話に続く。



バックナンバーは「こちら 」から!!



 ドラゴンクエスト10オンライン・攻略ブログ  にほんブログ村 ゲームブログ ドラクエシリーズへ

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

みけねこさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。