重松 清
その日のまえに

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


大切な人との永遠の別れをテーマにした連作短編集。


不治の病に冒された本人の絶望、想いと、母、息子、妻、友

人との死別によって残された者の悲しみ。


それでも前向きに生きようとするひたむきさ、健気な姿を正面

からきちんと描いた印象。


特に家庭をお持ちのお父さん方にはおすすめ。

久しぶりに電車の中で涙が止まらなくなった。


特に題名にもなっている「その日のまえに」、「その日」

「その日のあとに」の三部作は、その前の短編とも連動して

いてよりいっそう深い感動が味わえる。


奥さんには悪いが、自分に置き換えたとき、こんな冷静に、

そして静かな生活を妻と過ごせるだろうか・・・。


現実に起ったらあまりに厳しいシチュエーションに気が動転

してどうにかなってしまうに違いない。


文中でもそれを知った直後とそれから気持ちが落ち着いて

くる過程、それでもしばしば訪れる悲しみを丹念に描く。


我々旦那諸氏よりも、もっとつらいのは子供たち。

息子たちの悲しみ、健気さがいやと言うほど伝わってくる。


今ある生活、家庭の大切さを改めて実感できるとともに、

思わず、がん保険に入っておかなきゃと痛感。

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重松 清
いとしのヒナゴン

勝手に採点 ☆☆☆


ある地方都市の比奈町に出現した謎の怪物。
町に因んでつけられた名前は「ヒナゴン」


その実態解明のため町役場に作られた「類人猿課」
に勤める信子を中心に語られるドタバタ劇の顛末とは。


重松氏得意の郷愁を誘いながら、過疎や農村の後継
者問題を「ヒナゴン」騒動に絡めながら独特のタッチ
で丁寧に描いている。


さすがに珍獣ヒナゴン探索劇でストーリーを引っ張る
には文量が長すぎる。


着ぐるみのニセモノ発覚や住民からの誤報なども想定
内のエピソードで意外性なし。


一方、町長のイッチャンはいい味出してる。ド田舎の
元ヤンキーで夢と男気を忘れないちょっとした独裁者。


主人公をライター崩れの信子にするよりは、元同級生
の教師を主体にしたほうが入りやすい気がする。


信子とその教師、役場に勤務する西野の関係も曖昧な
まま物語は終息する。


いいかげんみんないい大人なのだから、ちょっとした

愛憎劇を繰り広げてもいいんじゃない!?


登場人物があまりにみんな「いいひと」で純粋すぎる
のもストンに腹に落ちてこない理由のひとつ。


特に町長選はあまりに美談になり過ぎ。

重松氏特有のペーソス漂う作品を期待したい。

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著者: 重松 清
タイトル: 送り火

勝手に採点 ☆☆☆☆☆

とある私鉄沿線住人たちの悲喜交々を様々な視点から迫る
ハートウォーミングストーリー。

久しぶりの重松作品。子供や老人が主人公のものが結構あって
敬遠していたのだが、ようやく年代が合うものを発見。

30~40歳台のサラリーマンの悲哀を書かせたら、共感のあまり
思わず「ホロリ」とさせられる。

特に前に読んだ『熱球』や『流星ワゴン』は良かった。
このジワッと広がる「ホロリ」加減が真骨頂。

ただ、最初の方は珍しくホラータッチでビックリ。
でも怖さよりほのぼのさが前面に来るあたりはさすがというところ。

おすすめは「かげぜん」と「送り火」
どちらも爽やかな感動が涙を誘う。

前者は息子を失った同世代の両親が主人公。

子を持つ親として、同じ状況に追い込まれたとき、立ち直れる
かかなり不安な気持ちに。夫婦が協力して悲しみを克服する様
が胸を打つ。

後者は一児の母親とその両親のお話。

これも子供を持って夫婦生活を営んでいると急逝した父親や女手
ひとつで娘を育てた母親の気持ちが痛いほど理解できる。

自分より年下の両親と訪れる遊園地のファンタジックな雰囲気に
包まれた世界が悲しくも美しい。

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