「砂漠の薔薇」

テーマ:
新堂 冬樹
砂漠の薔薇

勝手に採点 ☆☆


名門幼稚園への受験競争を勝ち抜くため、サラリーマンの夫を

持つ主婦・のぶ子は死に物狂いで愛娘を叱咤激励する毎日。


しかし、弁護士や医者、金融関係の家庭など、良家子女が集う

予備校の奥様グループからは、蔑み軽蔑され孤立した状態。


そんななか、グループのリーダー的存在でのぶ子の幼馴染でも

ある十和子の娘・こずえが失踪する・・・。


数年前にお受験戦争が引き金となった同様の事件が起ったが

騒動的には完全なる焼き直しで目新しさがない。


偏執狂の主人公もいつもより迫力がなく、ありきたり。


主人公が十和子とこずえを混同しているあたりは、読者にとって

も理解しがたく、一体どうなっているの?的感じ。


のぶ子の夫に対する態度はうなずけるとしても、子供に対する

行動や愛情表現はどうも中途半端。


心と心の交流が感じられない、上っ面をなぞったよう。

ただ、こういった親子関係は珍しくないかもしれない。


最近起った秋田の事件や頻発する虐待事件を見ても、親になり

きれない大人が多いと痛感させられる。

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新堂 冬樹
背広の下の衝動

勝手に採点 ☆☆☆


中年サラリーマンなら誰もが抱える不平不満が増幅し

ついにそれが爆発するエピソードを描いた短編集。


そこまで行ってしまう行動は理解できないものの、彼ら

の心情は痛いほど分かる。


特に上司に理不尽に叱責され、妻からは不平不満、娘からは

人間扱いされない男は、典型的日本型会社人間。


彼は不幸な結末を迎えるが、煩悩からは開放されるだろう。


一方、娘の家庭教師と妻の間に、一方的な嫉妬を抱える旦那

の心境は全く同感できない。


結末もこじつけに近く、作り物のイメージが払拭できないので、

ひねりを効かせて欲しかった。


強烈なコンプレックスを抱える主人公たちが繰り広げるホーム

ドラマには心休まる暇がない。

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「炎と氷」

テーマ:
新堂 冬樹
炎と氷

勝手に採点 ☆☆☆

容姿も性格も全く異なる学生時代からの親友、
世羅と若瀬。

二人の共通点は金に対する異常なまでの執着心。

九州から上京し、闇金融業者を営む二人がある顧客
をめぐってバッティングしたことから訪れる悲劇。

久しぶりの新堂作品の王道。

闇金を舞台に繰り広げられるだまし合いで登場人物も
分かりやすい。

見るものを震え上がらせるような外観の大男、ホスト
クラブで成功する優男、キャバクラで人気の美女、気
の狂った色白のデブ、暴力団、チンピラetc・・・。

まさにオールスター総出演の感。

これはこれで楽しめるが、気になるのは友情を反故に
してまで取った面子なのに、ラストではなぜか友情に
回帰している点。

それなら最初から折半にすればよかったのに・・・。
策士、策に溺れるといったところか。

もう一段壊れた凄まじい展開を見せて欲しかった。

とはいっても、世羅と暴力団の血みどろ死闘は食欲を
なくすほどのスプラッターだけど。

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「動物記」

テーマ:
著者: 新堂 冬樹
タイトル: 動物記

勝手に採点 

鬼才新堂冬樹が放つ動物系感動ファンタジー。

熊と犬とプレーリードッグを主人公に自然の厳しさ、人間の身勝手さ、
動物と人間の心の交流を描く。


はっきりいってひどい出来の駄作。
中途半端なお涙頂戴が鼻につき、わざとらしさが気に障る。


いくら何でも動物たちの生態を人間の感情や描写で書くのは無理。
だって熊が複雑な感情を持ち合わせてるはずもないのだから。


おかげで動物たちがあたかも言葉を喋るかのような錯覚を感じさせ、
さらにストーリーの強引さが現実味を失わせる結果に。


それを書ききる大胆さと無謀さにいささかあきれ気味に。


さらに犬の話での殺し合いは悲惨。まさかそんなことある訳ないだろ!
まるで映画「レザボアドッグス」のような結末に開いた口がふさがらない。


かなり強調されている自然破壊や無責任な飼い主に対する警鐘も

取ってつけたようなありきたりなもの。


感動で涙が止まらないものとは言わないが、もう少しアクセントを

利かせてホロリとくる説教臭くない自然さが欲しい。


氏はこの手の作品が描きたかったようだが、悪いことは言わないから

これっきりにすべき。

著者: 新堂 冬樹
タイトル: 吐きたいほど愛してる。

勝手に採点 ☆☆☆☆

世にもおぞましい短編集。

被害妄想・自意識過剰な変態男、夫の浮気で精神異常をきたす妻、
性的暴力に耐えられず復讐を果たす美少女、娘からの過酷なまで

の仕打ちに耐える寝たきりの父。

「鬼子」以来、久々にその実力を見せつけられた感。
スピード、迫力、残虐性、異常性とも申し分ない出来。

文章のみでここまで不快感を味わせるのはなかなか容易ではない。
読むのを何度も中断して、気分転換しなければいけないほど。

決して文部科学省やPTAにからは推薦されることのないダークな世界。
ここまでやるか!と突っ込みたくなるお約束オンパレードの新堂ワールド。

人物を深く掘り下げて描写したり、ストーリー構成に唸らせるものが

あったりと小説として本来ならあってしかるべきの要素が完全に抜け

落ちていても全くOK。

短編作品にこそ氏の持ち味が生かされ、人間の狂気を描くその能力
が発揮されるのではないだろうか。



著者: 新堂冬樹
タイトル: 三億を護れ!

勝手に採点 ☆☆

夢の宝くじ3億円を当ててしまったうだつの上がらない中年の会社員。
賞金にハイエナの如く群がる家族、親戚、近隣住民そして詐欺師集団。

四面楚歌の彼は果たして無事に3億円を護りきることが出来るのか?

過激なバイオレンスシーンや性的描写もかなり控えられ、ドタバタ
喜劇風にまとめられている分、本来のスピード感、暴力的なまでの
圧倒感が感じられない。

前半の詐欺師が仕掛ける罠が陳腐すぎるもどうか。

冷酷な超二枚目、金のためなら何でもする美女など、登場人物に
新鮮味が欠ける面も手伝って、まさに想像通りの展開。

ただ、救いようのないダメ亭主・ダメ親父を書かせたら、氏の右に出る
ものはいないだろう。

これでもかというほどのいたぶり、バカさ加減を露呈させる手法はマン
ガ的色彩が強い。

後半に登場する不気味な兄弟や変態的ナルシスト「ナッキー」など、
結構おもろいなーと思わせるキャラクターの登場は、ダラダラ続く
争奪戦の救い。

ともあれ、ストーリー展開や人物描写の精緻さを期待するよりも、
決して文学賞候補にはノミネートされないであろう強烈にダークな世界
を描き、疑問を差し挟む隙を与えない強引とも言える文体が氏の魅力。

そういった意味では中途半端な印象が拭えない。かつて「鬼子」で感じた
あの震撼を再び味あわせて欲しい。