制服捜査/佐々木 譲
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勝手に採点 ☆☆☆


北海道の片田舎に駐在として単身赴任した主人公。


彼がその地区で頻発する放火や窃盗といった事件の裏
に潜む真実を見逃さず、隠され続けていたタブーへ挑
戦する。


交通事故を起こした悪餓鬼をあの世へ送るあたりは
お前、必殺仕事人かと思ったが、以降の話は自ら手を
下すことはない。


主人公である警官が血の通った躍動感のある存在と
して描かれておらず、むしろ淡々と仕事を処理して
いくので感情移入も難しい。


謎解きで攻めるのか、物語のリアリティーで攻めるのか、
男の生き様で攻めるのか、イマイチ焦点がぼやけてしま
っているところが残念。


テーマをより突き詰めた人間ドラマを期待したい。

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一瞬の風になれ(全3巻セット)/佐藤 多佳子
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勝手に採点 ☆☆☆☆☆


陸上100M競技に高校生活を賭ける元サッカー部の主人公
と天性のランナーの資質を持つ親友。


彼らの活躍と友情、そして恋を所属する陸上部を舞台
に描くスポ根系爽快青春ドラマ。


入学からの三年間をおおよそ時系列に描写しいるため、
少々飽きてくるものの、試合を重ねるごとに彼らの成長
の痕がうかがえて感動もひとしお。


プロのサッカー選手となった兄に対するコンプレックス
から好きだったサッカーを辞め、新たな挑戦を始める主人公。


並外れた身体能力と熱心な努力を武器に、短距離ランナー
としての才能を開花していく。


運動部に所属していたものなら誰でも理解できる先輩や後輩
、顧問の先生との関係、ハッピーエンドの分かりやすい展開
に好感が持てる。


三部作となっていて読む前は長さも気になるが、読み始めれば
あっという間にラストまでいけること請け合い。


ドラマ化や映画化もされるようなのでそちらも期待したい

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6時間後に君は死ぬ/高野 和明
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勝手に採点 ☆☆☆


対象者における将来のあり得ない事態をイメージで見る
事が出来る大学院生・山葉圭一。


心理学を専攻する彼が予言する未来を人々は逃れること
が出来るのか。


どうも設定が出来すぎていて素直に入りきれない。


特に「3時間後に君は死ぬ」では、あまりにうまく行き過
ぎて未来まで変えることが出来る。


彼のイメージの見え方がコロコロ変わるので、彼の能力
自体が小説のなかで都合よく利用されている感じ。


それでも、冒頭のストーリーである「6時間後に君は死ぬ」
は、ミステリーとしてのポイントが押さえられており
なかなかの出来栄えだが。


やはり氏には短編ではなく長編で力を生かして欲しいもの。

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家族狩り オリジナル版/天童 荒太
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勝手に採点 ☆☆☆☆


家庭内暴力の結果、子供が両親を惨殺したと見られる
事件が頻発する。捜査の過程で子供の犯行に疑問を持っ
た刑事が事件の真相を究明していく。


アブノーマルな登場人物が多く、不安定な気持ちにさ
せられる。


さらにノコギリ引きや火あぶりのような処刑方法も生々
しい。ここまでひどくなくても良かったような。


ストーリー構成としては、刑事自身の家庭問題や不幸に
も複数の事件現場に遭遇する教師、被害者たちと接点の
ある相談員など複雑に絡み合う。


シロアリ駆除がポイントになるがこちらの理屈立ては少々
強引な気も。彼らが犯行にいたる動機が希薄。


彼等は本当に死んでしまったのだろうか、心配。

最愛/真保 裕一
¥1,575
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勝手に採点 ☆☆☆


音信不通だった姉が危篤との連絡が警察から入る。


主人公である小児科医師の弟は、早速姉の元へと駆けつけるが、
彼女はある事件に巻き込まれていた!


真相を知るべく姉の知人を訪ねていくうちに次第に明らかになる
驚愕の真実とは!?


全体的に話が暗い。


いつもは元気いっぱいのアクションものを得意とする筆者が、
東野圭吾張りの愛憎劇を書いて失敗した感じ。


特にラストの必然性が全く理解できない。


それでも不幸な再会から、愛する姉の暮らしぶりを調べ、彼女の
生き様を詳らかにしていく過程は、緻密に計算されている印象。


以外と簡単に核心に迫るあたりは物足りないものの、実際人の生
き様とはそんなものかもしれない。


姉と弟の隠された秘密は後半明らかになるが、二人の関係がイマ
イチすっきりしないのはなぜか。


弟の人物描写に躍動感、リアリティが欠けているためか。

自壊する帝国/佐藤 優
¥1,680
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勝手に採点 ☆☆☆☆


外務省のラスプーチンと呼ばれ、鈴木宗男とグルになって
役所を食い物にしたとされる元外交官・佐藤優氏。


その彼が、ソ連崩壊前後の自身の活躍と崩壊のメカニズム、
豊富な人脈紹介を披露する著。


久しぶりに知的好奇心を大いに満たされる一冊。

彼の経験と学術的知識はかなりのものと感心させられる。


ムネオ騒動のときの狂乱時には、なんて悪いヤツがいたのか
と報道を通じて感じていたものだが、本書から感じられる本
人像は全く違う。


非常に職務熱心で真面目な外交官という印象。


その上、モスクワ大学に留学して、ロシア語を身につけ、自身
の特異な風貌と人間性、神学などの知識を武器にロシア国内に
豊富な人脈を持つに到ったことはまさに日本の国益に適う活躍。


