人工物による乳房再建(17)最終回 | Life can be beautiful. (みかこクリニック院長 高木美香子のブログ)

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17 最後に(患者さんへ最も大切なお願い)

人工物による乳房再建に対して保険が適用されるようになったことで、乳房再建に対する期待が高まってきているのは確かです。保険適用が開始される以前は、「自家組織での再建はやりたくないけど、人工物なら再建したい」という希望を持っていながら、費用の問題からあきらめてしまうという患者さんが少なからずいらっしゃいました。

しかし、費用の問題がクリアされたからといって、人工物による再建のデメリットや整容性での限界という諸問題がクリアされたわけではありません。せっかく再建に臨むことになっても、術前にしっかりそれら重要な事柄を理解しておかなければ、事後に「こんなはずではなかった」「再建しなければよかった」という落胆だけが残ってしまうということになりかねません。

「こんなはずではなかった」ということは、患者さんの期待と再建の結果との間に大きな開きが生じたということを意味します。私たち形成外科医は、そのような事態を回避するため、患者さんに対する術前の説明に細心の注意を払う必要があります。木沢記念病院では、3D画像装置を導入したことで、術後のイメージをシミュレーションして視覚的に見て頂くことができるようになりましたが、それでも患者さんとの認識のギャップを完全に埋めることは困難です。私たち病院スタッフには、そのギャップを埋めるための不断の努力をしていかなければなりません。

その上での話ですが、患者さんの認識のギャップを埋めるためには、患者さん自身にも求められるものがあるということを、最後に指摘しておかなければなりません。

「患者さん自身にも求められるもの」、それはズバリ、再建に主体的に関わることです。

「先生におまかせします。」という姿勢は、医師に対する信頼の証のように思われるかもしれませんが、私自身は、「おまかせ主義」は「後悔」に通じるものがあると考えています。実際、「おまかせ」されるよりも、いろいろな質問や要望をぶつけられる方が、患者さんとの信頼感がより深まるのを感じるものです。私たちは、患者さんに後悔して欲しくないという思いでいっぱいです。ですから、患者さんには、手術結果にどういう期待をしているのかということや、どのような点に疑問や不安を感じているのかというようなことを、その都度その都度、遠慮なく伝えて頂きたいのです。伝えて頂けたらなら、必ず丁寧に説明致します。説明して理解して頂くことで、患者さんの後悔の「芽」を摘むことにもなりますから、私たちスタッフとしても、むしろ積極的に関与してくださる方が嬉しいのです。ただし、ひとつ患者さんにお願いしたいことは、主治医の説明を正確に理解して頂くために、メモをとるなどの工夫をして頂けたらと思います。もちろん、患者さんにそんな心の余裕がない場面があることも十分理解しています。特に、一次再建の場合は、癌を告知されてパニックになり、説明が全く頭に入らなかったと後から言われたことも何度かあります。そういった状況の場合は、患者さんが時間とともに僅かなりとも心の平静を取り戻していかれるのに合わせながら、患者さんにご理解頂けるまで何度でも説明を繰り返す姿勢でいます。ですので、どんな状況であろうと、やはりご自分が理解し納得できるまで、繰り返し説明を聞きに来て頂きたいと思います。

患者さんにとって納得のいく結果を出すためには、患者さんの要望や疑問を医療者側が知っていなければなりません。逆に言えば、患者さん自身が納得のいく再建結果を得るためには、自身の要望や疑問を積極的に伝えようとする姿勢が重要です。再建手術とは、患者さんと医療者が一緒になってはじめて作り上げることができるものなのですから、私たち医療者にとって、患者さんの主体的な関与はむしろ大歓迎なのだ、ということを最後に強調しておきたいと思います。

(「人工物による乳房再建」完)