2011-06-10 16:47:25

「対テロ戦争」に赴く兵士の過ぎた‘憂鬱‘(「戦場でワルツを」‘08年イスラエル/アニメーション)

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「パール・ハーバー」が連呼される音楽が、戦場に向かう主人公を乗せたボートのシーンで使われる。これは、テロとの戦いなのだった。

 ‘82年、レバノンの首都ベイルートにあるパレスチナ難民キャンプで行われた大虐殺に、イスラエル兵として加担した兵士が、今も当時に支配され苦悩する様を、準ドキュメンタリー的手法で描きながらアニメーション化したのが本作品。クオリティの高さ、表現の斬新さから評価も高く、‘09年末に始まったイスラエル軍によるガザ侵攻がなければ、アカデミー・外国語映画賞を受賞していた、という意見も根強い。(同賞の受賞作品は、「おくりびと」)

 技術的には、かなり良い線を行っていると思うが、イスラエル市民の「言い訳」的ということからだろう、アラブ諸国では概ね上映禁止になった。虐殺に加担した軍の責任回避をつらつらと綴っているという見方からいえば、政治的に許容できまい。ディア・ハンターについて、ベトナム人はどう思うのか想像してみて欲しい。

 一方、イスラエルでイスラエル人のためにイスラエル人が作った、と考えれば、一定の意義を見出せるのではないか。しかし、同国での興行成績が振るわなかった。極度に右傾化しているこの国の人々の大半が、自国批判の匂いがする作品を好まなかったということだろう。

 では何処での上映が最適なのか、と考えると、日本が思い浮かぶ。ただ、どちらが加害者かの注釈は付けねばなるまい。

 対アメリカ戦に限った場合、我々が文字通りのテロリストで悪の極みであったとは考えにくい。アジアに対する侵略と、欧米との戦争は、区別しなければならないと思う。反戦には同感だが、第二次世界大戦中に戦ったのは、何も我々だけではない。

 <対テロ戦争>は、第一次世界大戦から始まっていた、と語るイギリス人の著名な左派ジャーナリスト、R・フィスクでさえ、第二次世界大戦はテロとの戦争そのものだ、とする。つまり、日本はテロリストであり、イギリスは正義の見方というわけだ。こうした人々の見解を鵜呑みにすると、進んで侵略に加担する結果になる。

 日本人が「戦場でワルツを」に登場する兵士に共感するようなら、アラブ人からは嘲笑されるだろう。状況を理解した上で、戦争の悲劇を痛感し映像を堪能できるようなら、鑑賞する価値は高い。

 冒頭で触れた「パール・ハーバー」について、是非、映画の中で鑑賞して欲しい。ハワイがどんな場所で何が起こったのかを、調べ直してみるのも良いだろう。



 (匿名ライターG)

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2010-10-07 18:22:35

そうだ、アンマンへ行こう・・・

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キャプテン・アブラーイド
(ヨルダン映画/NHKアジアフィルムフェスティバル 09年上映作品

/2010年10月5日 NHK・BSハイビジョンにて放送)


 涙腺が、緩む映像だった。
それは恐らく、ヨルダンで生活したことがあるからであり、外国人として触れる同国の、実直さ、同時に洗練された印象が滲み出ているからなのだあろう。しかし一方で、国際競争力を持つ産業が殆どないのに、やけに豊かな生活をしている人々が多いアンマンの、人工都市的側面も盛り込んである。
 ダウンタウンの付近にある低所得者エリアの高台を舞台にし、貧しさの犠牲になる子供たちを取り上げながら、眼前に迫る高層ビル群が入り込む。そこには、ヨルダンの人口の約7割を占めるとされるパレスチナ人がいて、難民キャンプもある。イラク戦争後には、100万ものイラク人が存在したという。しかし、それらは必ずしも全てが貧しいわけではなく、前政権との関係性から全く働かなくても豪邸で生活でき、アンマンの地価高騰を引き起こしたとも言われるイラク人も多数いた。200万都市アンマンの、印象で言えば半分ほどの面積が高級住宅街である。
 ステレオタイプのようであってステレオタイプではなかったりする。そこまで感じながら鑑賞してしまうからこそ、恐らく目頭が熱くなるのであり、何もしらない観衆にどれだけ伝わるのかは自分でも分からないが。
 映像美が堪能でき、説明を省いたカットは映像美を際立たせているが、余りにも言葉足らずな部分もある。最後の展開も、慌しいし、主要登場人物の一人の子供が、ラストシーンでパイロットになっているのに、アンマン自体には昔と今がない。
 ただ、こんな中東映画は見たことがないほど、叙情的ではある。特に、あの古びた空港に、新ターミナルが開設されようとしている今、何かに追いやられていくような切なさが溢れている。親族にパイロットが多く、アメリカで育った監督の必然が製作された作品は、どこまでいっても、外国人の目線の延長なのかもしれない。それでも、個人的な話で言えば、かつてアンマンで生活していた娘を連れて今年の夏同地を再訪した時に、眼下に砂漠が目に入ってきた瞬間に涙がこぼれて来た。そんな風にさせる何かが、この映画にはある。



