フィッシュストーリー/伊坂 幸太郎
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勝手に採点 ☆☆


表題を含め三篇の短編集。


森見氏同様、もういいかげんにして欲しいという感じ。


これといったストーリーがないため説明しずらいが、
意味のない空虚な会話やエピソードのオンパレードで
読む気が失せる。


本人はカッコ良い、洗練された物語を書いているつもり
なのだろうが、登場人物に生々しさがなく、人形がつま
らないおしゃべりをしている印象。


当初の作品はそれでも十分引き付けられたが、全く進歩
しないところが大問題。


リアルな心理描写や緊迫感、スピード感のあるストーリー
展開、読者を関心させるほどの謎解きなど、ひとつで良い
のでここが良かったと思わせる何かが欲しい。


東野氏が単なるミステリー作家から大きく脱皮して新しい
読者層を獲得したように彼にも奮起を期待する。

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陽気なギャングが地球を回す/伊坂 幸太郎
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勝手に採点 ☆☆


四人組の銀行強盗が繰り広げるドタバタコメディー。


銀行を襲った帰りになんと自分たちがお金を奪われる
ありえない事態に遭遇。


賊の一人を付き止め自宅を訪ねたところ、ナイフで
刺殺されていた・・・。果たしてお金は取り戻せるのか!?


空虚な会話のオンパレードで読む気をなくす。


書き手はかっこいいつもりなのかもしれないが、こう
も全編に渡って意味のないやり取りを読ませられると
拷問に近い仕打ち。


ストーリーとしては意外性があり、小物の使い方も
うまいのでホントに惜しいとろこ。


伊坂氏の描くキャラクターは全般的に人間味に欠ける。
それが最大の欠点。

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終末のフール/伊坂 幸太郎
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勝手に採点 ☆☆☆☆


小惑星の衝突によりあと三年で滅亡の危機を迎える人類。


そんな切迫した状況の仙台を舞台に、そこで生活する人々
の悲喜交々を描く連作短編集。


各編が独立した話しながら、微妙に重なり合って味わいを
深めている印象。


ちょっと冷めた目線が特徴の伊坂作品にとっては、良さが
引き出されるシチュエーション。


こんな状態に置かれたら自分はどうなってしまうだろうと
考えずにはいられない。


子を持つ親にとってはとてもつらい状況下。


ひとつ残念なのは、意外性の欠如。


みんな大部分が諦めと少々の希望を胸に生きているのだが、
全体が同じトーンで統一された雰囲気で、ビックリな人や出来事
が少なめ。


例外的に意外だったのは、復讐のため篭城したところ、実は目的の
人物が一家心中しようとしていたと言う話。


ただし、トーンとしてはやはり暗い。


起承転結を意識し、アクセントが利いた連作短編集なら文句なし。

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「砂漠」

テーマ:
伊坂 幸太郎
砂漠

勝手に採点 ☆☆☆ かお


大学に入り知り合った仲間たち。


男女5人の彼らが学生生活のなかで繰り広げる奇抜な事件

の数々を描く青春小説。


西嶋の言動、奇行や超能力事件、プレジデントマン事件、連続

強盗事件などひきつけられ、魅力的なのだが、いかんせん、

設定のマンネリ化がすべてを台無しにしている感。


仙台、学生、通り魔事件、ある種の悲劇性、鳥瞰的志向の主人

公など使い古されたモチーフに辟易。


彼の持つ独特の作風、筆感に魅力を覚えずにいられないだけに残念。


得意なものを手放し、挑戦的な気持ち、実験的な試みを期待したい。

「魔王」

テーマ:
伊坂 幸太郎
魔王

勝手に採点 ☆☆


物事を深く、突き詰めて考える癖のある兄と気ままな生活を楽しむ

弟、そして弟の彼女の物語。


そんな兄に宿った不思議な力。宮沢賢治を愛好する新興政治家の

出現に危機感を覚え、その力を最大限活用すべく行動にでるが・・・。


正直がっかり。まず設定に新鮮味が感じられない。

両親のいない兄弟や仙台という設定からもう離れるべき。


ストーリー自体にも意外性や独創性に欠け、ストンと腹に落ちない

もやもや感が残る。


兄の意思が弟に引き継がれるわけだが、それもかなり中途半端に

終わりを迎える。え、これで終わりなの?という感じ。


政治家の描写、背景も説得力が足らず、彼をそこまで危険視する

意図がイマイチ伝わってこない。


独裁者=ファシズム=悪みたいな図式は、いまさらだし、平和

憲法改正論議というテーマも氏の小説の題材としては不向き。


政治的背景や信条と離れ、よりファンタジックな色彩の強い、深い

余韻を楽しませてくれる作品を望みたい。

伊坂 幸太郎
死神の精度

勝手に採点 ☆☆☆☆


人間が死に値するのか調査をする音楽好きの死神。


彼が下す「可」か「不可」の判断によって人の命が左右される。

仕事に几帳面な死神が担当になった人間の生活を通して感じ

たものは何か。


まず、設定が面白い。

この死神が介在できる死はいわゆる不慮の事故だけ。


病死や老衰などにはタッチできないらしい。


主人公の死神はお馴染みの不気味なスタイルではなく、ごく

普通の一般人のような外見。


食事も睡眠も必要ないが、怪しまれるので食べたり眠ったりする。


調査もしないで「可」を下す同僚が多い中、彼は職務に忠実にある

ときは注意深く観察し、またあるときは生活をともにして密着する。


短編形式で描かれる物語は、意外性のあるものやミステリーチック

なもの、ハートウォーミングなものまでバラエティ豊か。


伊坂作品の特徴である仙台を舞台にした話も織り込まれ、全く飽き

させることがない。


この独特な雰囲気を醸し出す彼の作風は他人にまねのできない

稀有なもの。


クールなのに人情的、カッコいいのにユーモラス。

この憎めない死神はホントに身の回りにいるかもしれない。

伊坂 幸太郎
チルドレン

勝手に採点 ☆☆☆☆


閉店間際の銀行に滑り込んだら、すぐさま銀行強盗が登場し、

人質となってしまった大学生の鴨居と陣内。そして盲目の青年

永瀬も愛犬ベスとともに拘束されてしまう。


緊迫した篭城劇で永瀬が推理した犯人の正体とは!?


