朝から東銀座へ向かう。

木下惠介監督生誕100年記念映画『はじまりのみち』を観る為だ。

みやび雅也の出直し日記-201306171016000.jpg久々に東劇へ来た。

10時15分頃到着。上映開始は10時半。観に来ている観客の中で、どうみても自分が一番年下だな…。

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『はじまりのみち』(2013/松竹/96分)

戦時下の日本、戦意高揚映画の製作を要求された時代。松竹の映画監督・木下惠介(加瀬亮)の撮った映画『陸軍』は、軍部から「最後の場面が女々しすぎる。こんな奴に特攻隊の映画を撮らせるな」と、次回作の撮影を中止させられてしまう。腹を立てた木下は辞表を提出、故郷の浜松へ帰ることに。

実家には寝たきりの母(田中裕子)がいた。戦況はますます悪化する一方。母を山間部へ疎開させたかったが、バスは揺れるので寝たきりの母には耐えられない。惠介はリヤカーに母を乗せて約60㎞の道程を歩くことを決意する…。

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上映中、隣の席にいた年輩の女性客が、映画を観ながら終始泣いていて、自分も思わず貰い泣き…。


一番泣けたのは、木下に便利屋の男が話しかけるシーン。便利屋の男は木下が映画監督だとは知らずに『陸軍』について語り始める。

「あんた『陸軍』って観たかい?田中絹代が演じる母ちゃんがさ、戦争に向かう息子を最初は「泣くから見送らねえ」って言うのに、ラッパの音を聞いて堪らず行軍の列を追い掛けるんだ(ここで『陸軍』のラストシーンが挿入される)。俺は泣いたね。あんな映画、また観てえなぁ…。」

この会話や母からの説得で、木下惠介は松竹に帰ることを決意…。

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母子の愛、木下惠介愛に溢れた映画だ。ラスト、木下監督の数々の映画のワンシーンが登場し、それを観ていて何故か泣けてしまった。先日まで新文芸坐でこの映画に合わせ木下惠介特集を上映していたが、先に『はじまりのみち』を観ておけば良かったなと思った。

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終映後、今年3月に閉館した映画館、銀座シネパトスの跡地へ…。

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まだ数件の飲食店は営業中だが、劇場のシャッターは全て下ろされていて、なんとも寂しげな様子。

せっかくなので、お食事処『三原』で昼食。カツカレーを注文。

みやび雅也の出直し日記-201306171240000.jpg昔ながらのカレーの味に、お腹も心も満たされる。




地下鉄銀座線で渋谷へ。

三日連続でシネマヴェーラ渋谷。


『新兵隊やくざ 火線』(1972/勝プロダクション/92分)

戦争末期、中国の村に陣を置く前線部隊に送られた大宮と有田。暴力的な神永軍曹は村長の幼い息子をスパイと決めつけ、大宮に処刑するよう命ずるが…。中国人に対して非道の限りを尽くす鬼軍曹を宍戸錠が憎々しげに演じる。『兵隊やくざ』シリーズの最終作であり一作目を監督した増村が再登板した本作は、大映ではなく勝プロ製作・東宝配給だったためか、上映の機会も少なくDVD化されていない。


『無宿(やどなし)』(1974/勝プロダクション/97分)

刑務所で知り合った錠吉と玄造、そして錠吉が足抜けを手伝った元女郎・サキエの三人は、沈没船から軍用金を引き上げようと海辺にやってくるが…。饒舌なカツシン、寡黙な健さん、そして梶芽衣子を主演に迎えた、ロベール・アンリコ監督『冒険者たち』へのオマージュ。降りしきるセミしぐれ、海に落ちる夕陽、海鳴り…。「日本のルルーシュ」斉藤耕一が、晩夏の山陰と北陸の光景を叙情豊かに切り取った、ロード・ムービーの秀作。

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終映後、池袋に戻り東急ハンズ等で買い物をしてから帰宅。思いがけず三連休になってしまったが、いい気晴らしになって良かった。