「被害者は誰?」

テーマ:
被害者は誰? (講談社文庫)/貫井 徳郎
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勝手に採点 ☆☆


貫井氏にしては珍しい短編集。


警視庁捜査一課の桂島刑事が、学生時代の先輩である
ミステリー作家・吉祥院慶彦に依頼する難事件の数々。


明快な推理と横暴極まりない態度で事件を解決に導く
痛快ミステリー。


設定が東野氏の湯川助教授や法月氏の倫太郎ものと
変わるところがなく全く新鮮味に欠ける。


そもそも捜査情報を第三者に公然と漏らしてしまう
のはいかがなものか。


さらにいただけないのは、情緒や感情に迫ってくる
「心」がない作品であるということ。


単に謎ときとトリックに重点を置いたパズルゲーム。

この手の作品は時間つぶしにさえ使いたくない。

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神のふたつの貌/貫井 徳郎
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勝手に採点 ☆☆


教会を営み人格者の牧師を父に持つその息子のお話。


ある日、牧師が教会内にヤクザに追われた優男を匿ったことから、

平穏だった暮らしは思わぬ方向へ。


母とその男が乗った車がガードレールを突き破り谷底へ転落。

二人とも帰らぬ人に・・・。


それから成長した息子は、父と同様に牧師となる。

そして、自分の母と同様に妻を交通事故で失う。


まったく自分と同じ境遇におかれた息子。そんな彼が犯す罪とは!?


はっきりいって大いに期待はずれ。


牧師の仮面をかぶった殺人狂の変質者。


自分の理解者を時計台から突き落としたり、妊娠した恋人に殴る蹴

るの暴行を加えて流産させたり、熱心な信者に自殺を教唆したりと

やりたい放題。


それも然したる理由もないのだから、納得できるはずもない。

都合よく神とは?みたいな議論を入れられても全く理解できない。


そのうえ、主人公を軸にその父親と息子の三代に渡る、それこそ大河

ドラマなみのスケールをあざ笑うかのような矮小な設定。


息子も自分と全く同じような罪を犯してしまうため、父親と息子を混同

せずにいられない。


作品によって出来の良し悪しがはっきり分かれてしまう筆者が挑んだ

新境地は見事失敗。

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「慟哭」

テーマ:
貫井 徳郎
慟哭

勝手に採点 ☆☆☆☆


首都圏で頻発する連続幼女殺害事件。


警視庁捜査一課長を勤める佐伯は、キャリア出身だ異例の人事

で捜査指揮を取ることに。捜査員たちの必死さをあざ笑うかのよう

に繰り返される惨劇。


長引く捜査と佐伯自身のスキャンダルも重なり、警察内部でも不

協和音が。黒魔術を信仰するカルト宗教団体が不気味に絡まり

あいながら事件は驚愕の最後を迎える。


時系列に組み立てられたと思わせる文章構成、犯人の性は松本。

これを鵜呑みにするとまんまと騙される。


横山作品にも通じる警察小説の匂いがあるものの、読み進めるの

が億劫になるほど暗く重い展開。


それでも読者を引き込む筆力はたいしたもの。


ただ残念なのは、キャリア警察官僚が連続殺人犯というあまりに

ありえない設定、あいまいな犯行動機と騙しうちの文章構成。


彼の娘が殺された時期、捜査を指揮していた時期、犯行を重ね

ていた時期の先後関係が非常に分かりにくい。


そして「死んだ娘の再生のために人の子を殺める」という子を持

つ親なら必ず違和感を覚える動機はいただけない。

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貫井 徳郎
追憶のかけら

勝手に採点 ☆☆☆☆☆ビックリマーク


自身の過ちが元で突然妻を交通事故で失った大学講師・松嶋。


そんなとき、彼の元に戦後活躍し、謎の自殺を遂げた作家・佐脇

依彦の未発表手記が持ち込まれる。


松嶋は独自の調査に基づいてこの手記を学会に発表することで

立身出世し、妻の両親に引き取られた愛娘との生活を夢見るが・・・。


二転三転する黒幕探しで一体だれがホントの黒幕なの?と全く予

想できない展開に舌を巻く。


そして最後はハッピーエンド&ほろりで締めくくり。

これだけのプロットを完成させた筆者には脱帽。


物語は、松嶋が生きる現代と佐脇が自殺するまでの戦後間もない

時代が対比され、全く異なる二つの世界が複雑に絡まりあう。


各々かなりの文量で手記を読み終えるころには、一冊読んでしまっ

た気分。


ところが、宮脇を陥れた陶磁器メーカーの社長が登場するあたりか

らジェットコースター的展開で、まったく筆者の思う壷に、誰もが松嶋

に感情移入し、誰が敵か味方か五里霧中。


また、ニセの祖母に騙されるあたりは、「死んだ奥さんは決してそんな

ことを望んでないはず。」と完全に誘導させられ、最後はやっぱり作り

話だったかと落とされ納得。


犯人は現実的にはいない、ありえない設定で、それはそれで突っ込み

たくなる気持ちはあるが、ラストの手紙がそんな思いを一蹴、爽やかな

感動を運んできてくれる。

貫井 徳郎
殺人症候群

勝手に採点 ☆☆


世にはびこる少年たちの凶悪犯罪。

彼らに身内を殺された、ある犯罪被害者の会に不穏な動きが。


偶発する事件・事故に偽装されて、引き起こされる復讐劇。

警察はそれを阻止できるのか?


自己中心的な理由で天誅を下す人たちのオムニバスストーリー。


一見、つながっているようだが、

ストーリー全体に統一感、広がりなくバラバラ。


子供のために殺人を重ねる看護婦や恋人のために実行犯

になる警察官など、彼らの動機が現実性・説得性に欠ける。


さらに不可解なのが、情報の機密性、指揮命令系統にまったく

無頓着な謎の警察機関の存在。


一般警察官や自分の家族にその存在をペラペラ喋ってしま

ってはいかがなものか。


上司と部下の関係は一体どうなっている!?


怪盗ルパンのごとく神出鬼没で現場から華麗な逃走を図る

元警察官のメンバーもスーパーマン的活躍で非現実的。


とにかく、いたるところ腑に落ちない点が多すぎる共感できない物語。