2014-03-04 22:23:38

「真夜中の振り子」吉本裕美子ギターソロ/雄大な水面の煌めき

テーマ:ライブ
またまたご無沙汰しています。すっかり気まぐれペースになってしまったライブ・レポートです。今回は色々な意味で印象深いシチュエーションだったため、(いつものことながら)ずいぶんと時間が経ってしまいましたが、備忘録として書き留めようと思っています。

去る11月1日、ギターの吉本裕美子さんのソロパフォーマンスを拝聴しました。吉本さんとは、ピアノの荻野都さんのライブを聴きに行ったときに、その場にいらしてて、荻野さんの紹介で知己を得た間柄。今年の初めにサックスの森順治さんのライブに参加した際にご来場いただいたこともあって、一度吉本さん自身のパフォーマンスも拝聴したいと思っていたのですが、この10月にピアノの雨宮拓さんのユニットで共演するという形で、初めてそのスタイルに間近に触れるという、僕にしてはちょっと珍しい触れ方をしたミュージシャンではあります。

場所は四谷にある総合芸術茶房「喫茶茶会記」。僕は今回初めて足を運んだのですが、どことなく懐かしさを感じさせるお店でした。四谷というと新宿からも近く喧噪な都心というイメージがあったのですが、「喫茶茶会記」は新宿御苑も近く、どちらかと言えば閑静な住宅地の中にあるといった感じで、こういった場所でライブを開催するというのもちょっと予想外な感覚がありました。店内も、シンプルだけどちょっとレトロな感覚の調度品があったりと、どことなく「大正浪漫」という言葉を彷彿させるような居心地の良さを感じるサロンです。

ライブの行われたフロアでちょっと目立ったのが、こういう場所ではなかなかお目にかかれないような巨大なスピーカーや、その手には全くの素人の僕でもわかるような高級なオーディオ機器。吉本さんに話を聞くと、「喫茶茶会記」のマスターがオーディオに精通されている方とのこと。そういったこともあるとは思うのですが、とにかくフロアの音場がとてもナチュラルで、「いい音のハコだな」と感じました。アップライトのピアノも設置されていましたが、アコースティックのサウンドが気持ちよく味わえそうな空間という印象です。

冒頭で印象深いシチュエーションと言った一番の理由はその開催時刻で、11月1日とは書きましたが、正確には11月2日の深夜2時からの開始です。ホームページを拝見すると、このお店では月に1、2回ほど「深夜廟」と銘打ってこのようなライブ企画を行っているようです。場所がらや時刻を考えても「爆音」なライブは無理だとは思いますが、逆にひっそりと音を噛みしめるにはうってつけという感じで、ベースのカイドーユタカさんも隔月でソロ・パフォーマンスをしているとのことでした。

吉本さんはエレクトリック・ギターに様々なエフェクトを駆使したスタイルでパフォーマンスを行うミュージシャンですが、決して「爆音」というわけではなく、こういったシチュエーションにはうってつけの人選だったように思います。今回は2セットでそれぞれ約50分ほどのパフォーマンスでした。最初のセットはあまりエフェクトを使用せずにもっぱら様々な奏法を駆使してギターそのもののサウンドの変化を紡ぎだすような感じでした。2ndセットはエフェクターを使用し、少しエッヂの効いたよりファットな感じのパフォーマンスに変わったように思います。

拝聴した印象としては、それぞれ50分という時間をほとんど感じさせない、なにかに魅入られたように文字通り「釘づけ」になって、音の行方を凝視せざるをえないような、不思議な魅力を醸し出すパフォーマンスでした。吉本さんの音楽自体は結論から言うとほとんど「何も動いていない」状態に近く、音楽に対してある種のドラマティックな構成力によってその起承転結に満足を見出そうとするリスナーには、ひょっとするとあまり受容できないスタイルであるかもしれません。決して緊張感を感じさせることもないのですが、その音群に触れる中で、いくつか鋭く心を捉える音が飛び出してきます。

まだ少年といっていい時期の頃、昼下がりに近所の河原に散歩にでかけることがよくありました。川は海にほど近い下流で、そこそこ緩やかで雄大な流れを作っていましたが、その水面を時間を忘れて眺めているということがよくありました。流れそのものは太古から変わらぬ悠久の営みといった感じですが、水面に現れる様々な川のざわめきに陽光が反射し、そのカオティックな状況から生み出されるまさにその場限りの刹那的な情景に、つい何かに魅入られたかのように吸い込まれるような感じで視線を凝らしていました。

今回の吉本さんのパフォーマンスから受けた印象というのは、まさにこれに近い感覚でした。一見無造作にギターをかき鳴らしているかのように見えなくもないですが、その流れの中で、まるで飛び跳ねた水飛沫に光が煌めくかのように、印象の強い音を意識的にまたは意図的に無意識にして織り込ませていく状況は、吉本さんが普段からギターという楽器にどのように向き合い対話を繰り返しているか伺い知れるところでもあり、その鋭敏な感性をパフォーマンスにフィードバックさせていることを強く感じさせるものでありました。

ライブが終わった後に少しお話をさせていただいたのですが、様々な変節があって現在はこのスタイルに流れついているとのこと。もちろん今後も変化していく可能性はあるわけで、あくまで自分が面白いと思える音が生まれるシチュエーションを成立させていくことに心を砕くといった吉本さんの姿勢に、また機会があればこの音に触れてみたいとの思いも強くなりました。

と、この辺りまでは昨年まで書きかけていた文章です。あまりにも時間が経ってしまって恐縮なのですが、今回はあきらめずにアップすることにいたします。というのも吉本さんの「深夜廟」は4か月に1回の開催が予定されており、今度はきたる3月7日の深夜、正確に言えば3月8日の2:00から開催される予定だからです。今回もまたあの独特の音体験に触れてみたいと思いは強くなってまいりました。もしこの文章を興味を持ってお読みになっている方がいらしたら、ぜひご一緒にこの体験を共有できたなら嬉しい限りです。

喫茶茶会記 深夜廟
地下水脈をさぐる振り子のように茶会記の夜に漂う
気配を掬い取る一人即興演奏会「真夜中の振り子」

吉本裕美子 (guitar) ソロ

2014年3月7日(金)
深夜(土曜朝) 26:00~28:00
料金 2,000円 (1ドリンク付き)

綜合藝術茶房 喫茶茶会記 新宿区大京町2-4 1F
http://sakaiki.modalbeats.com/
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