スプートニクの恋人/村上 春樹
¥1,680
Amazon.co.jp

勝手に採点 ☆☆☆


主人公で教師の僕と大学の知り合った「すみれ」の
微妙な友情と彼女の失踪を独特のタッチで描く恋愛小説。


あいかわらず幻惑的な村上ワールド。


雰囲気的には「ねじまき鳥クロニクル」に似ている。


こちら側とあちら側の世界があって、ある理由から
愛する人があちら側に行ってしまって失踪する。


それを見つけようとする僕の内省。


独特の空想的世界は控えめで、非常に現実的な出来事が
主体で読みやすい。


前半部分のすみれとのやり取りも分かりやすく微笑ましい。

しかし、彼女が思いを寄せる憧れの女性の元から突然いな
くなり物語りも迷走気味に。


ラストシーンのすみれからの電話は何を意味するのか。
すぐに居場所を伝えるため、電話はかかってくるのだろうか。

AD
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編/村上 春樹
¥540
Amazon.co.jp

勝手に採点 ☆☆☆


ある日妻のクミコが突然出て行ってしまう。


途方にくれた僕はその原因を探るが、そこには彼女の兄である

綿谷ノボルが大きく絡んでいるらしいことを突き止める。


空き家の古井戸に佇んで、彼女のいる別世界へたどり着こうと

懸命に空想するが・・・。


珍しくミステリータッチで話が進む。


ただ、結局綿谷ノボルがどのように姉妹を汚したのかは分からず

じまい。加納マルタもどこへ行ったのやら。


文量が多いだけに、サイドストーリーは豊富。


間宮中尉の中国談や加納マルタ&クレタ姉妹・ナツメグ&シナモン

親子の不思議な仕事とその生い立ち、近所の不登校少女・メイ

との交流など、それだけで十分一冊の小説になるおもしろさ。


ただ、あまりにサイドストーリーを組み込みすぎたせいで、肝心の

クミコの存在が忘れがちに。


彼女がどうしてそんな行動を取ったのか、兄からどんな束縛を受け

ていたのかが尻すぼみで終わってしまう。


ラストの空しさも寂しい。


彼女が出所できて元の暮らしができるのはどれほど先だろう。

AD

「東京奇譚集」

テーマ:
村上 春樹
東京奇譚集

勝手に採点 ☆☆☆☆


身の回りの不思議な話を集めた中編集。


とはいっても村上氏の話はもともと不思議で幻想的世界が

多いので違和感なく入り込めるはず。


サーファーの息子を無くした母、ある女性を待ち続ける小説家、

名前を盗む猿、行方不明者を探す探偵など。


特に猿のお話は、羊の話にどこか似ていて、微笑ましくも

深く考えさせる作品。


彼女が名前を託した理由は一体なんだろう。


とはいえ、一番不思議で引き付けられるは、冒頭で語られる

ご本人の体験談。


ジャズといい、ゲイの調律士といい、奇跡的な偶然の一致と

はあるんだなぁと感心することしきり。


さらにすごいのは、ここまで読ませ、余韻に浸らしてくれる氏

の表現力と文章力。この続きがもっと読みたい。

AD
著者: 村上 春樹
タイトル: ノルウェイの森 下

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!