ソ連崩壊前後の近代政治を齧ったものなら、本書の内容はまさに
現場を語るにふさわしい内容と理解できるはず。


ゴルバチョフ、エリツィンといった大物や彼らを支える側近たち、
果てはソ連の解体を目論む反政府組織の活動家など、登場人物に
はことかかない。


それにしても疑問に思うのは、彼はなぜ逮捕されたのか。


そのあたりは前作「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」
に詳しいようなので早速手にとってみたい。

朗読者/ベルンハルト シュリンク
¥1,890
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勝手に採点 ☆☆☆


15歳の少年が母親に近い年齢の女性と恋に落ち、
逢瀬を重ねるが、突然、彼女は姿を消す。


大学生になった主人公は意外な場所で彼女と再
会を果たす。そこで明らかにされる秘密とは。


久しぶりの再読。


雰囲気的には村上作品に近いものが感じられ、
親近感を抱く。


ただ話題がナチズムに絡められる分、暗くなり
がちでより現実世界での葛藤がメインテーマ。


その分ファンタジックな色合いは薄い。


ただ、ノンフィクションでないためか、後半の
名作をテープに録音して届け続ける行為や彼女
が手紙を書くシーンなどいまいち心に迫ってこない。


さらに残念なのはラスト。


せっかくの新しい人生をあきらめてしまったのは
なぜだろう。

佐々木 譲
警察庁から来た男

勝手に採点 ☆☆☆


北海道警察本部に対して警察庁から異例とも
言うべき特別監査が実施される。


監察の指揮を取るのは若きキャリア・藤川。


二件の不可解な事件から、道警内部に巣食う不正を
追求して行くがなかなか接点が見当たらない。


そこに前回も活躍した佐伯が現場で、津久井が藤川を
補佐する形で絡み、道警と暴力団との癒着を暴いていく。


前回同様あまりにスピーディーに問題が解決して様に
違和感を覚える。そこまで早く出来事が主人公に有利
なようにスムースに動いてしまうものか。


また、裏金や旅行、再就職の斡旋など、暴力団との癒着
があれば、当然の如く警務や内部通報により、上層部に
伝わるはずだが、その気配もなかったよう。


それが野球チームつながりで芋づる式に簡単に暴露する
あたりが薄っぺらい印象がぬぐえない。


事がこうも簡単に進むなら、なぜ今まで露見しなかった
のか甚だ疑問。


ただ、展開としては「踊る大捜査線」の如く、キャリア
VSノンキャリの葛藤や警察内部の権力闘争、銃撃戦など
テンポ良くボリュームも満載。


テレビ映画向けにはちょうど良い題材。

花まんま/朱川 湊人
¥1,650
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勝手に採点 ☆☆☆


大阪の下町を舞台にしたノスタルジックライト
ホラー中編集。


主人公が異なるものの、時代設定は70年頃で貧しくも
たくましく生きる庶民の子供たちが出会うせつなく
もの悲しげなオバケや不思議な出来事。


特に印象深かったのは、長屋に現れる子供幽霊。


在日朝鮮人の家庭で生まれ育って、幼くして死んでし
まった子供が、主人公である友達の家に遊びに来る。


生きているころは、貸してもらえなかったおもちゃで
楽しげに遊ぶ姿は哀れ。


それでも、屋根の上を跳ね回りながら飛んでいく姿は
ユーモラスで心を和ませる。


また、耳元でささやくだけで人を死に至らしめる「送りん婆」。
怖いながらも、その独特な精神、生き方は興味をそそられる。


弟子としてアシスタントを努めた少女はなぜ後を継がなかったのか。
彼女ならずもそんな不思議で強力な力は身を滅ぼす諸刃の刃になる
からだろう。


これらの独特の作風、アイデアに触れることができ、他の作品を
手に取ることが楽しみな作家に出会えた気分。

うたう警官/佐々木 譲
¥1,890
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勝手に採点  ☆☆☆


北海道警の婦人警察官が何者かに殺害された。
犯行現場は道警が秘密アジトとして使っていた
マンションの一室。


すぐに交際相手の津久井巡査部長が指名手配され、
なんと射殺命令まで許可される。


そんな不自然な道警上層部の動きに疑問を持った
警部補・佐伯は密かに仲間を集め真犯人の捜査を始める。


題名は秀逸。


酔った警察官が演歌を歌うわけではない。

要は内部告発する警官という意味。


道警上層部が、警察の裏金の実態を内部告発する警察官を
殺人犯と断定し、議会で発言できないよう追い詰めていく。


ただし、どうしても納得できない無理な設定が三つ。


1.内部告発者を犯人に仕立て闇に葬り去ろうとすること
→その程度の状況証拠では公判を維持するのが無理


2.真犯人がキャリア警察官僚であること
→軽犯罪ならまだしも殺人を犯すキャリアがいるか!?


3.あまりに早く現場に侵入した窃盗犯が突き止められること
→いくらベテラン捜査官がいても半日は無理。


これら点はスピード感や臨場感を考慮しても、とても腹に落ちる
ものではない。


それでも、真犯人逮捕のために結成したチーム佐伯が、内部
通報者を抱えながら、上層部からの捜査妨害にもめげず、
悪戦苦闘の上解決していくあたりは水戸黄門の如くスカッとする。


せっかくあそこまで頑張りながら、あっさり真犯人を返してし
まうあたりも残念なところ。


よりリアルでスリリングな警察小説を期待したい。