「柳橋物語」

テーマ:
柳橋物語・むかしも今も (新潮文庫)/山本 周五郎
¥580
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勝手に採点 ☆☆☆


「柳橋物語」


突然告白された幼馴染の言葉を忠実に守り通したおせん。


しかし、突然の火事や大水により唯一の肉親や理解者を
失い、記憶喪失、恋人との別れ、孤児の育児など過酷な
運命に翻弄され続けた悲しい生涯を描く。


「むかしもいまも」


のろま、ぐずと蔑まれ続けた愚直な男が貫き通した一本
気な生き方。思いを寄せる人の幸せのみを願い、最後に
手にする慎ましい幸福。


どちらも前半の下りが過酷で主人公に同情を禁じえない。

それでも前向きに生きるたくましさは、現代人が忘れた
ハングリーさを思い出さしてくれる。


長屋生活の互助精神や貧乏暮らしで培われる強靭な精神。

人生に疲れたときに手にとってみたくなる一冊。

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「雨の山吹」

テーマ:
雨の山吹 (新潮文庫)/山本 周五郎
¥580
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勝手に採点 ☆☆☆☆


表題を含む10篇の短編集。


無名の武士たちの絶妙な悲哀を描き、心に残る名作たち。


「雨の山吹」

家族を裏切り失踪した妹を斬るため、探索の旅に出た兄が
慎ましくもひたむきに生きる彼女の生き様に触れ、心を打
たれ成敗を断念する。


「喧嘩主従」

殿様のけんか相手と自負して来た家来が、勇み足でしでか
した始末。いつものことかと誰も気にとめなかったものの、
彼の婚約者が聞き及び、家来としてあるまじき振る舞いと
非難し一方的に離縁を宣言する。


その家来はそれから数年姿を消し、殿様の国替えに伴い帰
国したところ・・・。


時代小説にありがちな、武士道や男臭さだけでなく女性の
役割、気心にも焦点を当て、人と人との微妙なつながりを
描く手法には好感が持てる。

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赤ひげ診療譚 (新潮文庫)/山本 周五郎
¥580
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勝手に採点 ☆☆☆☆


江戸の公儀診療所小石川療養所を取り仕切る「赤ひげ」こと

新出去定。


腕っ節が強く、話し方も一見乱暴だが、腕はぴか一で
幕府・各藩の要人にも多大な信頼を寄せられている。


一方で貧民のために無料出張診療を自主的に行い、金がなく

医療の施しが受けられない町人を日夜助けている。


一方、長崎から遊学から帰国した医者見習いの保本登は、出世

意欲満々で幕府の御典医になる目論みをもっていたところ、


はからずも小石川へ送られ、不本意ながら働くことになるが・・・。


古臭さを全く感じさせず現代にも通用する内容。


赤ひげの助けを借りながら様々な患者に出会い治療していくことで、
保本が人間的に成長を遂げる様が見事に描かれている。


エリート意識丸出しであからさまに相手を見下す態度は「県庁の星」
の主人公そっくり。


しかし、私生活では婚約中の彼女に逃げられ、仕事面でも不本意な扱
いを受け挫折を味わいながらも、赤ひげの厳しく温かい指導により
第二の赤ひげを目指すことになる。


ラストのすっきりとしたまとめ方、保本の潔さが爽やかな感動を呼び
起こす。

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「日日平安」

テーマ:
日日平安―青春時代小説 (時代小説文庫)/山本 周五郎
¥600
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勝手に採点 ☆☆☆☆


初めて手に取る山本周五郎作品。


作者の名前だけは知っていたものの、本書の内容を全く
知らない者にとっては思い書けない珠玉の短編集に喜びを感じる。


最近の小説にはない人物に対する微妙で丁寧な心理描写が深い味
わいを呼ぶ。


短編だけに感想を書くのが難しいのが難点。


それでも、表題となっている「日日平安」は格別。


仕官を望む浪人が切腹のマネまでして引きとめた若者。

彼は藩の有力者の婿養子で、職にありつくにはもってこいの人物。


様々な知恵を絞り、策を労して彼の望みを適えてやり仕官も当然
といった状況で、なんと浪人は彼の前から姿を消そうとする。


この相反した行動と思考がユーモラスに描かれてる。


策士なのかお人よしなのか、浪人の機微が絶妙で
特にラストは思わずニンマリさせられる。