村上春樹の代表作である大ベストセラー。

主人公の大学生ワタナベと自殺した親友キズキの彼女・直子との
悲しい関係とそれを取り巻く人々を描いた青春小説。

題名であり、ビートルズの楽曲でもある「ノルウェイの森」という冷たく
暗い響きが物語全体を包む陰鬱な寂寥感を如実に表していて見事。

前に読んだのは学生時代だったが、今改めて読み返してもあのとき

味わった感覚、印象がよみがえってきてページをめくるのがついつい

もったいなく感じる。

他の作品と異なって、主人公の心象奥深くを探求するような幻想感、

象徴性は影を潜め、ワタナベがどう感じて、どう行動したかが平易に

描かれ、会話中心に話が進んでいく。

登場する人物は少ないもののみんな個性的で魅力的。
直子、キズキ、緑、レイコ、永沢、ハツミ、突撃隊・・・。

彼らとのエピソードひとつひとつが心に残り愛着を感じる。

緑やレイコさんとの親交、触れ合いによってようやく立ち直るキッカケ

を掴み始める矢先に物語りはあっけなく終わりを迎える。

その後に包まれる何ともいえないせつなさ、悲しみ、迷い、後悔、混沌、
希望は心に不思議な感覚をもたらし、深い感動が胸に刻まれる。

「生は死の対極にあるのではなく、我々の生の内に潜んでいる」
この村上作品に共通する命題を理解できるのはいつのことだろう。



著者: 村上 春樹
タイトル: アフターダーク

勝手に採点 ☆☆☆

美貌でモデルをしている姉と平凡な容姿だが賢く、自分の
スタンスを崩さない妹。

眠り続ける姉と深夜の町で佇む妹。

二人を取り巻く人間模様を独特の象徴的なタッチで描く村上
春樹待望の新作。

いつもの作品よりかなり抽象的でピンと来ないのが第一印象。

ストーリー云々というよりも、常に眠り続けている姉の存在が
本書のポイント。残念ながら、著者の意図する真意が伝わらな
かった。

妹と姉の知り合いの絡みもアッサリしすぎて物足りない。何と
言っても深夜から早朝までの話しなので致し方ない気も・・・。

それでも惹かれたのは、ラブホテルの従業員と妹のやりとり。
何気ない記憶の引出をいっぱい持ち続けることの重要性。

従業員の生い立ちもさることながら、彼女の一言が胸に沁みる。

村上春樹の新境地を楽しむには、読み手の読解力、想像力も試
される。


著者: 村上 春樹
タイトル: 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉

勝手に採点 ☆☆☆☆

「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」
という二つの物語がパラレルして進行し、徐々に融合していく。

「世界の終わり」はRPGを彷彿とさせるファンタジックアドベンチャー、
「ハードボイルド」はミステリーアドベンチャー的要素が強い。

計算士という特殊な職業に就く主人公が謎の老人から請け負う仕事。
おかげで自分の組織と記号士の組織から狙われる羽目に・・・。

一方、一角獣が住む高い塀に囲まれた街で、影を切り取られ、頭骨から
古い夢を読む「夢読み」の仕事に就いた主人公が、影から街を脱出する
計画を打ち明けられる・・・。

始めは状況が飲み込みにくかったが、半分を過ぎる頃には、
どちらの物語にもズッポリはまってしまった。

このオリジナリティー溢れる独特の世界観、価値観は読む物を魅了
し飽きさせることがない。

相変わらず深く考えさせる比喩が多用され、一読しただけでは、
氏の本意は伝わらないかもしれない。

心を失った住人たち。その代わりに得られる永遠の平穏。

東京の地底で「やみくろ」に追われる恐怖。

図書館員で胃拡張の女性との素敵な出会い。

相変わらずなのは、お酒と食事がとっても美味しそう。
日頃ウイスキーなんか飲まないが、ふと飲んでみたい気分になる。

影と別れた主人公。今でも森の中で彼女と暮らしているのか・・・。

カリーナの中で永遠に意識を失った主人公は太った女の子に回収して
もらっただろうか・・・。

人気blogランキングへ


著者: 村上 春樹
タイトル: ダンス・ダンス・ダンス〈上〉

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!