この事件で知り合った若者たちのふれあいを描く連作短編集。


いきなり銀行強盗の人質とは面食らったが、その後はいたって

爽やかな物語に仕上がっている。


特に家裁調査官になったその後の陣内や武藤の奮闘振りは微

笑ましくもなかなか感動的。


伊坂作品の特徴は舞台が仙台であることと、登場人物がとても

個性的であることだが、本作品もその手法を踏襲している。


ミステリーというよりは、青春群像的な要素が強く、肩肘張らずに

素直に共感でき楽しめる。

伊坂 幸太郎
グラスホッパー

勝手に採点 ☆☆☆

違法な薬物を強引な手法で販売する会社へ入社した鈴木。
目的は妻をひき殺した社長の息子への復讐。

そこへ奇妙な殺し屋「蝉」や「鯨」そして「押し屋」が
入り乱れて繰り広げられる乱闘劇。

序盤の残虐描写に引き込まれつつも、中盤でのだまし合
いのような駆け引きがスピード感に乏しく中だるみ。

内容的にも、バイオレオンス的要素が強く、先を読むのが
不安になるような展開にページが思うように進まない。

「蝉」や「鯨」の代わり映えしない人生観、世界観を繰り
返されても、結局すべて罪悪感のせいで片付けられるあた
りに薄っぺらい印象が拭えない。

それでも「押し屋」の擬似家族ごっこはなかなか。
特に奥さんと子供の不思議な感じが魅力的。

最近ちょっとマンネリ気味の展開に飽きつつも、最後まで
きちんと読ませる技量は○。



著者: 伊坂 幸太郎
タイトル: オーデュボンの祈り

勝手に採点 ☆☆☆☆

コンビニ強盗を働き、警察に捕まった主人公。
護送途中に逃げ出し、「荻島」という隔絶された孤島に逃れる。

何かが足りない、どこか普通と違う島。

そこには、未来を予見し喋るカカシが主人公を待ち受ける。
しかし、すぐにそのカカシがバラバラにされているのが発見され・・・。

全く不思議で独創的な設定。優れた作家には独特の世界観があるが、
この若さですでにそれを作り上げてしまっている凄さ。

仙台という地方都市を舞台とし、個性的な家族に囲まれた主人公と
死やレイプが密接にまとわりついてくるストーリー展開は、「重力
ピエロ」に共通した部分も多い。

サイドストーリーとして展開する元彼女を襲う悪徳警察官の魔の手。

圧倒的な残虐さを秘めたこの幼なじみが醸し出す不気味な雰囲気が
全体を陰鬱にそして緊張感を高める役割を果たす。

ここまでファンタジックミステリー的要素が強いと何故彼が逮捕される
ことなく悪行を続けられるのかといった疑問を差し挟む余裕もない。

終盤に向かって急激に高まっていく緊張感が心地良い。
極悪人の終末に相応しい最期は、あっけなくも胸がすく思い。

そしてカカシの想いがつまったラストは清々しい。
ぜひサックスの音色を聞かせてあげたいものである。

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著者: 伊坂 幸太郎
タイトル: アヒルと鴨のコインロッカー

勝手に採点 ☆☆☆☆

大学に入学した主人公が、知り合ったばかりの隣人に誘われ書店強盗
の片棒を担ぐ羽目に。盗みの目的は「広辞苑」

二枚目の隣人は一体何を考えてるのか?書店を襲う真の理由とは?

「現在の僕」と「二年前の私」の話が時間を超えてシンクロで進行する
構成に戸惑いつつも、小気味よいテンポで進むストーリー展開。

「何で?何で?知りたい!」が先行してドンドン進みたくなる。

前半部分では、「二年前の私」に何が起こったのか、スーダン人の留学
生が引きこもった理由、隣人の病状など、漠然とした不安感が漂う。

身内にこれから不幸が訪れるような、何とも落ち着かない気分に陥りな
がらも、想像を超えるどんでん返しに後半は良い意味で期待を裏切り続
けられる結果に。

よくよく考えると、知らないうちに事件に巻き込まれ、その謎解きを始
めるあたりは、「重力ピエロ」に似た構成だが、そんな臭いを感じさせ
ない力量に才能の片鱗が垣間見られる。

ペット店主の容姿や性格にいまひとつ違和感を感じるし、琴美とドルジ、
主人公と家庭の関係も釈然としない。あまりにサラッとし過ぎの感。

しかし、それを補って余りあるラストには清々しい気分とやっぱり・・・
と寂しい気分が交錯し、この後どうなるの?という程良い余韻も感じ
させてくれる。

物語のすべてが凝縮されているような題名、神様に例えたボブ・ディラン
の使い方など相変わらずの卓抜したセンスに魅せられる優れた作品。

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