乗法の意味についてのメモ | メタメタの日

かけ算の意味については,次のような場合が考えられる。


(1)数×数

(2)量×数

(3)量×量


 数と量の違いは,量を抽象化したものが数と考えます。量の何を捨象したのが数かというと,次元でしょう。

(2)と(3)は,次のように考えられます。

(2)について。

 外延量×数=外延量

 左辺の外延量と右辺の外延量は同じ種類(次元)の外延量となります。数に次元がないのですから,数をかけても次元は変わらない。外延量を数だけ倍したと考えられる。

 外延量×倍=外延量

整数倍の場合は,累加(足し算の延長)とも考えられる。

 内包量×数=内包量

 という乗法も考えられるが,この場合のかけ算は足し算の延長ではありえない。

3%×2=6%,という式には意味が認められるが,3%+3%=3%でしかない。


(3)について。

(ア) 内包量×外延量=外延量

(イ) 外延量×外延量=外延量


(ア)の左辺の外延量と右辺の外延量は種類(次元)が違います。

(イ)の左辺のふたつの外延量は同種類(同次元)でも異種類(異次元)でも構わないのですが,右辺の外延量は左辺の外延量のどちらとも種類(次元)が異なります。

 つまり,(ア)は,外延量÷外延量で新しい量(内包量)を生み出し(定義され),(イ)は,外延量×外延量で新しい量(外延量)を生み出す(定義される)と考えられます。

 加減という演算は新しい量を生み出しません。というより,同じ種類の外延量でなければ加減という演算ができない(定義されない)し,演算の結果の和も差も元と同じ外延量です。しかし,乗除は,新しい量を生み出す演算である。

 しかし,(ア)の内包量は,外延量の商として定義される前から,「1あたり量」として存在するものがあります。ウサギ一羽あたりの耳の数は,何羽かのウサギの耳の総数をウサギの総数で割って定義される前から一羽あたり2つと決まっている。自動車一台あたりのタイヤの数は4個,片手あたりの指の数は5本と定義前から決まっている。

 内包量が比例定数となると,内包量×外延量は,正比例関数となる。正比例関数の「比例定数×外延量」の形は,(2)の「数×量」と同じだが,(2)の発展ではなく,(3-ア)の発展が正比例である。


 (イ)は,異種の外延量の乗法が新しい外延量を生み出すという,加法の延長(累加)ではありえない乗法の特長をあらわしている。5m+3kgの加法は意味がないが,5m×3kg=15kg・mは,3kgの物を5m動かした仕事量という新しい量をあらわす。