「町長選挙」

テーマ:
町長選挙/奥田 英朗
¥1,300
Amazon.co.jp

勝手に採点 ☆☆☆


巨人軍オーナーのナベツネやホリエモン、女優の黒木瞳
をモチーフに強烈なブラックユーモアで彼らを生活ぶり
を描く有名人編と東京の過疎の村を舞台に繰り広げられ
る強烈な買収選挙を描く短編集。


すべての作品に登場するのはトンデモ精神科医伊良部と
美貌の看護婦の変態コンビ。


「空中ブランコ」や「インザプール」など、奥田作品に
はおなじみの二人だが、今回もやってくれてます。


ぶっとい注射を打つ注射マニアに吸い寄せられるように
群がる患者達。彼の持つ独特なオーラが患者を引き付ける。


有名人編は対象者がすぐに限定されてしまうので、マスコ
ミを通じた彼らのパーソナリティに引っ張られ、それほど
意外性、創造性に欠ける。要は妙に納得してしまう展開に。


一方、題名にもなっている町長選挙はドタバタコメディー。


ここまで突っ走しられると細かい不整合や現実感のなさは
どうでも良くなる。


少々物足りないのはラスト。尻切れトンボの感。

AD

「家日和」

テーマ:
家日和/奥田 英朗
¥1,470
Amazon.co.jp

勝手に採点 ☆☆☆☆


主婦や作家、サラリーマンなど、彼らにとっての
マイホームで巻き起こるちょっとした日常を切り
取った短編集。


こういった軽妙でユーモアセンス溢れた文章では
この人の右に出るものはないなという印象。


同世代が主人公とあって、一部を自分に重ねて
読むことが出来るので感情移入もたやすい。


別居中に自分の理想の部屋を作り上げる夫の

行動などは、やってみたい!と思わせる典型。


ネットオークションに嵌って、売っちゃいけない

ものまでに手を出してしまう主婦の心情もつい

自分に重なって理解できる。


作家が主人公の一編は、奥田氏がモチーフに

なっているのだろう。お金持ちも彼らなりの悩み

があるということ。


奥さんに気を使って、書きたいネタをボツにする

という悔しいこともあるらしい。

AD

「ララピポ」

テーマ:
奥田 英朗
ララピポ

勝手に採点 ☆☆☆☆


表紙絵から伺えるように大胆な性描写で若者の風俗をリアルに、

ブラックユーモアたっぷりに描いた軽いタッチの連作短編集。


オタクのフリーライターやキャバクラのスカウトマン、図書館

で相手を物色するデブ&ブスの元OL、中年オヤジのの官能

小説家など超個性的な面々が主人公。


オムニバス形式、ドタバタ風なのでまったく肩がこらずに楽

しめる。こんなのを読むと久しく出かけていない渋谷は、性

産業のメッカでなんだか恐ろしい街に思えてしまう。


援助交際に罪悪感を持たない女子高生や水商売のスカウト

に引っかかる若い女性、AV出演してしまう中年女性など、

歪んだ人間関係に生きる女性たち。


一方で、それに自ら身を投じてしまう、オタク、公務員、若者

といった情けない男性たち。


性を通してつながる退廃的、享楽的な交流と最悪の状況には

陥らないものの、なんとも物悲しい結末のコントラストが鮮やか。


もてないながらもブ男に興味を持ち、ドラマチックな本番行為を

自ら隠し撮りして売り込む女性。これを見るとやっぱり女は強く

てたくましいと実感。ほんとにいたら怖いけど。

AD

「東京物語」

テーマ:
奥田 英朗
東京物語

勝手に採点 ☆☆☆☆ ニコニコ


1980年代を中心に当時の若者の仕事ぶりや学生

生活を自叙伝的に描く青春群像。


設定とは10年ぐらい後の年代だが、思わず自身の

学生の時分や新人時代を思い起こさせ懐かしい気分に。


特に上京したてで、東京の街をさまよったり、心細くて友達

の家を訪ね歩くあたりは同様の経験を積んだくち。


大都会のエネルギーや熱気に押され、安アパートの部屋で

悶々としていた時間もあったっけ。


青春のひとコマを思い出したい、ノスタルジックな気分に浸り

たいあなたにおすすめ。

奥田 英朗
イン・ザ・プール

勝手に採点 ☆☆☆☆


人を深刻にさせない天性のキャラクターを持つ精神科

医伊良部。


またまたヘンテコな症状で苦しむ患者たちを救うべく