 DVDが海外では販売されているようなので、探したい。

 ストーリーは、空港で清掃員として働く老人が、ゴミ箱からパイロットの帽子を拾うところから始まる。飛行機に憧れる自宅近くの子供たちの夢であるために、彼はパイロットを演じ、その嘘がばれる。それでも、「キャプテン・アブラーイド」となった老人は、子供たちの毎日に向き合い続け、やがて。。。

(デカプリオの「ワールド・オブ・ライズ」は、ヨルダンを舞台にしながら、映像からみると、殆どヨルダンでは撮影していないようだ。シーンの違いなどを見比べてみるのも一興。)

(匿名ライターG)

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2010-07-11 23:54:42

政治的?言葉遊び? 「アラジン」を、英語で見直すと・・・

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 差別発言や、盗作疑惑、WASP的価値観に基づいていると非難を受けることの多いDisneyアニメであるが、その代表作「アラジン」も批判されるべき内容は多いようだ。アラブ人について、過度に野蛮なイメージを与えること点などは、湾岸戦争直後の‘92年公開ということも影響したのだろうが、そうした分かりやすい部分だけではなく、単なる地名、英語表現などを確認してみると結構楽しめる。政治的解釈はそこそこに、使用例と補足情報を並べてみると。。。

 ストーリーの冒頭だけみても盛りだくさんなので、英語が苦手な方も、字幕を英語にしてみて欲しい。時は3世紀。市場にいる商人の語りからストーリーが始まる。町の名前は「Aqrabah」。Dead Sea(死海)、Jordan River(ヨルダン川)、などの地名からも分かるように、物語の舞台はヨルダン北東部イルビットらしい。彼はなぜか、「This side of River Jordan」の商品を扱っていると話す。ヨルダン川の西側は、イスラエルと占領地パレスチナである。そうそう、ヨルダン川の西側、占領地にも「Aqraba(h?)」という、似たような地名があったり。
 他のシーンで、市場では魚や、ナツメヤシ、イチジクなどが売られているが、まず最初に、「Oranges from Jaffa」が、紹介される。これを特定銘柄の「Jaffa Orange」としては扱いにくいが、その分巧妙にねじ込まれた印象はぬぐえない。「Jaffa Orange」の原産地は、地中海沿岸の町Jaffaで、19世紀にアラブ人によって作られたとされる。が、この町は今、イスラエルになり、「Jaffa Orange」は、同国を代表する輸出品である。なぜ、「ヨルダン川の西側」の、当時はなかった品種を、固有名詞を連想させる形で取り上げているのかなあ。
 そうそう、英語についてではないが、パンは西欧風にされていた。まさか、近年になって今の形のアラブパンになったというわけではないよなあ。やはり、パンはあの形ではないと分かりにくいということか。まあ、ベーグルでなかっただけ良いか。

 ジニ―が、自由になりたいと訴えるシーンで出てくる、「Smell cofee」ならぬ「Smell Hummos(中東で朝食などに食される、パン等に付ける豆ペースト)」など、分かる人には分かる言葉遊びも。しつこくなってしまうが、最近ホモスは、イスラエル料理だと言っているユダヤ人も多かったり。
 「Allah」という表現も頻繁に出てくるが、時代を考えれば「God」で十分なんじゃあないかと思うのだけれど。
 色々、姑息なイメージ操作がされているのか、単なる分かりやすさの追及なのか、見落としネタを発見するのに最適な一本。

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