青春三部作の完結編ともいえる羊男シリーズ。

34歳になった「僕」が、以前宿泊した「いるかホテル」を再訪し、
建て替えられたドルフィンホテルに滞在する。
そこでフロント係りの女の子と知り合い・・・。

様々な出会いと別れを通して、失いかけていた価値観を取り戻し、
大切な人にめぐり合うまでの過程を危険で退廃的なムードで
描いた秀作。

まず一番強く感じたのは、登場人物がより多彩になり構成が
複雑化したこと。

三部作の行き着く先に相応しい深みと独創性に満ちあふれ、
五反田君やユキ、ディック・ノースなど心に残る脇役たちが
「僕」を通り過ぎていく。

五反田君の破滅的な終末は、彼の明朗な性格からは想像が
つかないほどもの悲しい。犯した行為が本当に責められる
べき性質のものか分からなくなってしまう。

もしキキが自ら望んでいたことなら・・・。

近代的なドルフィンホテルに突如現れる羊男。
題名ともなる「ダンスを踊り続けること」を「僕」に教示する。
その意味するところは一体何か。

ユキとその父母その性格、関係も風変わり。おかけでユキと親しくなる
のだが、彼女の持つ不思議な力が「僕」にもたらしたものとは。

映画「片思い」の反復される使い方も虚構と現実が混沌としてきて
効果的。もういないはずのキキを思い起こさせる・・・。

彼女を失わないか、ハラハラさせられる終末。
「僕」に必要不可欠な存在である彼女を・・・。

この4部作をゆっくり読み返してみたい。

雪の降りしきる札幌の高層ホテルで・・・。

ゆっくりとビールでも飲みながら・・・。

人気blogランキングへ


著者: 村上 春樹
タイトル: 風の歌を聴け

勝手に採点 ☆☆☆

村上春樹デビュー作。
「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」と合わせ青春三部作を構成。

大学生の主人公が田舎へ帰省し、親友であるねずみとジェイズ・バー
でビールを飲むお話。

処女作とあってストーリーや表現に独特の深みや味わい深さに欠ける
傾向はあるもの、文体はいまなお変わらないクールな感じが特徴。

村上作品の根底に流れる潜在意識のような潮流がここを源泉として流
れ始まったと思うと感慨深い心境に陥る。

主人公はこれから様々な出来事に遭遇し、挫折や失敗を通して、徐々
に精神的な成長を遂げて行くわけだが、三つ子の魂百までの諺通り、
本質的な彼自身の性格はあまり変化していないように思える。

日常を淡々と描ききっているため、これぞという見所は表現しにくい
が、印象的なのは4本指の彼女。

結局、主人公とはすれ違っていくが、男女の関係を「個」と「個」
として冷静に捉え、ドロドロの愛憎劇とは無縁のユニークな関係は、
最近の著作でもあまり変わっていない。

「ダンス・ダンス・ダンス」で帰結を迎える幻想的で象徴的な村上
ワールドを味わうためには、避けて通れない登竜門。

本書に共感できる読者なら、この世界観に魅了されるだろう。

人気blogランキングへ


著者: 村上 春樹
タイトル: 1973年のピンボール

勝手に採点 ☆☆☆☆

「風の歌を聴け」「羊をめぐる冒険」と合わせた青春三部作。
働きだした主人公とその奇妙な生活ぶり、姿を消してしまう親友ねずみ
のことが繊細なタッチで描かれる。

やはり順番に読むべきと痛感。徐々に完成度、深みが増していく。

ピンボールマシンに再会するシーンは幻想的で素晴らしい。
マシンに詳しくない人でも是非一度お目にかかりたい気分にさせる。

部屋に転がり込んだ双子の姉妹との生活は、はっきり言って魅力的。
それでもそんな環境を自慢するでもなく、あれこれ考えるのでも
なく、淡々と過ごす主人公にちょっぴりジェラシーを感じてしまう。

やはり別れを予感しているからか・・・。

配電盤の葬式やジェイズバーでのマスターとのやりとり、ねずみの元
彼女に会う場面など、心に残って深く考えさせるエピソードが満載され、
村上ワールドを十分に堪能できる。

ねずみの描写には、これからその身に降りかかる悲しい最後を予感
させる寂寥感に溢れ、何とも言えない悲哀が感じられて仕方がない。

ストーリーがどうとか、人物描写がどうとかいう、理屈抜きで楽しめうる
数少ない作品。

人気blogランキングへ


著者: 村上 春樹
タイトル: 神の子どもたちはみな踊る

勝手に採点 ☆☆☆

著者が阪神大震災にインスパイアされて著した短編集。

村上春樹というフィルターを通して感じる未曾有の大惨事から
何を感じ取るか?

一番印象に残ったのは「かえるくん、東京を救う」。
震災の恐怖・苦しみが闘争後のかえるくんに凝縮されている気
がしてならない。

かえるくんの断末魔の姿に思わず目を背けたくなる。
実際に被災された方々の艱難辛苦はいかばかりか・・・。

得体の知れない災害をみみずくん、震災を体験しなかった一般
市民を主人公として見てしまった。

ハッピーな気持ちになれたのは「蜂蜜パイ」。
これを最後に持ってくるあたりが心憎い演出。

ストーリー自体も日頃読み聞かせをしている自分にラップする
部分があり、子供の想像力はこちらがびっくりするほど豊かで
奇抜であるので、思わず頷くような場面があった。

ラストがハッピーエンドであるのも効果大。
これから築くであろう明るい家庭を考えるだけで何とも言えず
心が温まる。

震災から立ち直った方々もこのような未来を歩まれたことを願
ってやまない。

氏の著作は大きなテーマを下敷きに独特の比喩的表現がちりば
められ、読者の想像力をかきたてる、独自の世界を持っている。

本書はテーマが明確で短編であることから、独創的であるが、
分かりやすい内容に仕上がっており、読みやすい印象を受ける。

印象的な登場人物も健在。特に「タイランド」運転手は個性的。
一度で良いから、こんなアテンダントの案内で優雅な旅をしてみたい。