奇天烈な対処療法を実行する。


自己中心的性格・マザコンの中年デブで絶対良い所が

ないはずの人物ながら、その天真爛漫さで知らずに知

らずのうちに人を引き付け、症状を改善させる。


天賦の才能とはまさにこのこと。


今回の患者たちは、プール依存症の編集者、ケータイ

依存症の学生、あそこが立ちっぱなしの会社員、強迫

観念症のコンパニオン、ライターと多種多様な取り合わせ。


彼の診療は至ってシンプル。栄養注射を打って、その後は

患者と一緒に生活に溶け込んでいくこと。


伊良部のあまりの馬鹿さ加減に、自分がしっかりしなきゃと

思い、症状が和らぐと同時に、そんな伊良部に癒されしまう。


ほんとにこんな先生がいたら大変だが、一度は訪ねてみた

いもの。

奥田 英朗
空中ブランコ

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!


中年のデブで実家の病院で精神科医を勤める伊良部。

変人の彼の下に集まる患者たちも、かなり変わった病

状で苦しんでいる。


空中ブランコに乗れなくなった空中ブランコのリ、1塁へ

の送球が出来なくなったプロ野球選手、小説が書けなく

なった女流作家、破壊衝動に駆られる精神科医など。


そんな彼らにぶっといビタミン注射を打ち、自分が存分

に楽しみながらも患者を開放に導く過程をユーモアた

っぷりに描く。


題名にもなっている「空中ブランコ」は、テレビドラマで

確か阿部ちゃんが変な精神科医を熱演。


ここで描かれる先生は、阿部ちゃんとはかなり隔たりの

ある不細工&デブだが、なぜか好感が持てる。


抱腹絶倒とまではいかないものの、相当ヘンテコな医者

の登場に拍手喝さい。


彼の物事に熱中する姿に感化され、気づかされ、立ち直る

きっかけを掴む患者たち。


強迫観念にとらわれる彼らを救う手立ては、ありのまま、

あるがままに生きる自然さ。


ストレスの多い現在社会で、そうやって生きることが一番

難しいが、それを体現する彼に共感を覚えるのだろう。

「邪魔」

テーマ:
著者: 奥田 英朗
タイトル: 邪魔〈上〉

勝手に採点 ☆☆☆

数年前に交通事故で妻と義母を亡くした刑事久野。

東京郊外にあるメーカーの仮事務所で起こった放火事件
の捜査を進めるうちに明らかになる犯行動機とは。

不良少年や暴力団、平凡な主婦らを巻き込みながら事件
は思わぬ方向へ展開していく。

登場人物が多く、複数の話が同時展開されるので、若干
分かりづらいところはあるものの、それぞれが単独で膨
らませて一冊の本になりそうな話なので引きこまれる。

特に主婦のパート先であるスーパーマーケットでの社長
や店長、パート仲間との複雑な人間関係と怪しげな消費
者運動家との関係はかなりリアル。

国産車の購入や遊興費の捻出のため、セコイ横領に手を
染めるしがないサラリーマンの末路は哀れで物悲しい。

それに比べて突っ込みたいのは久野と義母の関係。


もう少し親切に導線を張っておいてくくれば、だまされ
た気分にならないのに。

ラストでの主婦の意外な脱線振りとスカッとしない尻
すぼみ気味の結末に少々消化不良感。

著者: 奥田 英朗
タイトル: ウランバーナの森

勝手に採点 ☆☆☆☆

奥さんの祖国である日本で休暇を過ごすジョン。
軽井沢の別荘では、親子水入らずでゆったりとした時間
が流れる。

しかし、重度の便秘に悩まされ近所の病院へ通ううちに、
過去に出会って亡くなった人たちと遭遇するように・・・。

テレビで放映された「空中ブランコ」もそうだったが、
独特で不思議な空間や間を引き出すのがうまい作家だと実感。

本書では、ジョンレノンを主人公に彼の日本で過ごした
であろう日々をリメイクする試みに挑戦している。

人は誰でも誰かにひどいことをしたり、言ったり、されたり
という経験があるはず。

そんなトラウマに悩まされる夫を助けるため、一芝居打つ
妻のケイコはイジラシイ。

結局、夢なのか治療なのか現実なのか妖しい幻想的な再会に
心を癒され、便秘も解消したたジョン。

ラストを飾る灯篭流しがさらに気持ちを穏やかにしてくれ、
黄泉の国へ帰る人たちへの想いを強くする。