アンボス・ムンドス/桐野 夏生
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勝手に採点 ☆☆☆


桐野氏特有の暗さを内に秘めたひと癖もふた癖もある

女性たちが主人公の短編集。


読後の爽快感からは程遠いが、女性の怖さを実感できる。


特に印象深かったのは、実家のお寺に居候するハイミスの話。


義父や弟への強い憎しみと実父に対する憧憬、自分を守って

くれない母に対するいらだち。


複雑な胸中を見透かすように現れる親子。


彼女が死んでしまった原因は、自らが作り上げた憎悪の念が

子供を通じて自分に跳ね返ってしまったからなのだろうか。

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水の眠り 灰の夢/桐野 夏生
¥660
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勝手に採点 ☆☆☆☆


時代は東京オリンピック前の1960年代。


トップ屋と呼ばれるスクープ専門の記者・村野善三が、連続爆弾

魔・草加次郎の追跡や自ら巻き込まれた女子高生殺人事件の真

相究明に挑む活躍劇。


全く理解不能な題名からは想像できない面白さ。

「トップ屋・村野善三」の方がよっぽど良い。


当時の時代背景描写のリアリティ、事件記者たちのチームワーク、

軋轢、刑事たちとの駆け引きなど、真に迫る描写で息をつかせない。


ストーリー展開のうまさが随一の横山秀夫氏や独特の世界観、文章

で村上ワールドを繰り広げる村上春樹氏など、すばらしい作家は数多

く存在するが、筆者の「読ませる文章」を描く力は相当なもの。


ついつい引き込まれラストまで読者を手放さない力強さを感じる。


今回はコテコテの男世界を描いた作品にも拘らず、女性であるハンデ

キャップを全く感じさせない。


欲を言えば草加次郎は第三者であった方が、よりリアィティが増して良

かった気もする。爆弾魔と殺人犯の親子というのも・・・。


主人公の村野は、別作品で主人公となる村野ミロの父親という設定

らしい。ぜひ彼女が主役のも読んで見たいところ。

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「残虐記」

テーマ:
桐野 夏生
残虐記

勝手に採点 ☆☆☆


小学生時代に誘拐され、1年以上の監禁生活を

送った女性小説家小海鳴海。


35歳になった彼女の元にある一通の手紙がりつけられる。


それは長い獄中生活を経て出所した犯人からだった。


OUTやグロテスクなどにも共通する、女性の心理描写、特

に特異な性的嗜好から生まれる複雑な精神世界はユニーク。


特殊な環境下で精神的に結ばれた若者と女子小学生の間に

生まれた葛藤と苦悩。


決して常人には理解できない世界に圧倒される。


当時、検察官として事件に携わった関係者が後に彼女の夫と

なる奇妙なめぐり合わせや若者と生活を共にしていた聾唖者

の存在も物語の陰鬱さを一層引き立てる。


しかし、一体失踪の理由は何なのか。事件の真相は何だったのか。

それが明かされない分、消化不良感が残る。

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「ダーク」

テーマ:
著者: 桐野 夏生
タイトル: ダーク

勝手に採点 ☆☆☆☆

血の繋がらない父に長年反発し、遂には目の前で見殺しにするミロ。
それから転落人生が始まり、亡き父の盟友であった鄭、内縁の妻で

盲目の久恵、自らの友人でゲイの友部から執拗に追われるようになる。

偶然出会った韓国人徐の愛人となって逃亡を図るがその徐が凶弾に

倒れる。追い詰められたミロを待ち受ける運命とは・・・。

500ページに及ぶ長編だが飽きさせることなく一気に読ませる。
唐突に感じる光州事件の話題も長編のアクセントになっていて○。

事件の発端となった恋人の自殺や前夫のエピソードにあまり触れら

れていないのもミステリアスな雰囲気を盛り上げる。

次々と巻き起こる事件がスピード感とリアリティを盛り上げ、息つく暇
もないほど。

ただ、韓国での銃撃事件やレイプ犯への復讐、日本への逃避行場面

は、当局の追及が甘すぎてあっさりしている感は否めない。

ミロや久恵に突然訪れるダークな凶暴性がなぜ頭をもたげるのかも謎。
特に久恵は友部も手なずけるなど、あまりの変貌振りに女の怖さを感じる。

とりわけ不可解だったのはミロの「40歳で死ぬ!」宣言はどうなった!?
これがポイントになると思いきや全く無視した形でストーリーは進む。

中盤ではこれから「皆殺しか!?」と思わせるも、出産でトーンがガラッと
変わって、あれほど憎みあっていたのにかなりアッサリ目へ。

おかげでいい意味で期待を裏切られる展開。

桐野氏の描く女性像は不気味に意地が悪く、暗い印象でなおかつ、何を
やらかすか分からない狂気と危うさを秘めている。

「グロテスク」

テーマ:


著者: 桐野 夏生
タイトル: グロテスク

勝手に採点 ☆☆☆☆(☆が5個が最高得点)

早速今日読み終わった本の感想を書きたいと思います。
以前から桐野氏の著作には興味があったけど、期待はずれ
な感じがしてならなかった。特に「光源」。

大変失礼だがストーリーも忘れてしまったくらい・・・。

それに比べると「グロテスク」は読み応えのある作品に仕
上がってます。

某OL殺人事件を題材にして、その被害者の異常な行動の
真意を汲み取ろうと人間性を掘り下げます。

ある姉妹とそれを取り巻く人々のまさにグロテスクな人間性。

姉の常に悪意満ちた行動、妹の怪物的な美貌から引き起こ
される事件の数々、和恵の狂気に満ちた奇行が次第に明ら
かになり、まさに胸くそ悪し!

こういうエログロ的な物語は好きだけど、三者三様のグロ
テスクな生き様をここまで辛辣、リアルに代わる代わるや
られると結構食傷ぎみ。

ただ、敢えて言うなら、ラストにかかる展開がちょっとこ
じつけ気味だったかな。全盲の美少年なんて設定を今時使
うのがね。

セックスや異性(同性)に対して何を求めるのか、よく考
えることもたまには必要ってこと。
女性の内面って怖いほど複雑。